WMPバンドル禁止は独占阻止に有効か?――EU裁判所判事が疑問呈す

EU裁判所判事は、WMPのバンドル禁止令に「実際に効果があるというのは本当なのか」と疑問を投げかけ、MSに一部ファイルを残すことを許可する措置を考えているようだ。(IDG)

» 2004年10月04日 13時03分 公開
[IDG Japan]
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 Microsoftが独禁法違反で欧州委員会から命じられた是正措置に従うべきかどうかをめぐり、担当判事は10月1日、同委員会が命じた制裁にはMicrosoftの力を削ぐ効力があるのかどうかについて疑問を投げかけた。

 「この是正措置に実際に効果があるというのは本当なのか。結果が分からないのに制裁を科すというのはやや飛躍的ではないのか」。第一審裁判所のボー・ベステルドルフ長官は同日午後の審問でこう問いかけた。

 WindowsへのWindows Media Player(WMP)バンドルを禁止すれば、メディア再生ソフト市場で競争が回復し、この分野でのMicrosoftの独占拡大が覆る、というのが欧州委員会の見方だ。同委員会は、PCメーカーに選択肢が与えられた場合にWMPなしのWindows出荷を選ぶメーカーが何社あるかは定かでないと認めているが、パー・ヘルストーム弁護士は需要は「ほどほどに」あると強調、この措置は消費者とベンダーが競合する各種製品の利点に基づいてメディア再生ソフトを選ぶ一助になると主張している。

 判事はまた、顧客がこれまで当然搭載されているものと思ってきた機能の多くを組み込まずに製品を販売するようMicrosoftが命じられたことも懸念しているようだった。Microsoftはこの審問で、WMPを組み込まないバージョンのWindowsでは、音楽CDの再生やMP3ファイルの利用、Officeでの一部機能が利用できないことをデモして見せた。同判事は今後2〜4カ月以内に決定を言い渡す予定。

 ベステルドルフ判事は、WindowsからWMPを除去するために削除するよう命じられた186個のファイルについて、一部を残すことを許可する措置を考えているようだった。しかし欧州委員会はこれに強く反対、同委員会の代表者らは、メディア再生ツール市場でMicrosoftが独占に近い状態を作り上げるリスクを緩和させるための是正措置の効力を弱めるものだと警告した。

 Microsoftは前日の審問で、ワークグループサーバソフトに関する互換性情報の一部公開を命じた欧州委員会の命令に従えば大きな損害を受けると主張した。ベステルドルフ判事はこの主張について、同社が「この訴訟を和解に持ち込むために互換性に関する情報をもっと開示する用意がある」と認めたことを踏まえて検討した。Microsoftが和解交渉中に欧州委員会が現在要求している以上の情報公開を提案してきたと同委員会が明らかにすると、Microsoft顧問弁護士のブラッド・スミス氏が立ち上がり、この矛盾について説明しようとした。Microsoftにさらに進んだ開示の措置を取る用意があったのは確かだが、公開されれば回復不可能な損害を被る状況は変わらないと同氏は述べている。

 この日の審問を終えてスミス氏は、Microsoftにとってはうまくいったと感想を語った。「是正措置は欧州の消費者とソフト開発者に何十億ユーロものコストを課す」ものであり、欧州委員会はこれについて「容認できる代償」だと考えているようだとスミス氏はコメントしている。

 この訴訟で欧州委員会側を支持するロビー団体Computer and Communications Industry Associationの最高経営責任者(CEO)エド・ブラック氏は、2日間にわたる審問で良い感触を得たと語った。Microsoftの言い分は内容に欠け、控訴の期間欧州委員会に是正措置の実施を保留させるに足る「回復不可能な損害」の範囲は不十分だったという。さらにブラック氏は、MicrosoftによるWMPのバンドルが禁じられれば、「メディア再生ツールの市場はこれから発展するだろう」と提案された是正措置を支持した。

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