まだ見えないMicrosoftとSunの提携の「成果」

MicrosoftとSunの歴史的和解からほぼ1年がたつ。目立つ成果はまだ見えないが、両社の姿勢には変化が生じているようだ。

» 2005年03月29日 20時26分 公開
[IDG Japan]
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 MicrosoftとSun Microsystemsが1年前に締結した和平協定は、IT業界の転換点となる出来事であり、ユーザーに大きな恩恵をもたらす可能性があると言われてきた。この協定は両社間の反目に終止符を打ったものの、10年契約に基づく両社の提携がユーザーに重要な成果をもたらすのは、かなり先のことになりそうだ。

 英国のSunユーザーグループの広報担当者、デーブ・シェアラー氏は、「この提携の恩恵はまだ見えてこない。それがいつ実現するのか見当がつかない。こういったことは、成果が現れるのに時間がかかるのが常であるようだ」と話している。

 Directions on Microsoftのアナリスト、マット・ロソフ氏も同意見だ。「もともと期待はあまり大きくなかったと思う。Javaと.NETが融合したり、いきなり共存したりするなどとは、だれも期待していなかった。SunがWindowsの販売を開始すると期待した人もいなかった。この提携の目的は基本的に、訴訟を金銭的に解決することにあった」とロソフ氏は話す。

 2004年4月2日、Microsoftのスティーブ・バルマーCEOとSunのスコット・マクニーリーCEOは、サンフランシスコのホテルの一室で全米ホッケーリーグのデトロイト・レッドウィングスのジャージを交換し、「両社の顧客に変化が訪れるだろう」と語った。マクニーリー氏はSunの四半期毎の製品発表の一環として経過報告を行うと約束した。

 両社の合意に基づき、MicrosoftはSunに19億5000万ドル支払った。これにより両社間で係争中の訴訟はすべて和解という形で決着し、10年間の提携契約の一環として対話と技術情報の交換が始まった。

 その後、MicrosoftとSunの遠慮がちな協力関係が始まった。両社は提案中の4つのWebサービス標準に関する作業を開始したほか、Sunのハードウェア製品の一部がWindows Serverソフトウェアのサポート認定を受けた。

控えめな前進

 Microsoftの広報担当者、ジム・デスラー氏によると、両社はこの1年間、「わずかではあるが徐々に前進した」という。

 「われわれは当初から、この提携の成果は、数日、数週間あるいは1年で判断できるものではないという現実的な見方をしていた。今後5年ないし10年間で両社がどこに向かっているかによって成果を判断できるのだ」(デスラー氏)

 Microsoftのパートナーシップ担当副社長、ハンク・ビジル氏は昨年12月の電話会見で、「われわれはまだ、はいはいしているような段階だが、歩き方も次第に学びつつある。いつか一緒に走れる日がくるだろう」と語っていた。

 MicrosoftとSunの協定が両社間の力学に変化をもたらしたのは事実だ。Sunによると、両社の技術者の間では定期的に会合が開かれている。Microsoftのチーフソフトウェアアーキテクトのビル・ゲイツ氏とSunのグレッグ・パパドプロスCTO(最高技術責任者)をはじめとする上級幹部も2週間に一度、テレカンファレンスを開いているという(関連記事)

 提案中のWebサービス標準をめぐるSunとMicrosoftとの間の共同作業は、相互運用性の実現に貢献する可能性がある。これらの標準としては、WS-Addressing、WS-Eventing、WS-Management、WS-Metadata Exchangeなどがある。

 Microsoftのデスラー氏は、「この1年の間に両社間の姿勢に大きな変化が生じた」と話す。

 「技術者たちは一緒に何ができるか、どんな問題で協力できるのかということに目を向けており、『自分の発言が半年後あるいは1年後に裁判所で引用されはしないか』などと心配してはいない」(同氏)

 Sunにとって、提携の成功を示す重要な指標となるのが、SolarisとWindowsを一緒に使用するのがどれくらい簡単になるかということだ。Microsoftとの協力関係を管理するSunの企業開発ディレクター、ベン・レネール氏は、「われわれは自社の知的財産を重視してはいるが、Microsoft製品との相互運用性を実現したいと考えている」と話す。

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