海賊版WindowsがLinux PCを後押し――Gartnerが報告

Linuxを搭載して出荷されるPCが増えているが、その理由はLinuxへの需要よりもむしろ海賊版Windowsにあり、そうしたPCの約80%に海賊版Windowsが搭載されることになる。Gartnerはこう報告している。(IDG)

» 2004年09月30日 10時30分 公開
[IDG Japan]
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 アジア、ラテンアメリカ、東欧の新興市場でLinuxを搭載して販売されるPCが増えているようだが、今年出荷されるLinux搭載PCの約80%は、最終的には海賊版のWindowsが搭載されることになるだろう。調査会社Gartnerは9月21日に発行した報告書でこのような予測を示している。

 Windowsが高価格なことから、中国やロシアなどのベンダーは40%ものPCにLinuxを搭載して出荷している可能性があるが、そうしたシステムの多くは結局Linuxを走らせることはないだろうとGartnerは述べている。実際、Linux(搭載PC)の割合がこれだけ高いのは、Linuxを使いたいという要望よりもむしろ、安価な海賊版Windowsが出回っていることが後押しとなっている。「海賊版Windowsが、正規版の何分の一もの価格で広く出回っていることが、新興市場でのLinux搭載PCの成長を促進している」とGartnerのアナリスト、アネット・ジャンプ氏は「Linux Has a Fight on Its Hands in Emerging PC Markets」と題された報告書で述べている。

 この10年間PCの部品が値下がりしたにもかかわらず、Windowsのコストは「あまり変わらないまま」であり、新興市場のPCベンダーは利幅を保つため、次第にLinuxに走りつつあるとジャンプ氏は報告している。報告書によると、例えばアジア太平洋地域でのWindowsのコストは、1996年には企業向けデスクトップPCの総価格の6%だったが、2004年には15%に上昇しているという。

 Linuxは今年、1億8500万台のPCのうち5%に搭載されて出荷される見込みだが、特にアジア太平洋地域、東欧、ラテンアメリカで人気を博すだろうとGartnerは予測している。Linuxを搭載した状態で出荷されるPCは、アジア太平洋地域では全PC出荷台数の9.8%、東欧では11.2%、ラテンアメリカでは12.1%を占める見通しだ。

 米国では、今年はこの割合が0.8%になる見込みだという。

 新興市場のデスクトップPCの大多数は、出荷時にはLinuxが載っていても、最終的にはWindowsを走らせることになるだろう。それにもかかわらず、Microsoftが最近「Windows XP Starter Edition」と呼ばれるスリム版のパイロットテストを行うと決定したのは、同社がLinuxの成長を抑えたいと考えていることの表れだとジャンプ氏は指摘する。

 「アジア太平洋地域の数カ国でWindows XP Starter EditionをリリースするというMicrosoftの計画は、同社がこの問題を認識しており、新規PCのOSシェアをめぐって戦うつもりだというしるしだ」(同氏)

 「Microsoftは、たとえ海賊行為が続くとしても、新規PCに最初に載っているOSをLinuxよりもWindowsにしたいと思っている可能性が高い」と同氏は記している。

 Microsoftのパイロットプログラムでは、来月からマレーシア、インドネシア、タイでStarter Editionを出荷する。来年初頭には、ロシアインドでも出荷開始する予定だ。

 Microsoftは初心者PCユーザーに向けて、このOSを安価な選択肢として推進しているが、アナリストは同OSが、ユーザーのほとんどの基本的なニーズを満たしていないと批判している(8月16日の記事参照)。同OSでは、ホームネットワーキング、プリンタ共有、マルチユーザーアカウントがサポートされていない。

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