昨年と一変“祭り”の予感 「どうなる? 2009年アカデミー賞」特集 2009年アカデミー賞(3/3 ページ)

» 2009年02月16日 10時00分 公開
[ITmedia]
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  • 注目ノミネート作品 6作品ピックアップ
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華やかな一方、政治色も 2009年アカデミー賞の傾向
自粛ムードの2008年から一変、華やかなアカデミー賞の予感

 去年の第80回アカデミー賞は米脚本家組合のストライキも影響して、自粛ムードのなか開催された。しかし今年は例年になく派手な予感。というのも、司会者は米ピープル誌の“最もセクシーな男”に選ばれた俳優ヒュー・ジャックマン、ステージの演出は「ドリームガールズ」のビル・コンドン監督が手掛けている。

 昨年の作品賞ノミネートタイトルは「ノーカントリー」「ゼア・ウィル・ビー・ブラッド」「フィクサー」「つぐない」「JUNO/ジュノ」。いい作品ばかりで個人的には素晴らしいと思うが、確かに地味なものばかりだ。これに比べると、今年はえらく華やかに見える。  例えば「ベンジャミン・バトン 数奇な人生」はブラッド・ピットとケイト・ブランシェット共演のファンタジー大作だし、ピットのパートナー、アンジェリーナ・ジョリーも「チェンジリング」で主演女優賞にノミネートされた。ピットとジョリーという世界一有名なカップルがレッドカーペットを歩くだけでも話題性十分である。

「ノーカントリー」
男性は“孤独”、女性は“強く”

 さて、ここ数年は政治色が強い作品や、社会派作品が多く見られるようになった。今年もニクソン大統領にまつわる「フロスト×ニクソン」と、ゲイをカミングアウトし市会議員に当選した男の伝記映画「ミルク」がノミネートされている。この流れを作ったのはマイケル・ムーア監督のドキュメンタリー「華氏911」(2004年)あたりから。昨年の、石油王の孤独な成金人生を追った「ゼア・ウィル・ビー・ブラッド」は、戦争や政治を直接的に扱っているわけではないが、“モラルの喪失”をテーマにしているという意味では、同タイプといえる。

 男性を主人公にした作品のキーワードは“孤独”。「ベンジャミン・バトン〜」は逆回転という数奇な人生を歩む男の孤独、「フロスト×ニクソン」では政界を追われた男の孤独、そして長編アニメ部門の鉄板タイトル「WALL・E/ウォーリー」は地球でたった一人ゴミ収集を続けるロボット(一応、“男の子”なのかな?)の孤独が描かれている。

「ミルク」
(左)「ベンジャミン・バトン 数奇な人生」 (中)「フロスト×ニクソン」 (右)「WALL・E/ウォーリー」

 一方、女性が主人公の作品は“信念と強さ”というキーワードが浮かび上がる。「チェンジリング」のアンジェリーナ・ジョリーは我が子の生還を信じる強き母、「ダウト〜あるカトリック学校で〜」のシスターは良くも悪くも己の信念を貫き通す強さを持っている。

栄光の女神は誰にほほえむ!?

 100年に一度の不況と言われる中、作品賞は億万長者の「スラムドッグ$ミリオネア」(実は金に翻弄されるな、というメッセージ)か、アカデミー賞らしい華やかな「ベンジャミン・バトン〜」か。他にも故ヒース・レジャーの受賞の成否(「ダークナイト」)、そして日本では「おくりびと」の外国語映画賞部門にも注目が集まる。話題たっぷりな今年のアカデミー賞、果たして栄冠は誰の手に?

 ちなみに、アカデミー賞にあわせ、最もひどい映画や俳優を選ぶゴールデン・ラズベリー賞、通称ラジー賞のノミネートも発表され、マイク・マイヤーズ主演の「愛の伝道師 ラブ・グル」が作品賞・男優賞を含む7部門にノミネートされた。発表はアカデミー賞の前日。こちらもお楽しみに!

「ダークナイト」
主要ノミネート一覧

■作品賞
「ベンジャミン・バトン 数奇な人生」
「フロスト×ニクソン」
「ミルク」
「愛を読むひと」
「スラムドッグ$ミリオネア」

■監督賞
デビッド・フィンチャー「ベンジャミン・バトン 数奇な人生」
ロン・ハワード「フロスト×ニクソン」
ガス・ヴァン・サント「ミルク」
スティーヴン・ダルドリー「愛を読むひと」
ダニー・ボイル「スラムドッグ$ミリオネア」

■主演男優賞
リチャード・ジェンキンス「ザ・ビジター(原題)」
フランク・ランジェラ「フロスト×ニクソン」
ショーン・ペン「ミルク」
ブラッド・ピット「ベンジャミン・バトン 数奇な人生」
ミッキー・ローク「レスラー」

■主演女優賞
アン・ハサウェイ「レイチェルの結婚」
アンジェリーナ・ジョリー「チェンジリング」
メリッサ・レオ「フローズン・リバー(原題)」
メリル・ストリープ「ダウト〜あるカトリック学校で〜」
ケイト・ウィンスレット「愛を読むひと」

■助演男優賞
ジョシュ・ブローリン「ミルク」
ロバート・ダウニーJr「トロピック・サンダー/史上最低の作戦」
フィリップ・シーモア・ホフマン「ダウト〜あるカトリック学校で〜」
ヒース・レジャー「ダークナイト」
マイケル・シャノン「レボリューショナリー・ロード/燃え尽きるまで」

■助演女優賞
エイミー・アダムス「ダウト〜あるカトリック学校で〜」
ペネロペ・クルス「それでも恋するバルセロナ」
ヴィオラ・デイヴィス「ダウト〜あるカトリック学校で〜」
タラジ・P・ヘンソン「ベンジャミン・バトン 数奇な人生」
マリサ・トメイ「レスラー」

■オリジナル脚本賞
「フローズン・リバー(原題)」
「ハッピー・ゴー・ラッキー(原題)」
「イン・ブルージュ(原題)」
「ミルク」
「WALL・E/ウォーリー」

■脚色賞
「ベンジャミン・バトン 数奇な人生」
「ダウト〜あるカトリック学校で〜」
「フロスト×ニクソン」
「愛を読むひと」
「スラムドッグ$ミリオネア」

■撮影賞
「チェンジリング」
「ベンジャミン・バトン 数奇な人生」
「ダークナイト」
「愛を読むひと」
「スラムドッグ$ミリオネア」

■編集賞
「ベンジャミン・バトン 数奇な人生」
「ダークナイト」
「フロスト×ニクソン」
「ミルク」
「スラムドッグ$ミリオネア」

■美術賞
「チェンジリング」
「ベンジャミン・バトン 数奇な人生」
「ダークナイト」
「ある公爵夫人の生涯」
「レボリューショナリー・ロード/燃え尽きるまで」

■長編アニメ賞
「ボルト」
「カンフー・パンダ」
「WALL・E/ウォーリー」

■外国語映画賞
「バーダー・マインホフ・コンプレックス(原題)」(ドイツ)
「ザ・クラス(原題)」(フランス)
「おくりびと」(日本)
「レバンシェ(原題)」(オーストリア)
「戦場でワルツを」(イスラエル)

取材・文/本山由樹子



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