Interview:
BEAのチュアングCEO、SOAとオープンソースを語る (2/2)
モバイルを変えるAlchemy
IDGNS eWorld会期中の5月26日、BEAは新しいイニシアチブ、「Project Alchemy」を明らかにしました。これについて説明してください。
チュアング これはモビリティに関する構想です。ユーザーが接続しているか、していないかに関係なく、常にオンラインと同様の素晴らしいブラウズ体験を提供できます。BEAがある製薬会社向けに構築したライブのデモでは、モバイルコンピューティングがエンタープライズユーザーの視点を完全に変えてしまうものであることを体感できるでしょう。アプリケーションはとても直感的なものになり、だれもがすぐに利用できるでしょう。
IDGNS アナリストたちは、SybaseのiAnyware部門がモバイルアプリケーション市場を牽引しているとしています。Alchemyには、iAnywareにない機能がありますか?
チュアング すべての種類のエンタープライズ接続に、iAnywareでは対処できません。iAnywareは端末の観点から見るとパートナーとなるでしょう。ここでの競争は急速に変化しているからです。Alchemyは、ブラウザのエミュレーション的な役割りを果たし、接続と切断、ステート管理を行ってくれます。
IDGNS いつ市場に投入する予定ですか?
チュアング 恐らく今年末か来年初めに投入されるでしょう。
30億ドル企業に向けて
IDGNS 先ごろ、オリビエ・ヘルボード氏を、製品チームから長期的戦略計画における新しい職務に異動させています。これについて説明してもらえますか。
チュアング BEAは、今後5年間で30億ドル企業になるという社内目標を設定しました。これまで、10億ドル企業に到達したソフトウェアベンダーは12社しか存在せず(BEAは昨会計年度で達成した)、私が思うにそのうちの7社はそこで行き詰っています。
われわれは、落とし穴にはまりたくないと思ったのです。われわれのような企業は、3四半期先しか見ないという傾向があります。これでは30億ドル企業という目標に到達できません。実現のための唯一の方法は、それを実現させることに専念する強い社員を配置することです。
IDGNS それは製品の幅を広げるということでしょうか? それとも既存製品の売り上げを強化することでしょうか?
チュアング もちろん、製品の幅を広げることです。市場は刻々と変化しています。(Webサービス標準によって組み合わせられた)コンポジット型のアプリケーションが次々と登場し、私の予想ではこの2、3年内にパッケージアプリケーション市場は、抜本的変化を経験することでしょう。そこでのBEAの役割りは何か? 垂直型のアプリケーション事業に参入するつもりはありません。では、コンポジット型のアプリケーションを容易に構築できるための技術をどうやって提供するか? このようなことを深く考えているところです。
IDGNS 新しい開発ツールということでしょうか?
チュアング それよりも、アプリケーション内部で重要な機能を果たす、プリパッケージされた技術だと思っています。ユーザーがアプリケーションを構築する際に、テコ入れして利用できる出来合いのコンポーネントです。BEAは垂直型事業に決して参入しません。ISVと競合することになるからです。しかし実際のところ、アプリケーション内部の多くの機能は非常に水平型です。
アプリサーバもオープンソース化?
IDGNS オープンソースは、広い開発者コミュニティーのスキルを活用できるといわれています。ソフトウェアベンダーは、オープンソースを自社製品に開発者を呼び込む手段としても捉えるようになってきました(BEAはeWorld開催に先立ち、自社の開発環境であるWorkshopソースコードの一部を公開すると発表している)。
チュアング われわれにとっての狙いは、まさにそれです。われわれはWorkshop(のランタイム環境)をオープンソース化し、Tomcat(オープンソースのWebサーバ)と連携可能にしました。Tomcatは巨大な開発者ベースを抱えています。いったんオープンソースにすると、TomcatユーザーはWorkshopユーザーになり、やがてWebLogicユーザーになります。
IDGNS ということは、BEAのアプリケーションサーバのオープンソース版の提供も計画しているのでしょうか?
チュアング アプリケーションサーバのAPIに依存しないようになれば、それは意味があると思います。アプリケーションサーバのローエンド版をオープンソースにして、採用を増やすことができます。しかし、現時点では依存している部分が多いため、顧客を混乱させてしまいます。今のところ、顧客が最重要事項と考えていることはサポートと信頼性です。
IDGNS 「APIに依存しなくなると」と言いましたが、これは、互換性を確実にする標準が十分にそろったらという意味でしょうか?
チュアング Linuxが成功した理由を考えてみましょう。UNIXのプログラミングをしなくなり、RPCを使わなくなり、ファイルシステムを使わなくなり、デバイスドライバを使わなくなり、何も使わなくなったからです。
これは、デベロッパーらがSolarisではなく、その上のレイヤでプログラミング、つまりJ2EEのプログラミングをしているということです。彼らにとって、Solarisの上に実装するのか、あるいはLinuxの上なのかは、問題ではありません。これと同じような現象がアプリケーションサーバにも起こり始めたときが、オープンソース化のタイミングといえます。
IDGNS 今後12カ月以内で起こるでしょうか?
チュアング いや、起こらないでしょう。
VARネットワーク構築中
IDGNS BEAは北米市場でVARのネットワークを構築中で、小規模事業者にリーチしようとしています。この市場は、BEAにとって大きな成長が見込める分野だとみていますか?
チュアング BEAでは、小規模事業者が年商10万ドル以下、中堅企業は25万ドルから100万ドルとなります。VARはどちらの市場にも有効となります。また、企業名が有名ではないものの、より大規模な顧客もVARがカバーするかもしれません。
現実的には、WebLogic Serverを販売するのに、付加価値はどのくらいか、ということになります。われわれは付加価値を付けているわけではありません。WebLogic Serverは市場で最もよく使われている製品で、だれもが設定が簡単であることを知っています。顧客がわれわれに電話をかけてくるときには、既にBEA製品のユーザーなのです。つまり、われわれは販売にたくさんの付加価値を付けておらず、コスト高のチャネルを使って、うまくいけばほかの製品の販売にもつながる製品を販売してきました。今回、その代わりに一気に増やしたいと思っており、そのためにはVAR経由しか方法はありません。
IDGNS もし私が小規模事業者だとしましょう。今後6カ月のうちに、VARが私の会社のドアを叩き、WebLogic Serverを販売してくると期待していいのですか?
チュアング 恐らくそうでしょう。
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