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日本アイ・ビー・エム 平井康文理事ソフトウェア事業部長 WebSphere,DB2,Lotus,Tivoliの4ブランドで新しい価値を創造

ZDNet 4つのブランドの内,まずは,WebSphereとDB2のビジネス展開について聞かせてください。

「俊友会管弦楽団」では主席チェリストを務める
平井 DB2については,米国ではオラクルのシェアが34%なのに対し,DB2は33%にまで拡大しています。日本でもこの状況に少しでも追いつきたいと考えています。そのための1つの戦略としては,Informixとの統合により「1+1=3」になるようなビジネス展開をしていきたいと考えています。

 一方のWebSphereは,1999年1月にリリースして以降,着実に成長している分野です。2001年は日本国内で900%の成長を記録しました。今後もパーベイシブ・コンピューティングとの連携など,さらにミドルウェア製品としての領域を拡大していくことになるでしょう。2001年で特徴的なのは,イーベイをはじめ大企業がミッションクリティカルな分野でWebSphereを採用し始めたということです。これは,WebSphereの高いパフォーマンスと信頼性,拡張性など,エンタープライズ製品として認知された結果だと思います。

 しかしIBMでは,あくまでもミドルウェア領域に特化した戦略を展開します。その上で利用されるアプリケーションについてはパートナー企業に任せるというスタンスに変更はありません。

ZDNet 日本のロータス,チボリについては,2002年に大きく組織変更されることはあるのでしょうか。

平井 組織という意味でいえば,ロータスの安田社長もチボリの鈴木社長も,私に事業報告をすることになっていますので,既に1つのチームといえるでしょう。しかし,それぞれの製品単体で見れば,今後もロータスおよびチボリ両製品とも,独立性を持って顧客に提供していきます。この部分では,今までと何ら変わりはありません。

 しかし,4つのブランドとしてみた場合には,それぞれの製品の統合機能を強化していきます。つまり,4つの製品を組み合わせてインテグレーションし,IBMのソフトウェアグループ製品として顧客に提供していくという新しい戦略を推進していきます。このときにはロータスもチボリもIBMも1つの組織として,顧客に最適なソリューションを提供できるよう協力していきます。

 会社の形態は,国により事情があるので,一様にはなりませんが,そこでどのような戦略が展開されているかを注目してもらえるとIBMの考え方がよく分かると思います。

ZDNet 2002年は,IBMのソフトウェア事業にとってどんな年になると思いますか。

平井 もちろん景気の動向により大きく左右されることになると思います。しかし,まだまだこの分野は成長の余地が大きく残っている分野だと考えています。2001年1年を振り返ってみると,WebSphere,DB2,Lotus,Tivoliという個々のサブブランドの認知度を向上するための戦略を推進した1年だったといえるでしょう。この基本的な戦略は成功したと思います。

 そこで2002年は,個々のサブブランドを組み合わせた新しい価値の創造を行っていくということが基本的な方針になります。

 具体的には2001年11月に「WebSphere Portal Server」を発表しましたが,これはWebSphere製品群だけでなく,ロータスのナレッジマネージメント製品やチボリのコンテンツ管理製品などを統合し,ロータスの安田社長と一緒に発表したパッケージスイート製品です。このような組み合わせ製品の提供をより一層推進していくのが2002年に最も注力する戦略です。

ZDNet パートナーシップという面ではどのような戦略を考えていますか。

平井 IBMのソフトウェア製品は,メインフレームを除けば,80%以上がパートナーとの連携によるビジネスなのです。ですから,日立や富士通,NEC,コンパックなど,従来ならIBMの競合といわれていた企業とも,ソフトウェア事業では今まで以上に積極的に協力関係を拡大していきたいと考えています。

 これにより,お互いに相乗効果の期待できる製品の組み合わせが実現できると考えています。もしかしたら,ハードウェア製品との組み合わせだけでなく,ミドルウェア製品同士の組み合わせビジネスも実現できるかもしれません。

「年末年始は,徳島の実家でのんびりしました」と話す平井本部長。「IBM全社員30数万人の中で阿波踊りを躍らせるとナンバーツーです」と笑う。休みの日には,学生時代から始めたチェロの練習がもっぱら。カーネギーホールでの演奏も経験したという。現在,堤俊作氏が率いる「俊友会管弦楽団」に参加し,2002年2月9日には東京芸術劇場での定期演奏会も予定されている。

[聞き手:山下竜大 ,ITmedia]