コンプライアンス対応をCMSで自動化する――米StellentのVP

企業は現在、コンプライアンスへの対応を常に問われるようになっている。自社に蓄積している膨大な量のコンテンツの洗い出しと、将来に渡ってきちんと管理化に置いて、コンプライアンスの問題に対応していかなくてはならない。そこで、CMSがこうした作業を自動化するツールとして注目されている。

» 2004年09月12日 22時25分 公開
[聞き手:怒賀新也,ITmedia]

 法令順守や環境保護などの企業の社会的責任(CSR)が、早ければ2007年にISO(国際標準化機構)で国際規格になるという。こうした国際的な動きからも分かるように、企業は現在、法令や規定に準拠していること、つまりコンプライアンスへの対応を常に問われるようになっている。

 ここで、企業の情報システムが対応するべき課題の1つが、自社に蓄積している膨大な量のコンテンツの洗い出しと、将来に渡ってきちんと管理化に置いて、コンプライアンスの問題に対応していくことだ。

 この意味で、コンテンツ管理システム(CMS)が注目されている。また、Word、html、画像など企業のあらゆるコンテンツを効果的に管理し、企業の「次の一手」の基盤になるというCMSの第一義的な価値も、日に日に認識されている状況だ。

 CMSの提供で知られる米Stellentのバイスプレジデント、デイビッド・メイシー氏と、日本ステレント社長のブライアン遠藤氏に話を聞いた。

コンプライアンスへの対応が必須になることを強調するデイビッド・メイシー氏。

ユーザー別のCMS利用価値

ITmedia CMSについて、導入し、利用するメリットを営業担当者やマーケティング、システム管理者、経営者など、具体的なユーザー別の切り口で教えてください。

メイシー まず、営業担当者は、出先のノートPCからでも、ネットワークにつながっていれば、最新の情報にアクセスすることができます。マーケティング担当者も、より早く正確な情報にアクセスできるため、いろいろなチャネルに正しいマーケティング情報を配信できるようになります。

 また、システム管理者にとっては、CMSを使った場合、コンテンツ管理が非常に簡単になります。GUIベースの操作により、作業時間を短縮できます。

 逆に、経営者には「適切な人にアクセスできる」メリットがあります。つまり、コンテンツへのアクセス履歴が完全に管理されていることにより、関係のない人が重要な情報を閲覧することがなく、権利のある人だけが情報にアクセスできる体制を敷けるのです。情報への責任の所在がはっきりさせることができるとも言えるかもしれません。

コンプライアンス対応の自動化がカギ

ITmedia Stellentは企業のコンプライアンスへの対応の必要性を強調しています。現在の米国企業のコンプライアンスへの対応状況と、CMSとの関わりについて教えてください。

メイシー 米国企業にとって、コンプライアンスは何十年も前から意識されていました。現在そのトレンドは、コーポレートガバナンス(企業統治)にあります。セキュリティやレコード管理、ドキュメント管理など、法令に準拠することは、株式を上場している企業をはじめ多くの企業に要求されます。

 CMSを導入することにより、コンプライアンス対応で要求されることの多くが自動化されます。システムとしての複雑性も緩和され、透明性の高い文書管理システムを構築できるのです。ただし、CMSによるコンプライアンス対応策はまだまだ進化中の段階です。

ITmedia 導入事例の1つで米Coca Colaの話を聞きました。社内にある13本のコカ・コーラの瓶が、その貴重さから各地で展示されるなど、企業資産になっているとの話でした。Coca Colaは、Stellentを導入して、どのようなメリットを得ていますか?

メイシー この13本の瓶は同社の資産そのものです。CMSを利用すれば、これをだれが利用し、いつ戻され、次にどこへ行くのかといった情報をすべて把握できるわけです。つまり、電子的ではない物理的な資産も情報システムで管理する体制を敷けることで、13本の瓶は、同社にとっては瓶ではなく、資産という位置づけになるのです。

ユーザーはROIを実感できるか?

ITmedia CMSはよく「効果が目に見えにくい」と言われます。ROIの観点で、Stellentとしてはユーザーにどのように効果をアピールしますか?

メイシー まず、ユーザー企業の現状を把握するために、ある1人が1つの作業をするにあたって、どれだけの時間をかけているかを把握します。そして、CMSを導入して、その時間がどれだけ削減されるかを算出し、ROIを試算します。そのギャップが大きければ、ユーザー企業はCMS導入効果を実感してくれるはずです。

ITmedia 日本市場で具体的に注目している業種や、典型的な利用方法などはどのように考えますか?

遠藤 米Stellentとしても、日本は巨大な市場として認識しています。特に、金融サービス、保険、また製造業もターゲット業種です。また、Lotus Notesからの移行や、コンプライアンス対応を考えるユーザーも対象になります。Webサイトによる情報発信を戦略的に位置づける企業、さらに、技術仕様書を複数の企業間でリアルタイム共有するというニーズも想定しています。

日本法人社長のブライアン遠藤氏。

ITmedia 日本では今、e-Japan構想と呼ばれる電子政府プロジェクトが国家的に実施されています。実際、電子政府という意味で日本は比較的遅れています。米国における電子政府の役割と、CMSとの関わりを教えてください。

メイシー 米国でも、連邦レベルでは電子政府化が義務付けられています。欧州でも同じような状況と言えます。したがって、ユーザーがセルフサービスなどを利用する機会も多く、コンテンツ管理が重要になってきます。CMS導入による効果が期待される分野です。

ITmedia 今後、日本でビジネス展開する上での考えを教えてください。

遠藤 日本の商環境を認識し、ユーザーのニーズを理解しながら、パートナー企業とも協力してビジネスを行っていきます。



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