VerizonとMCIの合併で到来するメガキャリアの新時代(1/2 ページ)

SBC CommunicationsによるAT&Tの買収に続き、今度はVerizonがMCIを67億で買収することを発表。AT&Tの分割で生まれた勢力地図は瓦解に向かう。

» 2005年02月15日 23時54分 公開
[IDG Japan]
IDG

 Verizon Communicationsは2月14日、MCIを67億ドルで買収すると発表した。昨年12月中旬以来、通信業界において数十億ドル規模の合併が発表されたのはこれが3回目であり、米政府が巨大通信企業の独占を切り崩すことを狙った20年間にわたる実験に、実質的に終止符が打たれることになった。

 今回のVerizonとMCIの合併発表、ならびにSBC CommunicationsがAT&Tを160億ドルで買収するという1月31日の発表は、3社の最大手長距離通信事業者のうち2社がSBCとVerizonにのみ込まれることを意味する。SBCとVerizonは、1984年に旧AT&Tが裁判所の命令によって分割された後、地域電話サービスにフォーカスしてきたベル系地域電話会社として生き残った4社の企業のうちの2社である。

 地域サービスを伝統的に提供してきた電話会社と、長距離電話サービスを伝統的に提供してきたキャリアは以前から、互いに似通ったものになり始めていたが、今回の一連の合併が州政府および連邦政府当局に承認されれば、いろいろな意味でこの進化が終焉することになりそうだ。

 VerizonとSBCはこの5年間、長距離通信サービスを提供し始めるようになり、AT&TとMCIは地域電話会社との競争を目指してきた。これらの企業の合併は、巨大通信事業者が広範な顧客に広範なサービスを提供するという将来の構図を指し示している。個人ユーザーを対象とした電話やテレビ、インターネットサービスから、グローバル規模の大企業向けの長距離電話/データネットワークを構築まで手がける巨大キャリアの時代が到来しようとしているのだ。

再編はまだ終わらない

 通信分野を専門とするフリーのアナリスト、ジェフ・カーガン氏は、「競合企業各社は巨大化しつつあり、電話、CATV、ワイヤレス通信、インターネットなどあらゆるサービスを提供している」と電子メールで取材に答えている。

 「これからもっと多くの動きが出てくる。CATV各社およびベビーベル(地域電話会社)は同じサービスパッケージで競争するようになるだろう。電話会社やCATV会社という呼び方はなくなり、すべて通信会社と呼ばれるようになりそうだ」とカーガン氏は指摘する。

 SBCおよびVerizonの発表に加え、昨年12月には長距離キャリアの老舗Sprintが、ワイヤレス部門をNextel Communicationsと合併させ、地域電話事業を切り離すという計画を発表した(関連記事)。こういった動きの結果、大企業にとって通信事業者の選択肢が少なくなると予想される。

 カーガン氏は、少数の巨大通信企業が広範なサービスを提供するという方向への動きを歓迎しており、「これは通信業界の長期的健全性にとって好ましい傾向であり、2社ないし3社の巨大企業が存在すれば、適正な価格を保つのに十分な競争が生まれるはずだ」と語る。

 「AT&Tが分割されて20年たった今、各電話会社は再びまとまろうとしている。ただ昔と違うのは、複数のプロバイダーが存在し、業界の規模も遥かに大きいということだ。通信業界はこの20年間で驚くべき変化を遂げ、今後数年にわたる合従連衡の時代を経て、以前よりもずっと健全な業界に生まれ変わろうとしている。通信業界に歴史的な転換が起きているのだ。既にこの動きが始まり、急速に進んでいる」(同氏)

 こういった見方に異論を唱えるアナリストもいる。Gartnerのグループ副社長を務めるリサーチフェロー、ケン・マギー氏によると、大企業向けの通信製品/サービスの価格上昇が予想されるという。

 「SBCとVerizonは数千人の従業員のレイオフを実施するなどして、それぞれの合併で何十億ドルという経費削減を期待できるが、大企業ユーザーにとっては価格で比較しようにも選択肢が少なくなる」とマギー氏は話す。

 「5年前と違い、通信サービスを一手に引き受けるプロバイダーが数社あるという時代ではなくなった。5年前には、どのベンダーに対しても有力な代替選択肢が存在した」(同氏)

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