「FUJIFILM X-E2」第3回――Xレンズで切り取る年末の風情:長期使用リポート
今回でひとまず「FUJIFILM X-E2」のリポートも一区切り。X-E2とXレンズ一式を手に、年末感が迫る、郊外のニュータウンを歩いてみた。
「FUJIFILM X-E2」の最終回となる第3回は、X-E2一式を手に郊外のニュータウンを歩いてみた。くたびれた年代物のショルダーカメラバッグにボディとレンズ数本を放り込み、年末の慌ただしさが出てきた丘陵の街をブラブラと撮影しに出かけたのである。
35ミリ換算21ミリ相当になる「XF14mmF2.8 R」を装着して都市公園を訪れた。池のほとりで休日を楽しんでいる父娘にフォーカスして、縦位置で青く澄んだ冬の空を入れ込み、このカメラの特長であるフィルムシミュレーションを試してみた。
デビュー当時から愛用していたフィルムと同じ名前の「Velvia」「PROVIA」を適用してみたが、このシーンではPROVIAモードが気に入った。なお「DRIVE」ボタンを押してフィルムシミュレーションだけでなく、AEブラケティング、ISO感度ブラケティング、ダイナミックレンジブラケティングも簡単に設定できるので、イメージが固まっていない時にはこれに頼るのもいいだろう。
引き続きフィルムシミュレーションで遊んでみる。今度はモノクロだ。このモード時は+Ye/R/Gなどのフィルターを適用した仕上がりも適用できる。美しい粒の揃ったモノクロームの描写は、まるでミクロファインでネオパンSSを丁寧に現像したかのようだ。このように定評のあった銘フィルムをデジタルで気軽に再現して楽しめるのは、実際にフィルムを製造していた富士フイルム製品の強みであろう。
公園内の池をちょこまかと航行するラジコンの船を、「XF55-200mmF3.5-4.8 R LM OIS」を装着して追ってみた。小さく、かつ、細かくターンを繰り返すので正確に合焦するのが難しい被写体だが、像面位相差AFのおかげか絞り開放でもしっかりとピンが来た。船の細かい造形もなかなかのものだ。色味も冬の午後の雰囲気をうまく再現していると思う。
XF14mmF2.8 Rで誰もいないインテリジェントビル内を撮影した。ゆがみの少ないこのレンズの写りは実にいい。シャープで冷たい休日のオフィスビルの冷たい空間を見事に写しきっている。少し絞り込みたかったため感度をISO800に上げたが、この程度ではまったく問題にならないほどノイズが見られないのが驚きだ。白い壁から漆黒のタイルまでのトーンが美しい。オートホワイトバランスも的確に働いている。
暮れも押し迫った駅前のターミナルは慌ただしい。路線バスがひっきりなしに入ってきては大勢の人を乗せて走り去っていく。長く伸び始めた影は夕暮れが近いことを物語っている。先ほどのレンズで感度を上げたままのX-E2でペデストリアンデッキからその光景を撮影した。
柵が撮影の障害になったが、腕を伸ばして液晶モニターでのシューティングに切り替えた。3型/約104万画素で明るい液晶はほぼ逆光の状態でも見やすく助かった。グッと絞り込んで(F16まで絞り込んだ)の撮影であったが、点像復元処理のお陰だろうか路面に散らばる落ち葉までシャープに写っているのが分かるだろう。
そろそろクリスマスだ。X-E2に引き続きレンズはXF14mmF2.8 Rで、郊外の駅前に点ったばかりのイルミネーションを撮ってみた。空の明るさがまだ残っていたので、マニュアル露出でアンダー目にしてグラデーションを引き出す。ダイヤルオペレーションによるマニュアル露出のやりやすさはとてもいい。ただレンズ側の絞りリングと引き出し式フォーカスリングの節度感はもっと固くていいと感じた。設定値より不用意に回ってしまうことは避けたいからだ。
わずかな期間であったが、X-E2とXマウントレンズ群を試してその実力を知ることができた。まずはレスポンスの良さに感心し、そして「さすが富士フイルム」と思ってしまう写りの良さに感動し、豊富なレンズ群の描写と質感に舌を巻いた日々であった。
Xシリーズはミラーレスカメラの中で若干地味目な存在になってしまっているが、総合的に見てパフォーマンスは非常に高いので、もっともっと注目されてもいいシステムであろう。権利関係で写真は掲載できないが、期間中撮影した女性タレントの晴れ着姿はとても美しかったことを付け加えておこう。日本女性を美しく撮るには最適のカメラだと言えるかもしれない。返却するのが惜しくなったほどのカメラは久しぶりである。
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