UUCPの時代からインターネット接続サービスを提供してきた，国内最古参のISP，インターネットイニシアティブ（IIJ）。データ通信に特化した通信インフラを提供するクロスウェイブ コミュニケーションズ（クロスウェイブ）や総合的なシステムインテグレーションを行うアイアイジェイテクノロジー，相互接続サービスを展開するインターネットマルチフィードといった関連会社とともに，日本のネットワークをリードしてきた。2001年だけでも，商用ベースでのIPv6/IPv4デュアルスタック接続やイーサネット型接続（広域LAN），ブロードバンド向けコンテンツ配信といった新たなサービスをグループ会社とともに次々と打ち出している。同社代表取締役社長の鈴木幸一氏に，今後のネットワークの可能性について，改めて伺った。

ZDNet　昨年を振り返ってですが，まず不況の影響はありましたか？

「市場が1つのスケールに到達したという意味で，昨年はターニングポイントだった」

鈴木　確かに不況は大変ですね。「景気が良かったらもっと企業の投資は進んだかもしれない……」という見方もあるかもしれない。でも，それにもかかわらず，通信のデジタル化という流れは確実に進んできていますよ。インターネットという通信手段の可能性は，ブロードバンドが出てきてさらに広がっている。

　CATVやADSLによって，確実に広帯域化の流れは速まっていますよね。そして結果的に，動画を含めた大容量コンテンツ配信といった，広帯域を使わなければ不可能だったサービスが出てきている。今ではもう，200万以上のユーザーがブロードバンドの帯域を使い始めていて，インターネットが違った形を取り始めている。まぁこれも，まだまだこれからだけれど。

　とにかく，この分野のアナログからデジタルへという流れはもう絶対のことですよ。不況下にもかかわらず企業の投資意欲は下がっていないし，技術革新に対応せざるを得ない，そういうところにあると思いますね。

ZDNet　企業向けサービスを見ると，昨年は広域LANサービスなどに注目が集まるようになりました。そういう意味で，IIJの関連会社であるクロスウェイブは先駆的な存在といえますね。

鈴木　クロスウェイブが広域LANサービスを開始したのはもう2年前のことだけれど，それが認知され，今や市場を席巻しています。

　クロスウェイブのサービスはイントラネットが中心です。ネットワークインフラは交換機のないインフラですから，自由度が大きい。フレームリレーと比べると，パスの設定が不要でコストも下がるといったメリットがある。メインのネットワークを，これまでのフレームリレーなどからイーサネットに切り替えるほうが，より安くて広帯域を利用できるのだということが市場でも理解されています。

　ネットワークの広帯域化にともない，ブロードバンド向けコンテンツ配信ネットワーク（CDN）も盛り上がりを見せています。動画や音楽といったさまざまなコンテンツを本当に楽しめるレベルで見たり，使えるような流れが，昨年から本格化してきた。われわれもこれまでの準備を踏まえて，昨年は各社とのコンソーシアムであるCDN JAPANを本格的に稼働させ，実際のコンテンツ配信を開始しました。

　そういう意味で，ネットワークプラットフォームが実際に使えるレベルになってきたと思いますよ。同時に，どんどん登場している新しい技術に対し，アナログにおける社会の仕組みやビジネスといったものを変えていかなければならない段階にきています。

ZDNet　ブロードバンド接続が普及すれば，当然，バックボーンの増強も避けられませんが……。

鈴木　いや，そこはわれわれが得意な分野ですから。逆に，もっと早くこういう時代が来て欲しかったくらいですよ。

　われわれはこれまで，ネットワークの負荷分散だとか，キャッシュ，トラフィックコントロールといった運用技術を研究し，ブロードバンド時代に向けた準備を行ってきていますからね。

ZDNet　昨年はSLAの強化なども打ち出しましたが，当然，サービス品質を落とすわけにはいきませんよね。

鈴木　もちろん，高い品質，高い信頼性を維持し続けなくてはいけません。そういう点，特に日本のユーザーさんは厳しいですからね。われわれも，ユーザーの厳しい要求の中でずいぶん鍛えられました。

　ネットワークがビジネスのライフラインになってきて，さらに高い信頼性やクオリティが要求されている。いつまでも遊びのインターネットじゃネットワーク社会は発展しません。お客さんのいろいろな要求に応えていく中で，技術やサービスが磨かれているんです。