CaseStudy:SCMの可視化で競争力を強化〜韓国製鉄のポスコ(1/2 ページ)

韓国の製鉄最大手、POSCOは、経営の効率化とサプライヤーとの連携を強化するため、サプライチェーンマネジメントシステムを大規模に導入している。

» 2004年08月05日 13時06分 公開
[怒賀新也,ITmedia]

 韓国の製鉄最大手、POSCOは、経営の効率化とサプライヤーとの連携を強化するため、米i2テクノロジーズのサプライチェーンマネジメント(SCM)システムと、米OracleのERPであるOracle E-Business Suiteを導入している。同社は、生産活動におけるさまざまな計画プロセスを圧縮、統合し、ビジネスの計画サイクルを短縮した。さらに、サプライヤーと協業して、計画の正確性を向上、利益率も伸ばした。

 同社は、拠点最適をベースに生産活動を行うサイロ的な状況を避け、ソフトウェアによってサプライチェーンを一元的に管理することで、他社に対して強い競争力を確立したことが功を奏したとしている。同社の情報システムについて、POSCOのCIO、キム・ジンイル氏に話を聞いた。

「プロセスの可視化をテーマにサプライチェーンを変革した」と話すキム氏。

 POSCOは鉄鋼生産量で世界5位。25年にわたって製鉄所の現場で業務に携わったキム氏は、CIOとして同社のプロセスイノベーションを模索してきた。

 「技術ができることは技術がやればいい、人がやるべきことは人がやればいい」と流暢な日本語で話す同氏。日本鋼管や新日本製鉄といった日本の製鉄会社を、「われわれにとっての先生。管理能力が非常に高い」と評価する。

改革ではSixシグマを意識

 同氏は、「Sixシグマ」を自社の改革で強く意識した。Sixシグマとは、統計学の用語で、分布の「バラツキ」を意味しており、極めてバラツキの小さいSixシグマという状態で、ビジネスプロセスを構築することを目的とした経営改革手法。「経営の敵はバラツキにあり」が基本的な考え方になっている。

 1980年代、日本の製造業に先を越された欧米企業が、QCサークルなどに代表される日本的製造プロセスを研究した上で編み出したと言われている。

 同社は、全社的な観点からの情報システム導入により、Sixシグマ実現を図る。

 POSCOは、ERPパッケージにOracle E-Business Suite、計画系を含めたSCMシステムを、i2の11のアプリケーションを利用して構築することを決定。システム導入の目的は「プロセスの可視化」だ。売り上げの67%を外国人が占める同社のビジネスでは、各工場の生産キャパシティや在庫の状況を、リアルタイムに近い状況で把握することが不可欠だった。

 さらに、e-コマース、e-セールス、e-調達といった機能も追加しており、レガシーシステムから移行されたデータ量は40億にも上ったという。

計画系のサイクルを短縮

 新システムが稼動することにより、需要予測から生産計画の立案、工場での実際の生産活動というサイクルが短縮、計画の正確性が向上した。それが在庫水準の適正化につながり、財務状態も健全化する正のサイクルが生まれた。

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