類を見ないほど戦略的な合併――VeritasのCEO語るInterview

SymantecによるVeritas買収について、Veritasのゲーリー・ブルームCEOに話を聞いた。

» 2005年01月19日 17時54分 公開
[聞き手:怒賀新也,ITmedia]

 米Veritas Softwareは1月19日、ニューヨークでプレス向けのイベントを行った。バックアップソフトウェアの新製品の発表が中心となる一方、記者からはSymantecとの統合に関する質問が相次いだ。今回の統合について、ゲーリー・ブルームCEOに話を聞いた。

ブルームCEO

―― Symantecとの統合が決まりましたが、いつごろから話が進んだのでしょうか。

ブルーム 統合のディスカッションが始まったのは2004年の9月です。Symantecのジョン・トンプソンCEOを何年も前からお互いに知っていたこともきっかけになりました。Veritasのユーザーがセキュリティに関して懸念を抱いている一方、Symantecのユーザーはストレージに興味を持っていることが分かっていました。そこで、ジョン・トンプソンと話をしているうちに、もし2社が一緒になり、セキュリティとストレージ分野の統合的な製品やサービスを提供できれば、それがベストソリューションになるという結論に達したのです。

 現在、CIO(最高情報責任者)が気にかけていることには、コストコントロールやコンプライアンスへの対応、IT環境の整備などがありますが、同様に、1、2を争う事柄がセキュリティ対応および、ストレージの効率的な活用です。われわれは、企業はそれらの分野には今後も投資をしていくと判断しました。

―― アプリケーション業界全体に再編の波が訪れていますが、今回の買収をどのように位置づけますか?

ブルーム 業界における買収の動きはこれまでもあったものです。実際に、VeritasとSymantecは、両社合わせて29社を買収して現在に至っています。ただし、今回のわれわれほど、戦略的なものはあまり例がありません。通常は、大きな企業が小さな企業を買ったり、ボロボロになった企業を買い叩いたり、市場シェア獲得が目的であることが多いのです。

―― 日本では、現在は両社とも別々に活動していますが、今後はどうなるでしょうか?

ブルーム この合併は組織を統一して、顧客満足を追求することが狙いです。OracleによるPeopleSoft買収では、PeopleSoft社員の5000人を削減すると伝えられましたが、われわれはほとんど人員削減をしません。VeritasとSymantecは、異なる分野でのナンバーワン同士であり、あくまでも相互補完をベースにした戦略的な合併だからです。

―― Symantecはコンシューマー、Veritasは企業向けという印象があります。今後、新しいSymantecとしてはどちらへ向かうでしょうか。

ブルーム Veritasはコンシューマー向けの製品を持っておらず、Symantecは50%対50%です。統合後のビジネス向けとコンシューマー向けのビジネスの比率は75%対25%になる予定です。Symantecは企業向けビジネスを拡大してきており、昨年度は24%増を達成しています。今後も、エンタープライズ、中堅企業、コンシューマーという3つの分野がターゲットです。

―― OracleはPeopleSoftを103億ドルで買収した一方で、SymantecはVeritas買収に130億ドルを費やしました。この金額には満足しているでしょうか? 高額という印象もあります。

ブルーム もし株式につけられたプレミアムを考慮して高いという印象を持っているなら、少し読み違えているかもしれません。2社が統合することによる売り上げや、成長力の見通しなどを分析して価格が決まっており、それを理解すれば、適正な価格であることが分かります。

―― Veritasの戦略の方向性として、ややWindowsに偏っている印象もありますが、今後Linuxへの取り組みについてどのように考えているでしょうか?

:ブルーム 発表になったBackup Exec 10 for Windows Serversは、Windowsを活用する中堅企業をターゲットにした製品です。しかし、われわれは、UNIXやLinuxに対応したハイエンド向けのバックアップソフトウェアであるNetBackup Enterprise Serverも提供しています。今後も、Windowsだけでなく、UNIX、Linuxという3つのプラットフォームを重視する戦略に変わりはありません。

―― 両社が合併することによるシナジー効果は製品にどのように反映されると考えますか?

ブルーム たとえば、データ保護やバックアップ、ストレージ管理などに加えて、セキュリティ対策製品なども保有することになります。こうした製品群同士をバンドルし、パッケージ化させることを考えてみてください。企業のインフラ管理業務が容易になるだけでなく、コンプライアンスやセキュリティに関連するリスクを低減することができます。それが1つの考え方と言えます。



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