去年の第80回アカデミー賞は米脚本家組合のストライキも影響して、自粛ムードのなか開催された。しかし今年は例年になく派手な予感。というのも、司会者は米ピープル誌の“最もセクシーな男”に選ばれた俳優ヒュー・ジャックマン、ステージの演出は「ドリームガールズ」のビル・コンドン監督が手掛けている。 |
昨年の作品賞ノミネートタイトルは「ノーカントリー」「ゼア・ウィル・ビー・ブラッド」「フィクサー」「つぐない」「JUNO/ジュノ」。いい作品ばかりで個人的には素晴らしいと思うが、確かに地味なものばかりだ。これに比べると、今年はえらく華やかに見える。 例えば「ベンジャミン・バトン 数奇な人生」はブラッド・ピットとケイト・ブランシェット共演のファンタジー大作だし、ピットのパートナー、アンジェリーナ・ジョリーも「チェンジリング」で主演女優賞にノミネートされた。ピットとジョリーという世界一有名なカップルがレッドカーペットを歩くだけでも話題性十分である。 |
さて、ここ数年は政治色が強い作品や、社会派作品が多く見られるようになった。今年もニクソン大統領にまつわる「フロスト×ニクソン」と、ゲイをカミングアウトし市会議員に当選した男の伝記映画「ミルク」がノミネートされている。この流れを作ったのはマイケル・ムーア監督のドキュメンタリー「華氏911」(2004年)あたりから。昨年の、石油王の孤独な成金人生を追った「ゼア・ウィル・ビー・ブラッド」は、戦争や政治を直接的に扱っているわけではないが、“モラルの喪失”をテーマにしているという意味では、同タイプといえる。 男性を主人公にした作品のキーワードは“孤独”。「ベンジャミン・バトン〜」は逆回転という数奇な人生を歩む男の孤独、「フロスト×ニクソン」では政界を追われた男の孤独、そして長編アニメ部門の鉄板タイトル「WALL・E/ウォーリー」は地球でたった一人ゴミ収集を続けるロボット(一応、“男の子”なのかな?)の孤独が描かれている。 |
一方、女性が主人公の作品は“信念と強さ”というキーワードが浮かび上がる。「チェンジリング」のアンジェリーナ・ジョリーは我が子の生還を信じる強き母、「ダウト〜あるカトリック学校で〜」のシスターは良くも悪くも己の信念を貫き通す強さを持っている。 |
100年に一度の不況と言われる中、作品賞は億万長者の「スラムドッグ$ミリオネア」(実は金に翻弄されるな、というメッセージ)か、アカデミー賞らしい華やかな「ベンジャミン・バトン〜」か。他にも故ヒース・レジャーの受賞の成否(「ダークナイト」)、そして日本では「おくりびと」の外国語映画賞部門にも注目が集まる。話題たっぷりな今年のアカデミー賞、果たして栄冠は誰の手に? ちなみに、アカデミー賞にあわせ、最もひどい映画や俳優を選ぶゴールデン・ラズベリー賞、通称ラジー賞のノミネートも発表され、マイク・マイヤーズ主演の「愛の伝道師 ラブ・グル」が作品賞・男優賞を含む7部門にノミネートされた。発表はアカデミー賞の前日。こちらもお楽しみに! |
■作品賞 ■監督賞 ■主演男優賞 ■主演女優賞 ■助演男優賞 ■助演女優賞 ■オリジナル脚本賞 ■脚色賞 ■撮影賞 ■編集賞 ■美術賞 ■長編アニメ賞 ■外国語映画賞 |
取材・文/本山由樹子
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