VerizonとMCIの合併で到来するメガキャリアの新時代(2/2 ページ)

» 2005年02月15日 23時54分 公開
[IDG Japan]
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 通信契約に関するコンサルティングサービスを手がけるTelwares Communicationsのピート・ウィルソン執行副社長によると、あと1年で通信サービス契約の期間が切れる企業にとっては、SBCおよびVerizonによる買収が政府に認可される前に値引き交渉をするチャンスがあるという。

 「長期的な業界再編が終息すれば、価格戦争が終わりを告げ、企業にとって年々通信費が下がるという状況は消滅するだろう」とウィルソンは電子メールで述べている。

 「この動きは、アプリケーション/IP指向の高い環境の出現を促す。そこでは、値引き交渉よりも、ますます付加価値が高まる通信市場におけるベンダーの能力を正しく評価・判断することが重要な課題になってくる」(同氏)

 中小企業向けの通信費管理サービスを提供しているTBRC Cost Recoveryの業務執行ディレクター、ヨセフ・ラビノビッツ氏によると、小規模企業にとっては、この間の2件の巨大合併による影響は少ないという。同氏は、地域の長距離通信事業者に乗り換えるよう顧客に勧めてきた。AT&TとMCIが小規模企業に魅力的なパッケージを提供していないからだという。

 「MCIが本気で顧客維持のための努力をしなかったので、一部の顧客をほかのキャリアに乗り換えさせた。この2年間のレイオフを見れば、MCIがあんなふうになるのは当然だ」とラビノビッツ氏は話す。

米国の通信政策が破綻?

 1982年に独禁法問題をめぐり米司法省と旧AT&Tの間で和解が成立したのを受け、1984年に裁判所の命令によるAT&Tの分割で生まれた勢力地図は、その後次第に崩壊していった。

 SBCやVerizonなどの地域電話会社が長距離通信市場に進出する中、連邦通信委員会(FCC)はこの2年間、米国電気通信法(Telecommunications Act of 1996)の要件を限定する動きを見せた。この法律では、4社の地域電話会社が自社のネットワークの一部を割引価格で競合企業と共有することが義務付けられた。

 電気通信法は、主として旧AT&Tの分割後に引き継いだネットワーク設備を共有することを地域電話会社に義務付けることにより、通信事業者間で広範な競争を促すことを狙った。

 近く辞任するマイケル・パウエル委員長が率いてきたFCCはこの2年間、「設備ベースの競争」を促進するという形で地域電話会社を優遇する方針を打ち出してきた。「従来のネットワーク共有規定は、既存の地域電話会社に対しては新技術に投資する意欲を失わせ、競合企業には自前の設備に投資する意欲を失わせた」とパウエル氏は主張してきた。

 アナリストの間には、一連の合併が成立すれば、政府主導による競争政策が破綻したも同然だと指摘する声もある。

 「SBCによるAT&Tの買収も併せて考えれば、米国の固定通信市場の勢力地図は完全に塗り替えられたと言える」とOvumのチーフアナリスト、ジュリアン・ヒューイット氏は話す。

 「今にして言えることだが、1984年のAT&Tの分割命令によって作り出された業界の競争構造は失敗だった。すべて変化したのだ。当時は、利益を上げられるのは長距離通信だけだった。しかし今日では、利益を生み出すのはローカルアクセスだ。再びベビーベルの方に力関係がシフトし、ローカルアクセスと長距離通信との区別が消滅した」(ヒューイット氏)

 VerizonおよびMCIによる買収の結果、残る2社の地域電話会社(Qwest Communications InternationalとBellSouth)には合併のパートナーがなくなる可能性もあるが、Sprintの固定通信資産がまだ残っている。カーガン氏によると、SBCとVerizonは今回の買収で国際的な通信企業になるが、QwestとBellSouthの場合は合併の必要はないという。

 Qwestは数週間前、MCIの買収を試みた。「BellSouthとQwestは全米に事業展開しなくても、それぞれの地域で競争を続けることができ、それで問題はない」とカーガン氏は話す。

 「しかし合併の波が去ったわけではない。今後2〜3年の間にさらに多くの合併があるだろう」(同氏)

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