技術動向――ハードウェア/ソフトウェアの両面で成熟が進む無線ICタグの可能性 第2部

RFIDを実現する上で課題の1つとなる技術仕様。オープンエンタープライズチャンネル、Open Enterprise Magazine特集第2部では、技術動向について最新動向を交えて紹介していく。

» 2005年02月25日 13時40分 公開
[Open Enterprise Magazine]
OPEN Enterprise magazine

 RFID(Radio Frequency Identification:無線ICタグ)の実用化に向けた取り組みは、技術的な観点からはハードウェアとソフトウェアの2つの分野に大別される。ハードウェア面は、無線IDタグの実体となるチップやリーダの開発である。一方、ソフトウェア面は、無線IDタグに記録する識別コードの体系の工夫から、そのコードを利用するためのサーバ・サイドの各種支援ソフトウェアや、膨大な情報のやりとりが予想されることからネットワークの改善まで視野に入ってくる。

RFIDのハードウェア

 無線ICタグは、ハードウェアの観点からは、ICチップとアンテナから構成される。ICチップには、無線通信機能や送出されるID情報が記憶されている。

 ICチップの機能面に関しては、現状はほぼ実用段階に達していると見てよい。現状での開発努力は、主に製造コストを低下させることや、チップサイズをより縮小するという方向に向かっている。特に重要なのは価格で、目標としては1個数円のレベルを目指して開発が進められている。現状のコストはタグ1個あたり数十円というレベルであり、この価格では数百円程度の価格で販売される安価な商品の個別管理には使えないため、利用範囲が限定されてしまう。価格が下がれば下がるほど、利用範囲が拡大すると期待されるため、低価格化への取り組みは、地味ではあるが重要な要素である。

 細かく見ると、ICチップにはどの程度の情報を記録できるのか、製造後に記録されたID情報を書き換えることができるのか、といった要素があるが、いずれも技術面では大きな問題とはなっていない。現時点でも必要に応じてさまざまな機能を持つチップを製造可能な状況にある。

図1■RFIDシステムの基本的な構成

アンテナとパッケージング

 アンテナは、通信のために使われるのに加え、ICチップに電源供給を行なう役割も担う。無線ICタグには、電源を内蔵するものとしないものの2種類が考えられるが、現在注目されているのは電源を内蔵しないタイプのタグである。ICチップを動作させるために必要な電源は、アンテナを介してリーダなどの読み取り側機器から供給される。リーダが作る電磁場内にアンテナが入ることで起電力が生じ、ICチップに電圧がかかる、というイメージである。アンテナはICチップを動作させるために不可欠の要素であり、実のところアンテナの存在が無線ICタグの実用上のサイズを制約しているともいえる。ICチップは縦横それぞれ1mm以下という極小サイズのものが実用化されているが、アンテナと合わせた“インレット”のサイズは数cm角という大きさになるのが一般的である。

 アンテナに関する問題点は、金属部材に対する対応である。現状では、アンテナ部分が金属に接触してしまうと通信不能になるし、リーダと無線ICタグの間が金属で遮蔽されても読み取り不能になる。日用品の個別管理という局面で考えると、缶詰や缶飲料への対応が困難になるわけだ。

 この問題に対しては、インレットの工夫によってアンテナをあらかじめ絶縁しておく方法などが考えられている。たとえば、日立製作所は今年9月にミューチップのインレットをラミネーション技術を応用して製造することで、金属への貼付にも対応できるタグを開発している。日立が発表したのは、耐水性を実現した「薄型ラミネートタグ」、さらに強度を高めた「高強度ラミネートタグ」、金属部分への貼付に対応した「金属専用薄型タグ」、手軽に貼付できるように片面に粘着テープを貼り付けた「シールタグ」の4種類である。

 金属専用薄型タグでは、アンテナを2層構造とし、金属に直接貼り付けた場合でも25cmの通信距離を確保することに成功している。

無線周波数の問題

 現在、日本国内で無線ICタグに利用可能な周波数には、13.56MHz帯と2.45GHz帯がある。13.56MHz帯は、ワイヤレスカード・システムに割り当てられた周波数帯で、2.45GHz帯は無線LAN等にも使われているISMバンドである。無線ICタグでは、アンテナで受信する電波から給電を行なう都合上、使用する周波数によって通信可能距離が変わる。給電方法の違いもあり、13.56Mhz帯を使用した場合は最大約80cm、2.45GHzを使用する場合は最大約1.5mという到達距離になると言われている。

 バーコードでは光学的に読み取るため、リーダとコードを正対させて1つずつ読み取ることになる。しかし、無線ICタグでは電波到達範囲内にあれば、複数のタグからの信号をまとめて読み取ることができる点がバーコードに対する大きなアドバンテージだと考えられている。しかし、電波の到達範囲が短いとこのメリットも半減してしまう。逆に、むやみに長くても、今度は読み取る必要のない情報まで飛び込んできてしまう可能性もあるが、実用上は数m程度の到達距離が欲しいという声が多い。これを受ける形で、新たにUHF帯ICタグが利用可能となる見通しである。具体的には、950〜956MHzにできる空き領域を新たに無線ICタグ用に割り当てる計画であり、これが実現すれば最大通信距離が最大10m程度と現状に比べて大幅に長くなると見込まれている。

ソフトウェア面での動向

以降、記事の続きはPDFで読むことができます。


本特集は、ソキウス・ジャパン発刊の月刊誌「Open Enterprise Magazine」の掲載特集を一部抜粋で掲載したものです。次の画像リンク先のPDFで記事の続きを読むことができます。同特集は、2004年11月号に掲載されたものです。

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