マイクロソフトのOOoに対する姿勢は新手のFUDか?

マイクロソフトがOpenOffice.orgに対して好意的なメッセージを発しないのは、それが単なるFUDではないことは理解しておく必要がある。可視化されないコストなどがその判断材料となるようだ。

» 2005年04月13日 16時49分 公開
[西尾泰三,ITmedia]

 マイクロソフトは4月12日、「改めて考えるOfficeソフト、デスクトップOSの価値」と題したプレスセミナーを開催した。この場で同社は、SP2などに代表されるWindowsの価値向上のための取り組みを改めて説明するとともに、Microsoft Officeとオープンソースのオフィススイート「OpenOffice.org」(OOo)を比較する形で、ビジネスシーンにおけるMicrosoft Officeのメリットを強調した。

 このうち後者については、単純な機能比較ではない。バージョン2.0のリリースが迫っているOpenOffice.orgも機能はそれなりに充実してきているため、そこでの機能比較による優位性を示すことが困難だと判断したのか、マイクロソフトが強調したのは、互換性とトータルコストだった。

 互換性に関して行われたデモンストレーションでは、マイクロソフトのビジネスプロダクティビティソリューション本部の吉村徹也氏が、PowerPoint 2003で作成したファイルをOpenOffice.org 2.0ベータで開き、文字のずれやレイアウトの崩れが生じる現象を再現、Excelとの互換性においてもピボットテーブルが壊れる例を挙げるなどファイルの再現性に完全な互換性がないと指摘する。もちろんこうした互換性の問題は、過去のOffice製品でも少なからず発生するものではあるが、そこについては特に取り上げられなかった。

 もちろんマイクロソフトはOpenOffice.org自体を否定しているわけではない。ある組織や部署などで完結するやり取りであると断言できるのなら、OpenOffice.orgを使う選択もあり得るし、見るだけでよいのであればPDF出力によって見栄えを保つことも不可能ではない。しかし、そこに編集作業が介在するようなやり取りであれば、OpenOffice.orgを使うことは生産性の低下につながると指摘する。

 その上で、こうしたことがIT投資の有効性を下げるのだと話す。つまり、ライセンス自体は無料または低価格なオフィス製品を使ったとして、確かにその部分のコストは下がる。しかし、総コストはソフトウェアライセンスだけではない。サポートのコストや移行にかかるコストなどさまざまなものが考えられる。比較的可視化しやすいこれらのコストに加え、互換性の欠如によって生じた生産性の低下や、操作性の低下がもたらす問題など、可視化しにくいコストを考えると、混在環境がビジネス上リスク要素になるのではないかというロジックである。

 現実を見ると、OpenOffice.orgのシェアはそれほど高くない。特に、国内ビジネス領域であれば、さらに低いと思われる。加えて、日本では官公庁などを中心に、文字のレイアウト自体に意味を持たせることが多いことも考えると、Microsoft Officeが事実上のデフォルトとして考えられていると言っても過言ではない。こうした状況が大きく変わるとすれば、OpenOffice.orgのシェアが大きく向上した場合だろうが、いずれにせよ(少なくとも国内で)この情勢が一気に変化するとは考えにくい。OpenOffice.orgがビジネス領域で普及しにくい負のスパイラルに陥っているようにも思える中、マイクロソフトのこの主張を、(同社が頻繁に行っている)Linuxに対するFUDと同様なものだと判断することは早計だと言える。

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