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» 2004年09月20日 13時07分 公開

特集:RFIDが変革する小売の姿:小売業が採用するべきRFIDのコード標準は? (2/2)

[怒賀新也,ITmedia]
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 同センターは2003年3月、TRONの開発者である坂村氏主催のT-Engineフォーラム内に設立された組織。「uCode」と呼ばれるRFIDにおけるコード体系の標準化を目指している。「日本発の技術を世界標準へ」という同氏の強い思いが背景にある。ユビキタスIDセンターには、9月2日現在で、国内の大手IT企業をはじめとする452団体が加盟する。

 例えば、洗濯機に洋服を入れると、洗濯機の中にどんな洋服が入っているかを洗濯機自身が自動的に認識して洗い方を自動調整したり、人にICタグを貼付することで、人が車と接触しそうなときにその人に貼られたICタグを自動車が読み取って交通事故を回避するといった利用方法も想定している。サプライチェーンというよりも、社会インフラの構築を重視している点が特徴だ。

 坂村氏は、「人間を取り巻くコンピュータが実世界のモノやヒトを自動認識するための仕組みを提供し、ユビキタス・コンピューティング環境を実現するために設立した」と同センター設立の経緯を話している。

 ユビキタスIDセンターにおけるコードの情報を取得する仕組みは、EPCと基本的には大きな違いはない。EPCを「uCode」に、リーダ/ライタを「ユビキタス・コミュニケータ」、PMLサーバを「製品情報サービスサーバ(Product Information Service Server)」、ONSを「uCode解決サーバ」にそれぞれ置き換えた形でコードの情報を処理する形が基本だ。

ユビキタスIDセンターにおいてコード情報を取得する仕組み。(ユビキタスIDセンターのWebサイトより)

 同センターは、主な活動内容を、ユビキタスID空間の割り当て、uCode解決データベースの運用、uCode技術の研究開発、uCode技術の運用および実験、さらに、プライバシー問題を解決するeTRONのための認証局としての役割も挙げている。

 同氏はuCodeの最大の特徴について、「既存の各種IDコードを吸収できるメタコード体系になっていること」を挙げる。JAN(日本の統一商品コード、EANに準拠)、UPC(1973年に米、カナダを対象に制定された統一商品コードの草分け)、EAN(UPCの成功を踏まえ1977年に欧州諸国が中心に作った統一商品コード)、ISBN(国際標準図書番号と訳される図書ごとに付与される固有の番号)やISSN(国際標準逐次刊行物番号。雑誌ごとに付与される固有の番号)などの各コード、インターネット上の接続ホストに付与されるIPアドレス、電話端末に割り振られる電話番号まで、さまざまなIDをuCodeの128ビットの空間に包含できる。

 つまり、小売や流通における既存の情報システムを利用しながら、RFID導入に取り組めるわけで、この点ではEPCよりも実用性が高いと言っていい。

世界はEPCでほぼ決まり

 一方、世界に目を向けると、EPCがほぼ実質的に唯一の標準になりつつある。「Wal-Martが採用する時点で実質的にはほぼ決まり」(小売業コンサルティングRSIの松吉章氏)という声があるだけでなく、実際に、独のスーパーマーケットのMetroや米国防総省、英スーパーマーケットのTescoなど、RFIDの実証実験でリードする組織はいずれもEPCを採用した実証実験を行おうとしている。

 その意味では、「(ユビキタスIDセンターの)uCodeを世界標準に持っていく」という願いは実現が困難になったと言える。先日、東京で開催された「Retail Technology Summit 2004」で講演したWal-MartのRFID戦略担当マネジャーであるサイモン・ラングフォード氏は、「RFIDの標準はEPCのみ」と言い切った。

小売ビジネスにとってはEPCが重要

 では、実際のところ、日本においてRFIDの標準化は小売業界にどのように影響を及ぼすだろうか?

 これは利用場面にもよる。流通業のIT化に関する研究で知られる舟本流通研究室の舟本秀男所長は、国際物流を前提にしたサプライチェーンの観点で言えば実質的にEPCしか選択肢はないというスタンスだ。

 現在、さまざまな業界のサプライヤー(製造業者)が世界中に製造拠点を構え、そこから複数の国の小売業者に製品が供給されている。こうした状況の中で、点在する製造拠点から日本向けに出荷されるものにだけ、別のタグ(EPC以外のタグ)を貼り、生産および物流ラインに流すというプロセスが世界で導入されるとは考えづらい。

 また、海外企業にとってみても、日本向けの製品にだけ別仕様のタグを貼ることにメリットは見出せない。このほかにもEPC優位の意見が大勢を占めていることからも、小売のサプライチェーンに限ればEPCに軍配が上がると言わざるを得ない状況だ。

 慶應義塾大学教授でAuto-IDラボジャパンの副所長を務める國領二郎氏は、「今までも“黒船来襲”が騒がれたことが何度かあった。だが、今回(RFIDによる流通の合理化を目指した世界的な動き)も含めて、日本の流通小売業界には危機感がない。」と話す。

「大手小売、流通企業などが標準化の活動に参加してくれることがRFIDの普及に何よりも必要」と語る國領氏。

 小売業者は、競争力を直接左右するサプライチェーン分野を重視し、Wal-Martなどが展開するEPC側の実証実験の行方により注目するべきだ。米国の小売業界では「関係するサプライヤーやリテイラー、競合相手とも情報を共有しなくてはならない」(Wal-Martのラングフォード氏)という意識が強く、垣根を越えた協力体制ができつつある。

 日本もこうした状況をしっかりと理解し、小売業界全体の国際競争力の確保に向けて、業界全体が協力し合ってRFIDに取り組み、小売の流通構造の合理化をどう実現していくかを考えていかなくてはならない。

 次回は、小売業を中心に、RFIDを導入する目的について紹介する。サプライチェーンの効率化と在庫圧縮が必ずしもすべての企業にとってのRFID導入の理由ではなく、真贋判定などの特殊な用途への利用を考える業界もある。

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