NECは、同社製メインフレームの最上位機種「ACOS-4」シリーズにItanium 2を搭載することを発表した。ACOS-4、HP-UX、Windows、LinuxといったOSが動作することで、既存資産を活かしつつオープンシステムへの対応を図る
日本電気は8月2日、同社のプラットフォーム戦略に関する記者発表を行った。この中で、同社製メインフレームの最上位機種「ACOS-4」シリーズが大幅にその姿を変え、秋に登場予定の次世代ACOS-4ではインテルの「Itanium 2」を搭載することが明らかにされた。すでにIA化が進むACOS-2、A-VXIV、そして先月発表されたエンタープライズサーバのNX7700iシリーズに次ぐ施策となる。かつては「自前主義経営」と言われた時期もあったNECが大きく舵を切ろうとしている。
この次世代ACOS-4は、NECが独自に開発したチップセット/ファームウェアを搭載し、OSに次世代ACOS-4のほか、HP-UX、Windows、Linux(Red Hat Enterprise Linux)といったものを「ネイティブ」で動作させるという(従来のACOS-4についてはエミュレーションとなるが、従来とほぼ同等の処理速度を持つ)。既存のACOS-4とは完全なバイナリ互換を持つため、「既存の資産を有効活用しつつ、柔軟性のあるシステムを提供可能となる」(NEC、代表取締役副社長の川村敏郎氏)
また、パーティショニング機構(物理・論理分割ともに可能)が取り入れられており、それぞれのOSはメモリとプロセッサ資源を共有しながら動作することができ、ニーズに合わせてダイナミックにリソースを構成し直すことが可能となる。
NECでは、そのユーティリティ・コンピューティングのコンセプトを含むオープン・ミッション・クリティカル・システム(OMCS)を提唱している。そして、OMCS構築のための技術やミドルウェアを体系化し、プラットフォーム・テクノロジー「VALUMO」(バルモ)として提供している。
VALUMOは企業価値をより高める“バリュー・モア(Value More)”を意味している。VALUMOプラットフォームは、自律、仮想化、分散、協調の4つの技術テーマで体系化されており、サーバやストレージなどのハードウェアと、OSやデータベース、そしてミドルウェアのVALUMOウェアによって構成される。
オープンシステムはトレンドとなりつつあり、メインフレームの分野においてもそれは例外ではない。とはいえ、多くのユーザーが既存の資産を捨ててまでオープンシステムに移行することは考えにくい。こうした背景を考慮し、ACOS-4と完全なバイナリ互換を実現し、かつオープン系システムへの移行をも可能にする次世代ACOS-4の発表につながったのだ。なお、ACOS-4などで利用していた周辺機器については専用アダプタを介しての接続であれば可能だとしている。
「IPF(Itanium Processor Family)でCMOSと比べて遜色ないものが作れると判断した。現在、IT投資の8割既存のシステムの維持で、戦略的な投資は2割に過ぎない。ITインフラの維持コストを最適化し、戦略的投資を増加してもらいたい」(川村氏)
なお、現在国内で稼動するACOSシステムは約1200。その中には三井住友銀行も含まれる。そうした企業にとって基幹システムで使われることが多いメインフレームにItanium 2を採用することは納得してもらっているか気になるところだが、これについては「話はしている」と答えるにとどまった。
変化の波が押し寄せているのはメインフレームの部分だけではない。これまでPA8800やPA8700を搭載するPA-RISCベースのエンタープライズサーバとして知られていた「NX7000」シリーズではすでに、Itanium 2プロセッサを搭載し、HP-UX、Windows、Linuxの混在が可能な「NX7700iシリーズ」を発表している。
NX7700iシリーズは、最大4CPUを搭載可能なセルカードを複数装着できる構造を採用(3020M-8以上のモデル)しており、最大64CPU構成を取ることができる。また、8way以上ではセルカード単位でそれぞれ異なるOSを稼動させることが可能。対応OSは、HP-UX 11i v2、Red Hat Enterprise Linux、Windows Server 2003。
ItaniumとPA-RISCが似たものだとはいえ、NECはPA-RISCを捨て去るわけではないようだ。製品ラインとしては、「NX7700i」と、PA-RISCの継続強化版「NX7000」の2系統に分割するという。
また、汎用IA32サーバ「Express5800/100」シリーズにはメモリアドレス空間を64ビットに拡張する機能を実装したインテルEM64T対応「Xeon 3.40GHz」を採用している。注目すべきは、64ビット環境に対応したOSおよびミドルウェアを製品化している点だろう。OSはRed Hat Enterprise Linux AS3(EM64T)、データベースにOracle9i Database Release2(9.2.0) for Linux x86-64bit CD Pack V1、クラスタソフトとしてCLUTERPRO SE Ver3.0が製品化されている。
しかし、Expressに関しては、今後注力するのはNEC独自の技術で付加価値をつけた「高付加価値サーバ」であるという。具体的な製品ラインでいえば、ftサーバやBladeサーバとなる。Expressサーバの売り上げにおいてこれらのサーバが占める割合は、2003年度の実績で15%、これを2006年度の目標は25%にまで押し上げていくとしている。
2003年度のNECのハードウェアプラットフォーム事業の売り上げは約5300億円で、営業利益は2%程度の約100億円であったという。これを5%程度まで押し上げるのが当面の目標だというが、ハードウェアの低価格化が進む中でこれを達成するのは非常に困難だ。そこで同社ではサーバコンソリゼーション(統合)事業に目を向けている。
川村氏はハードウェアの低価格化をかんがみると、ノンハードの部分は営業利益を10%以上に持っていかなければ(全体で)5%という数字は実現できないと話す。
「NECでは年間600から700案件程度が見込まれており、これは事業の柱になると考えている」(川村氏)
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