本大好き司書メイドの好感度を上げ、年に一度のデート権を得るべく繰り広げられるメイドたちのラブアタック。34回目は、ノアからのご紹介です。
すっかり寒くなってしまったこの街の片隅に、メイドの営む私設図書館がありました。そこには書架を守る司書メイドがいます。
ほんわりおっとりした司書メイド・ミソノに、淡い思いを抱くメイドもいるようです。彼女の好感度を上げようと、お気に入りの1冊を持って、書架にメイドがやってきます。おやおや、今日はいつもと違うメイドのようですよ……?
ミソノさん! 本棚を整理していたら、古い本を見つけました。
あらあら? 表紙は色褪せたような風合いにしてありますが、紙はぴんと新しくて……2012年に発行されたご本ですね!
新しい本だったんですね。読んでみたら、江戸時代の人たちのことが書かれていて、歴史を感じました! そういえばミソノさんは「歴史とは、現在と過去との対話である」という言葉を知っていますか。
まあ……趣深い言葉ですね。どなたがおっしゃったのかしら。
歴史家のE・H・カーさんが残した言葉なんです。わたくしはこの言葉にはじめて触れた時、少し不思議に思いました。「現在に生きるわたしたちなら、過去の出来事を知ることはできる。でも逆はない。過去の人々が現在に生きるわたしたちを知ることができなければ対話にはならないのでは?」と。
語りかけるだけじゃなくて、お返事が戻ってこなければ「対話」と呼べないのでは? とノアさんは解釈したのね。
ええ。でもそんな問いへの、自分なりの答えを発見させてくれたのがこの『無私の日本人』です。
(カバーをめくり)わぁ、表紙が真っ白なんですねー。素敵な装丁です。
この本の表紙はまるでカバーを外したようにまっさらで、描かれている内容は江戸時代に生きた、純潔な3人の人生です。
穀田屋十三郎・中根東里・大田垣蓮月――物語調で描かれた彼らの歴史は、まるで身近な人のお話を聞いているようでつい気持ちが入り込んでしまいます。
中でも江戸中期の儒者・中根東里の章では、何度か胸を詰まらせてしまいました……。本書では、東里さんの高潔な人柄を知ることができるエピソードが紹介されています。東里さんは、幼い頃から一日中食事を取る暇もなく読書に耽り、学問に励むお方だったそうです。
まあ、学問一筋の学者さん、といった感じのお方なのかしら。
ところが、そんな東里さん、たまたま近くにいた病人を助けるために、衣服やら値のある書籍を全て売り払ったというのです。書物を手放すことを止めた家族に、東里さんはこう言ったそうです。
「人の命は書物より尊い」と……。
なんてことはない言葉にも聞こえますが、家族でもない友人でもない人のために、人生をかけた宝物を手放せる人がどれだけいるだろうかと、ふと思ってしまいました。
自分の胸に手を置いて考えてしまいますね……。
このご本で紹介されている3人の人々は、自分・家族・知人を超えて、あらゆる人々のために生きた「無私」の人々です。
以前読んだ本の中で、濱口梧陵が、津波に備えて世界初の堤防を築き「住民百世の安堵を測る」という言葉を残したことが書かれていました。彼のように現在だけではなく、時を超えて、未来のことまでを想って行動される方がいらっしゃるのだな、と本書を読んで感じました。
「歴史とは現在と過去との対話である」。
現在に生きるわたくしたちは、未来までをも想って生きた彼らの想いから学び取る。それが「現在と過去との対話」なのだとわたくしなりに理解しました
本への愛情、オススメの仕方が上手だとミソノの好感度アップ! それぞれミソノの心を占めている割合は……?
エリス:12% レイラ:35% サヤ:31%
宝島から『The Stories of Schatzkiste 〜私設図書館のメイドたち〜』リリース
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