運用管理コストの削減――削減策のアプローチと選択肢ITインフラ・マネジメントを考える 第2部

アウトソーシングの有効性については賛否両論あるが、経営手法の一環として位置づけられる新しいタイプのアウトソーシングも登場してきた。ITインフラのTCOやコスト削減を実現するには、ビジネスの観点からITインフラを捉えることが大きな要素になる。

» 2004年06月23日 13時48分 公開
[Open Enterprise Magazine]
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コア・コンピタンスへの集中

 一般的な経費節減と異なり、企業の業務や戦略と密接に組み込まれたITインフラの運用管理コストを削減する場合は、当然のことながら業務や戦略の変更を伴う。つまり、ITインフラのコストを削減するために、システム投資やその運用管理コストを見直すことは、業務プロセスそのものを見直すことにほかならず、ひいては組織・事業体制を含むビジネス・モデルへと目を向けざるを得なくなる。

 従来から、コスト削減に有効な方法として行なわれてきたのが、システム環境の運用管理業務を外部組織に委託するアウトソーシングである。特に、そのシステムを構築・納入したベンダーであれば、構成や設定についての詳細な情報を知っているはずで、ユーザーよりも効率的かつ低コストで運用管理できるはずだというのが、コスト削減の根拠になっている。

 しかし、アウトソーシングしてみたものの、当初の計画どおりにコストが削減されない場合もある。全業務を委託しているため、実際の業務量や作業負荷が見えなくなり、ユーザーは、いわゆる“囲い込まれた”状況に陥り、それがコスト高となって返ってくる。また、アウトソーシングしている業務については、当然ながら運用ノウハウやスキルは蓄積されない。その結果、IT要員のスキルが低下し、運用管理のコントロールを失うことにもつながる。

 このように、これまではアウトソーシングというとネガティブなイメージで捉えられることが多かった。しかし、最近になって、アウトソーシングをIT部門のコスト削減手段としてではなく、自社の中核となる事業(コア・コンピタンス)に集中するための手段として位置づけ、それに合わせてサーバ統合やシステム環境の簡素化を図るという動きが出始めている。

 これをIBMでは、「ビジネス・トランスメーション・アウトソーシング」(BTO)と呼んでおり、新しいタイプのアウトソーシングとして位置づけている。

サーバ統合によるコスト削減

 組織内に分散したITリソースを物理的に集約するシステム統合も、TCOの削減策として注目されるソリューションの1つだ。これによって、複数カ所で行なわれている運用管理業務を集約できることになり、IT要員の削減につながるだけでなく、複雑化の軽減が図れる。

 ITセントリックスの調査結果によると、同社が面接調査したユーザー企業の多くは、サーバ統合によってデータセンターの単一性を強化したことで、15〜30%の運用コスト削減が実現したという。また、この金額と統合されたシステムによる運用メリットを合わせると、アプリケーションによっては管理コスト全体を50%以上削減できる場合もあるとし、「環境の合理化によって可用性と柔軟性が向上し、その結果、ユーザーの生産性が1〜3%は確実に高くなる。これは大企業の場合、数百万ドルにも相当する」と分析している。

運用管理のユーザー自立を促す

 サン・マイクロシステムズが2003年4月から提供開始した「IOM(Interim Operation Management)サービス」は、情報システム管理基準「ITIL」に準拠したシステム運用管理サービス。

 従来より同社では、企業の情報システムにおける運用管理の改善を図るサン・マネージド・サービス(SMS)を提供しているが、このIOMサービスは、SMS強化の一環として新たに提供されるもの。システム運用管理業務におけるユーザーの自立を促すという点で、従来のアウトソーシング・サービスとは一線を画すものだ。


 PDFでは、上記の内容の詳細に加え、実際にいくつかの事例を見ながらベスト・プラクティスを考えていくとともに、大手システムベンダー/ソフトウェア・ベンダーから提供されるさまざまな運用管理ソフトやツールを紹介する。

本特集はソキウス・ジャパンが発刊している月刊誌「Open Enterprise Magazine」のコンテンツをPDF化したものを公開します。同特集は2004年1月号に掲載されたものです。

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