買収の噂でささやかれるVeritasの立場

SymantecがVeritas Softwareを飲み込もうとしている。業界には、Veritasが単独で生き残ることは難しいという見方も聞こえてくる。

» 2004年12月16日 11時00分 公開
[堀哲也,ITmedia]

 セキュリティベンダー大手の米Symantecがストレージ関連ソフトのVeritas Softwareを飲み込もうとしている。米New York Timesが米国時間12月14日に報道した。それによると、130億ドルを超える規模となるといい、大規模なソフトウェア企業買収となりそうだ。

 Symantecが買収するかどうかは別として、Veritasが単独で生き残るのは難しいという話が業界では聞かれる。Veritasの展開する事業を見ると、その理由がおぼろげに見えてくる。

 今でこそ「ユーティリティコンピューティング」を旗印に掲げているVeritasだが、その実態はまだバックアップソフトウェアベンダーといえる。最近IDCが発表した最新の調査では、バックアップ/アーカイビングストレージソフトウェア市場で40.4%という売上シェアを誇っており、足元は磐石かに見える。

 しかし、主力のバックアップソフト事業は、ストレージの巨人EMCの足音が大きくなってきている領域でもある。EMCはストレージのハードウェアをイメージが強いものの、ソフトウェア事業を大きく成長させることに成功している。現にEMCの2年前に売り上げはハードウェアが90%近くを占めていたが、現在では50%近くに落ち着かせており、今後、ソフトウェア・サービス事業で80〜90%を占めるまでにしたいという。Veritasにとっては大きな脅威となって迫ってきている。

 Veritasの主戦場バックアップソフトでは、EMCはLEGATOを手にしており、今後も激しい攻勢をしかけてくることが予想される。Veritasとしても黙ってはいないだろうが、EMCに寄り切られてしまえば、今後リーダーシップを取れる領域がなくなってしまう可能性は高い。

 またOracleなどのアプリケーションベンダーも、自前でバックアップ機能などを提供している。「VERITAS NetBackup」「VERITASCluster Server」に頼ることで、高まってしまう導入コストをできれば抑えたいと考えるのが当然の成り行きだ。ラリー・エリソンCEOは、Veritasいじめではないとしながらも、Oracleデータベースに統合したいコンポーネントの筆頭としてVeritasを挙げている

 また、元来UNIX向けにOEMしてきたファイルシステムやボリューム管理製品も、これだけでVeritasほどの企業が生き残れるほど、大きな市場が存在しているとはいいにくい。

 Veritasとしては次の一手を考え出さなければならない。そこで選択したのが、「ユーティリティコンピューティング」という新天地だったと見ることができる。ハードウェアおよびプラットフォームに対して永世中立を保つことで、優位に立ってきたストレージソフトを足場に、企業内のプラットフォーム混在環境を統合する「要」の役割を果たそうというわけだ。

 同社は現在、買収したアプリケーションパフォーマンス管理やサーバの自動プロビジョニングといった技術をVeritas製品として統合を急いでいる。

 しかし、ユーティリティコンピューティングの世界でもIBMやHP、そしてここでもVMwareを手にしたEMCなどのシステムベンダーとの戦いが待ち受けている。ソフトウェアだけのVeritasがこれらに立ち向かうのは困難と判断しているかは分からないが、単独で生き残るためには、いち早い転換が必要とされているときなのかもしれない。

 12月15日時点で、買収のうわさに対してSymantec、Veritasの両社はともに正式なコメントを出していない。

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