デルモデルを支えるIT、「経営との融合がカギ」と山田CIOInterview(2/3 ページ)

» 2004年08月30日 15時09分 公開
[聞き手:浅井英二,ITmedia]

ITmedia やはり、デルのサーバを売り込むわけですか。

山田 いいえ、販売が目的ではありません。こうしたプログラムの狙いは、意見交換の場をつくり、デル創立以来の社是である「カスタマーフォーカス」に基づき、われわれバックオフィスのスタッフも顧客の声に耳を傾け、技術や製品にフィードバックし、顧客満足度を高めることです。また、これは特に日本の顧客に言えるのですが、企業の枠を越えたIT部門同士の横のつながりが希薄だと感じています。彼らは、技術や製品を評価して方針を決めていかなければならないのですが、実際にはベンダーからの情報に多くを依存しています。私は、CIOとして、情報提供することに努めています。セールスのプレゼンはやりません(笑い)。

ITmedia 日本企業のシステム部門は、米国のそれなどと比較して保守的だといわれています。そうした機会を通じて感じる印象はどうですか。

山田 デルがIT投資を行う際、それを決めるのも評価するのも、「経営戦略にどれだけ統合されているか」がカギとなります。一方、これまでの日本企業のシステム部門は、ユーザー部門から言われたことをそのままやっているに過ぎず、経営戦略にIT戦略が同期・融合していなかったように思います。日本企業の経営者らもITガバナンスをどうやればいいのか分からないし、経営者からはIT部門がブラックボックス化してしまっています。

 デルのCIOは、経営陣と一緒になって、経営の目的を達成するためにITシステムがどう支えていくかを議論し、売り上げの伸び率を下回るIT投資でそれを実現してきました。経営陣に対してITが何をしているかを十分説明し、数値目標をつくり、自分たちもコミットしてきたのです。こうしたシステム部門は、残念ながら日本企業で少数派でしょう。

ITmedia CIOの権限が日米で違ったり、伝統的な雇用形態が影響しているように思います。

山田 デルのITガバナンスは、先ず、社内に情報システム部門がある意義を議論することから始めました。ユーザー部門から言われたことだけをやるのであれば、それはアウトソーサーでいいのです。社内にある意義は、経営陣と一緒に活動し、経営に貢献し得るということです。

ITmedia 日本でもそうした経営陣との密な活動を実践しているのでしょうか。

山田 はい。月に一度、ITに関する経営会議があります。そこでは、各部門の責任者から出された要求の中身をしっかりと見極め、会社全体として必要な投資なのか、どういうベネフィットが得られるのか、あるいは得られたかを精査しています。IT投資は、会社全体のコストに占める割合が非常に大きいものです。日本企業も先進的なところは変わろうとしています。

ITmedia 一例でいいのですが、デルが実施してきたITガバナンスのアプローチを紹介していただけませんか。

山田 「ITインフラの標準化」ですね。われわれは、かなりの時間と労力を割いて、システム構築のアーキテクチャを標準化してきました。それにはどういうツールをどう使うのかまで含まれます。

 これによって管理コストを節約でき、セキュリティに対する対策も迅速に進められます。例えば、マイクロソフトは毎月、パッチを配布していますが、重要度が高いものについては、全世界24時間以内にプロセスを完了できます。セキュリティホールを埋めやすいということです。

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