仮想化による次の「PC革命」を予測するGartner

1台のPC上に複数のPC環境を仮想的に構築する仮想化技術が次の「PC革命」をもたらす。企業は効率的なPCのサポートポリシーを導入でき、TCOを削減できるほか、ベンダーらにとっても業界の再定義は必至となるだろう(IDG)。

» 2004年08月12日 13時24分 公開
[IDG Japan]
IDG

 Gartnerの最近の調査によると、(1台のPC上に複数のPC環境を仮想的に構築する)「仮想化」は今後10年でPCにとって最も革命的な技術になるらしい。

 「PCの仮想化技術は、PCのハードウェアとソフトウェアを分離するという形で企業のデスクトップに革命をもたらそうとしている」とGartnerは報告書で指摘。この分離により、複数のOSを単一のデスクトップ上で同時に動作させることが可能になるという。

 同社によると、IS(情報システム)部門は仮想化技術を利用することにより、ICT(情報通信技術)に対するサポートの効率的なポリシーを導入し、PCのサポートに関して費用効果の高いアウトソーソング契約を実現し、PCの配備にかかわるTCO(総合保有コスト)を削減することが可能になる。さらに仮想化は、PC業界を根本的に再定義し、製品の差異を取り除き、サービスと価格だけで競争することをベンダーに強いるという。

 Gartnerのブライアン・ガメージ副社長は次のように述べている。

 「PCの仮想化は今後5年間で大きな脚光を浴びるだろう。この技術は以前から一部の用途で使われてきたが、IntelやMicrosoftといった業界の主要プレーヤーによる支持が拡大(編集部注:IntelがVanderpool構想によってCPUに仮想マシンのためにメカニズムを組み込む一方、MicrosoftはVirtual PCをConnectixから取得)したことで、急速にメインストリームに登場すると予想される。これは、PCハードウェア/ソフトウェア業界、そしてより広範なICT業界に大きな波及効果を及ぼすだろう」

 Gartnerでは、PCの仮想化がユーザーにもたらすメリットとして、配備のベストプラクティスを手早く実現できることを挙げている。ユーザーには2つの異なる環境が与えられる。1つは施錠されていない環境で、ユーザーは自由にデバイスを追加したり、ソフトウェアをインストールすることができるというもの。その一方には、強固に施錠され、厳しい管理が行き届いた環境が用意され、IS部門はこの環境に重要な業務アプリケーションを安全に配備することができる。その結果、IS部門がネットワークのセキュリティを完全にコントロールする一方で、ユーザーは今でも忙しいサポートスタッフの負担を増やすことなく、自分の仕事の効率を高めるために新しいアプリケーションをインストールして実行することができる。

 Gartnerによると、仮想化技術の導入に成功したIS部門は、ICTサービスとアウトソーシング業務の状況も素早く把握できるようになる可能性があるという。PCの仮想化は、IS組織が管理すべき業務とそうでない業務の間の境界線を明確化する効果もあるとされている。ユーザーにとっての巨大な潜在的メリットは、業界にとっても同じくらい重要な意味がある、と同社は分析する。

 「この新しい業界構造の中で競争するには、ソフトウェアベンダーはもっと柔軟になる必要がある。ソフトウェアをライセンスする形態も変わらざるを得ないだろう。PC仮想化ソフトウェアが“1ユーザーにつき1ライセンス”という現行方式を否定するものとなるからだ。短期的には、これはラインセンス販売を拡大するチャンスであるとみる人もいるだろう。だが長期的には、そういった見方は危険だ。この新しい配備シナリオに気づいているソフトウェアベンダーは少なく、これにどう対応すべきかについてもほとんど合意が存在しないのが現状だ。これは1つの警告だ」とガメージ氏は話す。

 Gartnerはさらに、「ハードウェアベンダーやコンポーネントメーカーも影響が及ぶ」と付け加えている。ハードウェアではなくソフトウェアをベースとした仮想プラットフォームが、クライアントコンピューティングの究極の新標準となるだろう、と同社は予測する。

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