Zeta 1.0のリリースが間近に――改めて新鮮なBeOS由来の機能(2/2 ページ)

» 2005年03月26日 03時12分 公開
[西尾泰三,ITmedia]
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「徹底した」マルチスレッド化がもたらす快適さ

 Zetaでは、一定時間ごとに強制的に実行タスクを切り替えるプリエンプティブ・マルチタスク方式(非協調的マルチタスク)を採用し、かつ、「徹底した」マルチスレッド化により、処理の内容に応じてスレッド単位で任意のCPUに処理を自動的に分配できる。このことは複数のCPU(Zeta 1.0では最大8個のCPUをサポート)を利用する場合に効率よくそのリソースを利用できることを意味する。800Mバイトほどの映像ファイルを同時に複数再生して、コマ落ちもなく非常にスムーズな再生を行うなどのデモが披露された。

図1 再生している動画ファイルは1つのファイルだが、非常にスムーズに再生された

 驚いたのは、64ビットCPUへの対応だ。同氏は「64ビットCPUは、32ビットのデュアルCPUとして認識する」という。実際にどのような挙動なのかは後日詳細なレポートをお届けするが、もしこの言葉が事実であれば、非常に興味深い。

 ZetaのファイルシステムはBeOSで使われていたBFS(BeOS File System)。その特徴の1つであるクエリと同様の仕組みは今でこそMac OS Xなどでも実装されているが(スマートフォルダ)、インデックスをあらかじめ作成しておくことで高速なライブ・クエリ検索を可能にするだけがBFSの売りではない。BFSの最大の特徴は、ファイルに対してさまざまな拡張属性、いわゆるメタデータを付与でき、さまざまなアプリケーションからそのデータを利用できるほか、その拡張属性での検索も可能なことだろう。

 メールを例に取ってみよう。Zetaでは1メール1ファイルの形式で存在するが、未読、既読、返信済みなどの拡張属性が付与されることで、より直感的なクエリが可能となる。しかも、クエリに該当するファイルが増えればクエリの返すファイル一覧もリアルタイムに反映される。

 ただし、拡張属性を活用するアプリケーションが少ないように感じた。便利な使い方を提案しなければ、この良さはなかなか伝わらないのかもしれない。

 そのほかの特徴としては、多言語化の仕組み(Locale Kit)がネイティブで用意されており、アプリケーションのローカライズが容易に行えることだろう。アプリケーションをLocale Kitに対応させておけば、言語ファイルを作成するだけで簡単に多言語化できる。また、システム全体のロケール設定も、GUIから国名を指定すればダイナミックに切り替えることができる。

図3 GUIからダイナミックにロケールの切り替え

 前述のとおり、Zeta 1.0はOpen Source Conference 2005(OSC2005)にて目にすることができる。リリースまで待てないという方は足を運んでみるとよいだろう。

Bernd Korz氏一問一答

ITmedia ドイツでは、国内企業の雄であったSUSE LINUXが米企業であるノベルに買収されたことで、独政府はSUSE一押しの状態からDebianなどほかのディストリビューションに目を向けています。こうした動きはYellowTABにとっては喜ばしいことですか?

Bernd Korz ドイツ人は非常にプライドが高いんだ。自国の製品に誇りを持っているから、(米国企業に買収された)SUSE LINUXに以前ほどの興味はないと考えるドイツ人は多いかもしれない。このことはZetaにとっては追い風となる。Zetaも当面はコンシューマー向けの製品を提供していくつもりだが、将来的にはエンタープライズの分野にも進出したい。

ITmedia GPLなどのライセンスについてはどう考えていますか?

Bernd Korz GPLライセンスはすばらしいことは理解しているが、ことZetaのようにクローズドなコードと同居させることには慎重にならざるを得ない。その取り扱いには注意しなければならないと考えている。

ITmedia クローズドな開発形態だと、なかなか開発コミュニティー、ひいてはZeta上で動作するソフトウェアが増えません。これではWindowsはおろかLinuxのデスクトップOS市場を奪えないのでは?

Bernd Korz ソフトウェアについてはユーザーの協力もあり、ポーティングも進んでいる。言っておきたいのは、例えば(Windowsエミュレータである)WINEをポーティングして、その上でPhotoshopが動く、のようなアピールでは、いつまでたってもユーザーは増えない。BFSの拡張属性の良さを生かせるネイティブのアプリケーションを拡充させるとともに、ZetaというOSが持っている独自の良さをアピールしたほうがいいと考えている。

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