Red Hatの幹部、オープンソースの課題について語る

Red Hatでオープンソース問題を担当するマイケル・ティーマン副社長は、オープンソースコミュニティにとっての最大の問題について、また、ブログ上で繰り広げられたSun Microsystemsのジョナサン・シュワルツ社長との舌戦について語った。

» 2004年10月19日 19時17分 公開
[IDG Japan]
IDG

 「オープンソースコミュニティにとって最大の問題は、オープンソース開発者が極めて不足していることだ」――Red Hatでオープンソース問題を担当するマイケル・ティーマン副社長はそう話す。

 ティーマン氏は先週、インドに滞在していた。ノースカロライナ州ラリーを本拠とするLinuxベンダーのRed Hatの主要幹部はこのところ相次いでインドを訪れている。同氏もその一人だ。インドには巨大なソフトウェア開発者ベースがあり、企業の間では業務のコンピュータ化への投資も盛んだ。

 ティーマン氏はIDG News Serviceの電話インタビューに応じ、オープンソース運動、Red Hatの戦略、そしてSun Microsystemsのジョナサン・シュワルツ氏との最近の論争について語った。ブログ上で繰り広げられたこの論争は、オープンソースに対するSunのコミット姿勢に関するもの。

 以下にインタビューの抄録を掲載する。

―― 全世界的に見て、オープンソースを利用する開発者の数は増えていますか?

ティーマン これまでオープンソース開発者が集中している地域は米国と欧州でした。しかしこの状況は急速に変化すると思います。南アメリカからたくさんのニュースが飛び込んできています。ブラジル、ベネズエラ、ペルーでは、Linuxを政府で本格採用すると発表したか、発表の準備をしています。ブラジルで開発者がオープンソースに移行すれば、オープンソース開発者の数は大幅に増加するでしょう。

―― オープンソース開発に参加しているインドの開発者はたくさんいるのですか?

ティーマン もちろんインドの開発者もオープンソースに参加しており、Red Hatも多数のインド人開発者か抱えています。われわれはFedora(無償のオープンソースOSプロジェクト)をインドの6つの言語にローカライズする作業を進めており、コミュニティからも多くの開発者が参加しています。

 しかしその一方で、インドでは重要なポジションにいる人々は、オープンソース開発者として見られるのを好まないようです。これは10年前の米国の状況とやや似ていると言えるでしょう。彼らは会社で働いており、会社に忠誠心を持っています。会社に忠誠を尽くすのと同時に、オープンソース開発に参加できることを彼らは理解していないのです。

―― オープンソースコミュニティにとって最大の課題は何ですか?

ティーマン 現時点での最大の問題は、オープンソース開発者の数が極めて不足していること、そしていかにしてオープンソース開発に対してわくわくするような気持ちを開発者に抱かせるかということです。オープンソースコミュニティはチャレンジングな環境です。みんな自分の意見をはっきりと主張し、その人がだれであるかではなく、その人に何ができるのかが重視されるのです。オープンソースの能力主義を大いに好む開発者もいれば、拒絶反応を示す人もいます。

―― 管理という面ではどんな課題がありますか? 例えば、全世界でオープンソース開発者が1億人に増えたとしたら……。

ティーマン カーネギー・メロン大学のジェームズ・ハーブスレブ氏は、オープンソースプロジェクトとプロプライエタリプロジェクトについて調査しました。この調査によると、一般に10〜15人の開発者がプロジェクトの80%を担当するということです。この数字が意味するのは、オープンソースをもっと多くのプロジェクトに拡大できるということです。Linuxの1つのライブラリに1億人の開発者が参加することはあり得ないでしょう。オープンソースはモジュラー性が極めて高いため、1億人の開発者がいるとすれば1000万件のプロジェクトに分散するというのが理想的なリソース配分ということになるでしょう。

―― 開発者の数が増えるのに伴い、Linuxが分裂する危険はないでしょうか?

ティーマン そんなことが起きるとは思いません。今までそういったことがなかったからです。Sunでは、分裂を避けるためにJavaをプロプライエタリなものとして維持する必要があると主張しています。しかしプロプライエタリなJavaであっても分裂しました。IBMが出てきてEclipseをリリースし、何百社もの企業が参加しました。それなのにEclipseは分裂していません。

―― 最近、Sun Microsystemsのジョナサン・シュワルツ社長とブログ上で論戦を繰り広げて話題になりましたね。この論争で何か得たもの、あるいは失ったものはありますか?

ティーマン 私のブログには多数の人々からコメントが寄せられたことを考えれば、私の反論は所期の目的を果たしたと思います。つまり、ジョナサン・シュワルツ氏が何カ月にもわたって言い続けてきた数々の主張に対抗しなければならないということです。私が反論の口火を切ることで、同氏の発言に対する不満を述べる機会がオープンソースコミュニティに与えられたのです。

―― Free Standards GroupのLinux Standard Base 2.0(LSB 2.0)は、Linuxの各種ディストリビューションの標準化を進めようという試みですね。Red HatはいつLSB 2.0に準拠した製品を出荷するのですか?

ティーマン われわれは実際のところ、LSB 3.0に期待しています。バージョン2.0は折衷案であり、C++に関するわれわれの従来の決定と相容れないからです。われわれはLSBバージョン1.0に完全に対応しており、今後も引き続きこれに準拠するつもりです。2.0はその狙いに関して行き過ぎの部分があると思います。LSBの策定にかかわっている人から聞いたところによれば、3.0は6カ月以内に登場する予定だということです。このバージョンは、われわれを含むあらゆる人々のニーズを満たすものと確信しています。

―― 中国、マレーシア、タイなどの国々では、政府の積極的な後押しを受け、Linuxのローカライズ版が根を下ろしました。Red Hatはこれにどう対抗するつもりですか?

ティーマン 先日、数社のインド企業の人と話をしたところ、「インドの現地企業との競争にどう対応するつもりなのか」と聞かれました。私はこれに対し、「インドの現地企業がオープンソースの原則に従ってオープンソースソフトウェアを開発するのであれば、当社にとっても利益になる」と答えました。彼らのソフトウェアに必要なライブラリをわれわれは持っているからです。



Copyright(C) IDG Japan, Inc. All Rights Reserved.

注目のテーマ