今でも十分な実力、富岡光学製のレンズ:-コデラ的-Slow-Life-
分解修理を終え、革を張り替えたヤシカのハーフを持って、さっそく撮影に出かけることに。現像から上がってきた写真を見て驚いた。予想外にシャープな描写をするのだ。
フィルムを2分割し、通常の35mmフィルムで2倍の撮影ができるハーフカメラ。老舗メーカー「ヤシカ」のハーフカメラである、「YASHIKA Half17」のジャンクを7000円で入手した(参照記事)。さっそく分解修理をしてみたのだが、露出計が壊れていて直せない(参照記事)。結局オートは断念して、マニュアル動作のカメラとして使うことにした。
1/30秒固定のマニュアルカメラとして、ジャンク品から現役復帰を果たしたYASHICA Half17。正直、7000円も出したのにがっかりだが、革を張り替えたらちょっときれいになったこともあり、少しやる気が出てきた。当初の目的である、YASHINONレンズの威力を確認すべく、さっそく撮影に出かけた。
とは言え、シャッタースピードが1/30秒では、ISO100のフィルムを入れても日中はほとんど目いっぱい絞らないと、露出が合わない。そのぶん被写界深度が深くなるのでフォーカスは気にしなくていいとはいえ、レンズの味は開放で分かるわけで、これは後々何らかの手だてを考えなければなるまい。
実は、最初の修理をしたあとに撮影を始めたところ、しばらくたったらまたシャッターが張り付いて、開かなくなっていたことが判明した。「どうもシャッター音が軽いな」と思って自分に向けてシャッターを切ってみたところ、全然開いていなかったのである。
取りあえずフィルムを巻き戻す。パトローネ内まで完全に巻き取ってしまうともう先端が取り出せないが、巻き取り軸からフィルムが外れた手応えのところで巻き戻しを止めればいい。そうすれば、先端が巻き取られていないので、また同じフィルムを装填でき、無駄がないわけである。ジャンクカメラを扱っていると、こういう貧乏くさいことばかり覚えてしまう。
もう一回分解、シャッター羽のクリーニングをして再度組み立ててみた。まだ余分な油分が残っていたようだ。何度も分解しているので、もうすっかり分解手順を暗記してしまった。先頭の5枚ぐらいは撮れているはず。そう思い、5枚ぶん空送りして、もう一度撮影に出かけた。
予想外にシャープな描写
実際に現像から上がってきたものを見て、少なからず驚いた。この時代のコンパクトカメラ、しかもハーフだと、多少眠い感じがあるものだが、ハーフとは思えないほどシャープに撮れている。
かなり絞って撮ったのだが、深度もあり、パンフォーカス的な感じはあまりない。これはぜひ開放でも撮ってみたいレンズだ。
同サイズのハーフカメラとしては、キヤノンのDemiシリーズがある。だがこれは当時コーティングが良くなかったのか、レンズがカビているものが多い。ハーフカメラの代名詞といえばオリンパスのPenシリーズだが、これは割と周辺の光量落ちが見られたりして、レトロな写りをする。
YASHICA Half17は、ハーフにしてはボディが大きく重いのが難点だが、クラシカルなボディの印象とは裏腹に、かっちりした描写をするレンズの良さが光るカメラだ。値段的には大衆機ながら、これだけ写れば買った人は皆満足したことだろう。この描写力が、現代まで引き継がれなかったのが残念だ。
フィルタ径を計ると52mmだった。これはニコンの一眼用レンズと同じ径だ。8倍のNDフィルタがあったので、今度はこれを付けて撮ってみようと思う。多分、日中でもF5.6〜4ぐらいまでは開けられるのではないか。あるいはもし、いい出物があったら、今度はちゃんと動くものを買い直してもいいかもしれないと思った。
関連記事
- -コデラ的-Slow-Life- Vol.63:見た目以上に重傷、YASHICA Half17の中身
老舗メーカー「ヤシカ」製ハーフカメラのジャンク品に出会った筆者。7000円とジャンク品にしては高価だったこのカメラは、果たしてどんな状態なのか? まずは分解して調べてみよう。 - -コデラ的-Slow-Life- Vol.62:シンプルでレトロなデザイン、YASHICA Half17
フィルムを2分割し、通常の35mmフィルムで2倍の撮影ができるハーフカメラは、1950年代末から約10年間ブームとなった。ある日、老舗メーカー「ヤシカ」製ハーフカメラのジャンク品に出会った。筆者にとっては初のヤシカである。 - -コデラ的-Slow-Life- Vol.61:古いカメラ&レンズを選ぶための、3つのチェックポイント
- -コデラ的-Slow-Life- Vol.60:中古カメラ、店選びと買い物の作法
- 「-コデラ的-Slow-Life-」記事一覧
- 小寺信良氏 LifeStyle執筆記事一覧
- 大人の遊び心を刺激するプレミアムマガジン +D Style
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.