IBM幹部、垂直市場向けの取り組みを明らかにInterview

IBMは2004年より、金融や小売り、医療など、いくつかの垂直市場に特化したミドルウェアパッケージを投入してきた。その背後にある戦略を、グループ業界ソリューション担当副社長のマーティン・ワイルドバーガー氏が語る。

» 2005年01月11日 19時49分 公開
[IDG Japan]
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 IBMが昨年、垂直市場向けのミドルウェアバンドル(「WebSphere」「Rational」「Tivoli」「Lotus」「DB2」および各種サードパーティー製品が含まれる)をリリースして以来、同製品を導入した企業は200社を超える。これらのツールは、小売り、製造、金融、医療などの業界のユーザーが、HIPAA(医療保険の相互運用性と説明責任に関する法律)やBasel II(新BIS規制)など40を超える法令を順守するのを支援するのが目的だ。

 IBMのグループ業界ソリューション担当副社長兼IBM Toronto Software Labのディレクターを務めるマーティン・ワイルドバーガー氏は先ごろ、Computerworldの取材に応じ、垂直市場に対するIBMの取り組みの現状について語った。

―― 垂直市場向けのミドルウェアを提供するというIBMの決定を促した要因は何ですか?

ワイルドバーガー ユーザーにとっては、単に技術を購入するだけでもますます困難になっています。ユーザーは自分たちが抱えている問題のソリューションを求めているのです。

 現在、あらゆる業界においてビジネスプロセスリエンジニアリングの必要性が叫ばれています。WebSphereのビジネスプロセスモデリング技術は、ユーザーがビジネスプロセスをモデリングするのを支援するものであり、自社にとってのコアコンピタンスはどれで、アウトソースに適しているビジネスプロセスはどれかを把握するのに役立ちます。

―― 垂直市場向けミドルウェアの例としてはどんなものがありますか?

ワイルドバーガー 自動車業界では、保証管理やアフターサービスが重視されます。保証管理はいちばん最初の設計段階から始まります。インテグレーションとビジネスプロセス管理を行うことにより、ライフサイクルを通じて保証請求を追跡し、基本的な設計上の欠陥があったのかどうか把握することができます。

―― IBMが垂直市場分野にフォーカスすることで、開発者にとってはどんなメリットがあるのですか?

ワイルドバーガー 共通のコンポーネントを再利用するための開発理念と開発手法を確立するのは容易ではありません。当社のRationalポートフォリオは共通の開発ツールを提供します。共通のコンポーネントを共有するのも簡単です。このコラボレーションソフトウェアは、離れた場所に分散した開発者による共同作業を可能にします。コンポーネントの再利用が進まない理由の1つに認識の欠如が挙げられます。つまり、ほかの開発者と同じ作業を行っている場合でも、その事実を認識できないのです。

―― これらのソリューションの中心にWebSphereが位置するわけですね。WebSphereのコモディティ化を促してアプリケーションサーバの市場を拡大するのが狙いですか?

ワイルドバーガー WebSphereは単なるアプリケーションサーバではありません。私はWebSphereをアプリケーション開発プラットフォームとして見ています。

 メーカー側としては、パフォーマンスおよびTCO(総合保有コスト)の面でアプリケーションサーバの差別化を絶えず追求する必要があります。5年前の独立ソフトウェアベンダー(ISV)パートナーは、フロントエンドとなるアプリケーションユーザーインタフェース、中間層のビジネスプロセス機能、そしてアプリケーション基盤の開発をすべて手がけていました。しかし彼らは、アプリケーション基盤の技術が複雑化しつつあるという現状を認識するようになりました。われわれのパートナーは現在、彼らが提供できる主要な付加価値であるビジネスプロセスの開発に専念することができます。

―― 垂直市場向けバンドルに関するIBMの今後の計画を聞かせてください。

ワイルドバーガー 銀行および通信業界向けのソリューションを発表する予定です。これは、当社のアウトソーシング技術、ビジネスプロセスリエンジニアリング技術、およびソフトウェア技術を統合したソリューションです。

 また医療分野向けのコラボレーティブネットワークは、さまざまなヘルスケアプロバイダーがコミュニケーションを行うためのプライベートでセキュアな相互運用型ネットワークをサポートします。また、WebSphereのビジネスインテグレーション技術を拡張してHL7(Health Level 7メッセージング標準)をサポートし、メッセージをよりシームレスにやり取りできるようにします。

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