「デジカメ危機」を乗り切ったキタムラの取り組み

日本IBMは、中堅企業向けに、ITを活用した企業改革の方向性について紹介するイベントを開催した。

» 2005年05月06日 16時29分 公開
[ITmedia]

 日本IBMは4月28日に、中堅企業向けに、ITを活用した企業改革の方向性について紹介するイベントを開催した。

 基調講演を務めた常務執行役員、ゼネラルビジネス事業担当の堀田一芙氏は、「顧客企業である400人の社長と話をした結果、中堅企業の最大の課題は人材の管理にあることを知った。ヒトは“モノ”や“カネ”より難しい」と切り出した。グループウェアなどのソフトウェアを活用し、社員の声を吸い上げた上で、企業活動を行っていくことの有効性をアピールする形だ。

堀田氏。

 そして、こうしたテーマを同社自身がいかに解決したかについて紹介した。IBMでは、「自ら学習する組織」を目指し、ソフトウェアによる情報共有はもちろん、さまざまな形の取り組みを図っている。

 たとえば、四半期ごとに、ゼネラルビジネス事業に関わる全員が参加して全体会議を行う。また、2004年は74回会発行されたというメルマガの制作、幹部育成を図るために行われるシャドープログラム、また、「全国事業所めぐり」は2004年に26カ所に及んだ。そのほか、部門長と第一線で活躍する社員が直接対話する「マネジメントダイアログ」も行われ、内容が公開される。スポーツへの取り組みまで行っているという。

 こうした取り組みにより、同社が自ら社員との交流を図るための努力を怠っていないことがアピールされた。

 一方で、ユーザー企業のスピーカーとして講演したのは、「カメラのキタムラ」で知られるキタムラの北村正志社長だ。

 カメラ業界では、ここ数年はデジタルカメラの台頭にフィルムカメラが押される形となり、キタムラも環境変化によるビジネスモデルの変更が不可避である状況に陥ったという。「デジカメ以後、懸命に生きようとする姿を伝えたい」と同氏。

 「デジカメの伸び、フイルムカメラの減少への流れは津波のようだった。100年かかって普及したものが、たった3年でなくなってしまう勢いだ」(北村氏)

 だが、同社は、「写真屋が飲食店になるわけもいかない」として、新たなビジネスモデルを模索した。そして、デジタルカメラの写真をプリントするビジネスをインターネット経由で請け負うネットプリントや、店舗でのデジカメデータのプリント受注におけるロスを削減することに徹底した。

 目標は、ネットプリント事業では売り上げを2倍にすること。また店舗では、販売チャンスロス、値下げロス、死に筋在庫を抱えることによるロス、棚卸ロスを最小限にすることなどを図ることで、10億円単位のコスト削減に取り組んだ。

 そうした取り組みを支援したのがIBMが提供するNotesだったという。また、「なんでもメッセージ」という掲示板で、草の根の意見交換も行った。結果として、ネットプリントは全需要の40%、e-コマース全体として年商40億円を記録するまでに事業が拡大したとしている。

 もちろん、ITの活用による情報共有だけでなく、企業文化の改革に取り組んだのが成功の要因だったという。「人が主役」という考え方や、顧客第一といった文化を浸透させたこと。また、25年前から大卒の定期採用を止めずに続けたことも功を奏したとしている。

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