脱通信バブル、富士通のネットワーク事業が黒字化へ

「薄日が差してきた」といわれるネットワーク市場の追い風を受け、富士通のネットワーク事業は4期ぶりに黒字化する見込みだという。

» 2005年03月03日 22時18分 公開
[高橋睦美,ITmedia]

 富士通は3月3日、同社ネットワーク事業の今後の見通しについて明らかにした。2004年度のネットワークプロダクトの売上高は3950億円の見込み。「薄日が差してきた」といわれるネットワーク市場だが、富士通もその追い風を受け、2000年度以来4期ぶりに黒字化する見込みだという。

 「(北米の)ネットワークバブル崩壊後の苦しい3年間を経て、ようやく回復の見通しが立った。2007年度に向けてさらなる成長の見込みが出てきている」(同社取締役専務の伊東千秋氏)。2007年度には売上高4600億円、営業利益率5%を目標にするという。

 富士通は通信バブルの崩壊以降、業績回復に向けて、国内開発/製造部門の合理化をはじめとするスリム化と事業の選択/集中を図ってきた。2007年度に向けた取り組みにおいても、得意分野に注力する姿勢を継続する方針だ。

伊東氏 付加価値を生み出す「キーとなるテクノロジはインハウスで提供し、足りないところは世界の一流のパートナーと組んでいきたい」と述べた伊東氏

 というのも、「ボリュームビジネスではHuawei(華為)などの中国勢には勝てない」(伊東氏)。コモディティ化が進み、単なる価格競争に陥る分野からは撤退する方向だ。代わりに「富士通としてはリーディングエッジを追求していく。人より先に先端技術を提供していかなければ、ネットワークビジネスの存続はあり得ない」(同氏)。

 ただ、特定の領域に特化した専門店化は考えていない。「専門店モデルは限界に来ていると思う。富士通は(百貨店的に)サービスとプロダクト、ITとネットワークにまたがるワンストップのソリューションを提供していく」(伊東氏)。今後いろいろな領域で発生してくるであろう「コンバージェンス」を、付加価値の高いコアテクノロジを通じて支援していく考えを示した。

コンバージェンスを視野に

 今後の成長に向け、キャリア向けでは「光」「IPバックボーン」および「アクセス」それぞれに取り組みを強めていく。

 富士通は北米の光システム市場では、SBC CommunicationsやVerizonといったキャリアに加え、ComcastのようなCATV事業者と緊密な関係を築いている。しかも「電話、インターネット、映像というトリプルプレイへの対応に向け、光システムへの需要は高い」(伊東氏)。ここにきて再編が始まった北米通信業界だが、光システムへのニーズが揺らぐことはないとし、2007年にはこの分野で30%超のシェア獲得を目指すという。

 キャリア向けIPバックボーンの分野では、Cisco Systemsとの提携という大きな動きがあった。これは、両社の技術を組み合わせることで「海外からはときに『クレイジー』とまでいわれるほどの、日本のキャリアが求める高い品質を満たしたハイエンドルータを実現する」(伊東氏)ことを目的としたもの。

 アクセス市場では、特に国内では、NTTグループのフル光/IP化計画などを踏まえて光アクセスの分野に集中投資していく方針だ。一例を挙げれば、NTTのアクセス系機器への投資のうち30%程度を狙っていくという。

 同時に「新たなアクセス技術にも取り組んでいく。その一例がWiMAXで、これは携帯電話のインフラにもなり得る、非常に大きな可能性を持った技術」(伊東氏)という。

 将来的には、携帯電話/モバイルのインフラとIPネットワークインフラの統合も視野に入れている。既にモバイルキャリア向けに、仏Alcatelとのジョイントベンチャーを通じて、GSM(2G)からW-CDMA(3G)へのスムーズな移行をサポートする基地局インフラを開発、提供しており、中国市場をにらんでの協力も進めていく方針だ。そして2006年以降には「モバイル/移動体網と固定網のコンバージェンスという非常に大きな変革が起こると思っている」と伊東氏は予測している。

 なお企業/エンタープライズ向け事業では、「プロダクトだけでなく『FENICS』をはじめとするネットワークサービスを組み合わせ、そこにノウハウも含めてトータルに提供していく」(同氏)方針。複雑化するシステム、TCO削減の圧力、その中で求められる高い品質……という状況の中で困っている顧客に対し、新たに創設した600人規模の部隊を通じて、ワンストップでユーザーの求める「結果」を提供していくという。

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