シンプ氏、Oracleの製品戦略を語るInterview

Oracleの技術マーケティング担当副社長を務めるロバート・シンプ氏がOracle OpenWorld Mumbaiの場でインタビューに答え、Oracleとオープンソースの関係などについて語った。

» 2004年11月04日 21時10分 公開
[IDG Japan]
IDG

 「オープンソースのデータベースはOracleにとってプラスになる。リレーショナルデータベースがどういうものなのかという体験をユーザーに提供するからだ」――カリフォルニア州レッドウッドショアーズに本社を置くOracleの技術マーケティング担当副社長、ロバート・シンプ氏はそう話す。

 シンプ氏は今週、「Oracle OpenWorld Mumbai」カンファレンスのためにインドのムンバイにいた。インドでOracle OpenWorldが開催されたのは今回が初めて。

 IDG News Serviceの取材に応じた同氏は、Computer Associates International(CA)が11月1日にオープンソースライセンスの下で「Ingress r3」データベースのリリースを決めたこと、中堅・中小規模企業に対するOracleの戦略、システム連携のための一元的カスタマーデータハブの構想、同社の「Collaboration Suite」の次期バージョンなどについて話してくれた。以下にインタビューの抄録を掲載する。

―― CAはオープンソースライセンスの下でIngresデータベースをリリースしました。SybaseもLinuxユーザー向けにデータベースを無償で提供しています。Oracleもオープンソースユーザーに同じようなことをする必要があるのでは?

シンプ 当社の製品をオープンソース化したり無償で提供したりする予定はありません。

―― Oracleは「オープンソースユーザーは当社の製品を買う余裕がないのではなく、価格に敏感なのだ」と言っていますね。

シンプ 当社はエントリーレベルの製品では非常に競争力のある価格設定をしています。例えば、Standard Edition One製品の定価は1ユーザーに付き149ドルです。これは、オープンソースデータベースも含め、業界のどんな製品と比べても非常に競争力のある価格だと言えます。オープンソース製品の場合、サポートサービスに高い費用がかかります。

―― しかしローエンド分野では、MySQLなどの企業がOracleの市場を浸食しています。

シンプ MySQLはOracleと同じデータベース市場に進出しているのではありません。彼らの製品は全く違った目的で利用されています。主として、中堅企業がカタログやWebサイトなどのデータを保存するのに利用しているのです。

 実際、オープンソースデータベース製品はOracleにとってプラスになっています。リレーショナルデータベースがどういうものなのかという体験をユーザーに提供し、その技術について学ぶ機会を彼らに与えるからです。いずれユーザーが重要な業務アプリケーションを構築し、リレーショナルデータベース上で業務を運用しようとする場合、必然的にOracleをはじめとする商用製品を選ぶことになります。MySQLやPostgreSQLのユーザーがやがてOracleに鞍替えするというケースは多々見られます。

―― CAなどの企業がデータベースをオープンソース化するのはなぜだと思いますか?

シンプ 現在、データベース企業は2ダース以上存在します。中には、経営の立て直し、あるいは低下する市場シェアの回復を狙って、非常に古い技術をオープンソース化する企業もあります。これはあまり効果的なビジネスプランではないと思います。

―― Red HatがGPL(GNU General Public License)の下でSistina Global File System(GFS)をリリースしました(関連記事)。今後もOracle独自のクラスタファイルシステムをベースとして開発を続ける必要があるのですか?

シンプ クラスタファイルシステムを含む包括的な技術インフラを提供することによって、当社の製品の導入/運用を容易にできると考えています。クラスタファイルシステムは当社の総合的なクラスタリング技術の重要なコンポーネントであり、顧客が製品の導入と運用を簡単に行えるようにするために、われわれは包括的な技術スタックを提供したいのです。

―― 顧客が求めればSistina GFSを提供するつもりですか?

シンプ Sistinaのようなたぐいの製品のOEM供給やライセンスを受けるつもりはありません。われわれは独自のクラスタファイルシステム技術を開発し、当社のReal Application Clusters製品の一部としてバンドルしたのです。われわれは今後も、この包括的技術スタックを提供するつもりです。

―― Collaboration Suiteの市場におけるチャレンジは何ですか、またそれにどう対処するつもりですか?

シンプ 大多数の顧客にとっての大きなチャレンジは、ファイル、表計算ドキュメント、(Microsoft)Wordドキュメントなどの非構造型データが大量に存在し、これらのデータをすべて、従来のトランザクション処理アプリケーションや意思決定支援アプリケーションと同じくらい効率的に管理する必要があることです。特に最近では法規制が非常に厳しくなっているため、情報がどこにあり、どのように利用されているのか把握することが重要になっています。

 Oracleでは、非構造型データを単一のリポジトリで一元的に管理する必要があると考えています。そうすれば、リポジトリ内でこれらのデータをトランザクションデータや意思決定支援データと効率的に相互参照することが可能になります。

 われわれは、コンテンツ管理機能やリアルタイムコラボレーション機能をデータベースに直接組み込むことに注力しており、これによりユーザーの間でデータを共有し、データをきちんと把握・管理できるようになります。Collaboration Suiteの将来リリースでは、このビジョンに沿って絶えず改良と洗練が加えられます。

―― 中堅・中小規模企業に対するOracleの戦略について言えば、従来は主として既存製品をこの市場向けに仕立て直して、低いライセンス価格で提供し、構成と導入を容易にするというアプローチで臨んできました。この市場では、よりニーズに特化した製品が求められるようになると思いますか?

シンプ この市場は、ユーザーが直面しているビジネス上のチャレンジという点では大企業と何ら変わりません。彼らも大企業と同じような情報、同じような解析ツール、同じような管理機能を利用できることを望んでいるのです。

 彼らにとってのチャレンジとは、優れた費用効果と低いTCO(総保有コスト)でそれを実現しなければならないということです。これは大企業にとってのチャレンジと同じだとOracleは考えており、そのために導入と運用が容易になるように製品を改良することに注力しているのです。

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