新日鉄ソリューションズ、Oracle E-Business Suiteを従量課金制で

新日鉄ソリューションズが日本オラクルと連携し、「Oracle On Demand@NSSOL」を提供開始する。ハードウェアと基幹システムの運用管理サービスを「従量課金制」で提供するのは国内初だという。

» 2004年09月01日 18時20分 公開
[浅井英二,ITmedia]

 新日鉄ソリューションズは9月1日、オンデマンド事業を本格展開し、その第一弾として日本オラクルと連携、オンデマンド型でITシステムを利用できる「Oracle On Demand@NSSOL(エヌエスソル)」を提供開始することを明らかにした。新日鉄ソリューションズのデータセンターで稼動するOracle E-Business Suiteを24時間365日止まらないサービスとして利用できるのが特徴。ハードウェアと基幹業務システムの運用管理サービスという組み合わせを「従量課金制」で提供するのは国内初だという。ライセンスおよびアプリケーションの初期導入費用は別途必要だが、1ユーザー当たり月額3万円でOracle E-Business Suiteの運用と管理を任せることができるようになる。

 IT投資に依然として厳しい目が向けられている中、TCOの削減やROI(Return on Investment)の明確化は企業にとって待ったなしの課題だ。特に保守・運用コストはIT支出の大半を占めており、それが戦略的なIT投資への足かせになっている。

 メインフレームやオフコンからオープンシステムへの移行も決して万能薬にならない。オープンシステムに移行したからといって、保守や運用がなくなるわけではないからだ。例えば、システムのライフサイクル全体を見た場合、初期コスト以外にも、トラブル対応、ソフトウェアのバージョンアップ、ハードウェアの更新などがある。マルチベンダーの異種混在環境を維持していくためには、専門知識を持つ技術者が不可欠で、人的なコストも膨れ上がりかねない。「運用管理面で問題を抱えている」「運用管理者を確保できない」──そんな企業がオンデマンド事業のターゲットだ、と記者発表会で新日鉄ソリューションズの鈴木繁社長は話す。

 完全なユーティリティモデルとはいかないものの、ハードウェアやOS、そして運用管理サービスを利用に応じてその料金を支払うことで、TCOを削減し、さらにはROIを明確化することは可能だ。

 ERPパッケージの導入といっても、実際には日本企業の多くはカスタマイズを行う。こうしたアドオンの開発やその保守は、Oracle On Demand@NSSOLのサービス範囲外となるが、逆にそのコストを浮き彫りにしてくれる効果も期待できるという。

 記者発表会に同席した日本オラクルの新宅正明社長は、「一式で幾ら、込み込みで幾ら、といったやり方に慣らされてきた日本のユーザーも、アドオンの開発と保守にかかるコストが明確になれば、それを極力減らしていこうという機運が起こるだろう」と話す。

ユーティリティーモデルへのステップ

 Oracle On Demandの起源は1998年まで遡る。ラリー・エリソンCEOがユーティリティーコンピューティングモデルの先駆けとして「Oracle Business Online」をぶち上げたのが始まりだ。昨年3月には日本市場でも「Oracle Outsourcing」という名称でサービスを始めた。依然として企業がライセンスを購入しなければならないことから、完全なユーティリティーモデルにはなっていないが、新宅社長は「ユーティリティーモデルへ向けた1つのステップ」と話す。

 Oracle On Demandは、大雑把に言えば、オラクル製品とその運用管理サービスを組み合わせたもの。製品を開発したベンダーのエキスパートによる運用管理サービスであるため、その品質が高いというのがオラクルのメッセージだ。OracleデータベースやE-Business Suiteのライセンスを購入した企業は、それが稼動している場所は問わず、日本オラクルのOn Demandサービスセンターから24時間365日監視してもらうことができる。

 Oracle 10gから大幅に機能強化が図られたOracle Enterprise Managerを活用し、あらかじめ設定されたしきい値を超えると監視サーバからアラートが出され、「TAR」(Technical Assistance Request)と呼ばれるOn Demandサービスセンター宛ての技術問い合わせが自動生成される仕掛けだ。

 Oracle On Demandのサービス形態は、システムの設置場所によっても3タイプに分けられている。1つは、顧客サイト内に設置されたシステムを、リモートから運用・管理する「@Customer」。2つ目は、日本オラクルのパートナー企業が提供するiDC内にシステムを設置し、それをOn Demandサービスセンターから監視する「@Partner」。今回のOracle On Demand@NSSOLはこれに該当する。最後の「@Oracle」は、米Oracleが米国内で運営しているデータセンターにシステムを設置し、エキスパートが直接、運用・管理作業を行うもので、「パートナーとの協業」を重視する日本市場では提供する計画はない。

 新宅氏は、「先ずは新日鉄ソリューションズの成功なくして、Oracle On Demandの成功はない」と話す。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

注目のテーマ