Red Hatのクライアント戦略をおさらいする

日本IBMが開催中の「IBM Linux コンファレンス〜秋のLinux祭り〜」で多くのセッションが開かれる中、Red Hatはクライアント戦略を再度アピールしている。

» 2004年09月08日 01時57分 公開
[西尾泰三,ITmedia]

 9月7日、8日の2日間、日本アイ・ビー・エム(日本IBM)は「IBM Linux コンファレンス〜秋のLinux祭り〜」と題したセミナーを開催する。2日間の約40セッションでLinuxに関する動向、製品・技術情報、ソリューション、事例やデモを紹介するのが狙いとなる。

 初日のセッションでは、パートナーであるRed Hatも登場、同社の最新エンタープライズ戦略が紹介された。この中で、Red Hat Enterprise Linuxの次バージョン、そしてクライアント製品がどのようになるかが示された。

Red Hatのクライアント戦略は第一フェーズ

 同社のクライアント戦略では、セキュアで管理の容易なエンタープライズクライアント環境を次の3段階に分けて提供する予定だという。

フェーズ1:管理、セキュリティとプラットフォームの統一

フェーズ2:生産性とユーザー実績、相互接続性

フェーズ3:広範なインフラへの適用

 ここでいうクライアント環境という言葉には注意が必要だ。ここで同社が考えているクライアント環境というのは、一般ユーザーが使用するクライアント環境としてではなく、企業における使用、それもシステムではなく企業ユーザーを想定したものである。そして同社ではクライアント環境は2つの製品でカバーしている。「Red Hat Enterprise Linux WS」と「Red Hat Desktop」である。

 Red Hat Enterprise Linux WSについては、「Red Hat Enterprise Linux」製品群のうち、デスクトップ/クライアント用途としての位置づけを持っており、最新版はバージョン3だ。スペックとしては2CPUのシステム構成まで対応し、メモリのサポート制限はない。また、デスクトップ/クライアント用途の製品であるため、Red Hat Enterprise Linux ASと Red Hat EnterpriseLinux ESに含まれる多くのサーバアプリケーションは含まれない。

 Red Hat Enterprise Linux WSと同一のコードを採用し、個人ユーザー向けのサポートサービスを付加して小売りのチャネルを通じて発売するのが、「Red Hat Professional Workstation」だ。こちらは、従来のRed Hat Linuxが「Red Hat Linux 9」をもって終了し、「Fedora Project」に移管されたため、その部分を補うものと考えればよい。個人ユーザー向けのサポートサービスを付加して……というあたりからもこの製品が企業ユースを想定していないことは明らかだろう。

 Red Hat Desktopは、前述した「企業ユーザーの使用」という性格をもっとも色濃く反映したものとなっている。Red Hat Enterprise Linux WSのようにサポートアーキテクチャにItaniumは含まれていないし、サポートするハードウェアリソースも1CPU、4Gバイトメモリといった制限がある。

 特徴としては、Satellite ServerもしくはRed Hat Network Proxyで一括してアップデートを管理可能になっているほか、10または50ユーザー用のパッケージとして販売される点も、個人ユーザーを想定していない姿勢が見られる。このあたり、SunのJava Desktop Systemが狙うポジションと似ているといえる。

 このRed Hat Desktopの最新版はバージョン3だが、セキュリティ面でSELinuxを採用していない点などを考慮すると、前述のフェーズでいえばフェーズ1にあるといえるかもしれない。

 同社は4月にセキュリティ強化に向けた2年間のロードマップを発表しており、政府のセキュリティ標準、セキュリティ認定、米国家安全保障局(NSA)主導で開発が進められているセキュリティ強化型Linux(SELinux)に関する取り組みを優先事項とする方針を打ち出している。

 今後登場予定のRed Hat Desktop(v4)では、Linuxカーネル2.6のほか、GNOME2.6/2.8、OpenOffice.org1.1+、Evolution 2.0、Cyrus IMAPなどが採用されるほか、gconfの強化による集中管理、入力制限、ネットワーク管理者を意識したクライアント環境設定ユーティリティといえるkiosk機能などを実装することで、そのフェーズを進めたい考えだ。

 Red Hat Desktop(v4)の登場予定としては、2004年末にはリリースされる見込みのRed Hat Enterprise Linux 4からそれほど間を空けずにリリース可能と思われるが、Red Hat Desktopの発表が2004年5月であったことを考えると、少し時間を取り、管理性の面を向上させる可能性もありそうだ。

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