Free Software FoundationとOpenOffice.org、Java問題解決へ (2/4 ページ)

» 2005年05月20日 11時50分 公開
[Bruce-Byfield,japan.linux.com]
SourceForge.JP Magazine

論議の原因

 この議論が複雑化した原因は、Free Software Foundation側とOpenOffice.orgプロジェクト側がそれぞれまったく違う言葉で話している点にある。

 OOoプロジェクト内では、Sun Microsystems社が2000年に同プロジェクトのコードをリリースし、現在も同プロジェクトに多くの開発者を提供していることから、一部の例外を除き、Sunをコミュニティーの後援者と見なしている。これに対し、フリーソフトウェア支持者たちは、Sun、ひいてはOpenOffice.orgに不信感を持っている。これは主に、Sunがこれまでフリー/オープンソースソフトウェア(FOSS)を支持したり非難したりと一貫性のない態度をとってきた歴史に起因している。例えば、CEOのScott McNealy氏が、Sunはオープンソースに「大いに貢献」してきた、オープンソースを考案したのはSunであるとまで言っているのに対し、プレジデントのJonathan Schwartz氏は、GNU General Public Licenceを激しく批判している。こうした一貫性のなさは、プロプライエタリとFOSSの中間路線を行こうとする努力と見なすことも、Sun内の意見の不一致と見なすこともできるだろうが、それよりも、コミュニティー側はこれを信用できない二枚舌の証拠と受けとめている。

 「いままで誰もSunをフリー/オープンソースソフトウェア・コミュニティーの味方と思ったことはない」とは、この件に関するNewsforgeの前回の記事に寄せられた最初のコメントだ。また別のコメントは、OpenOffice.orgの新しいバージョンはJavaを「推進」するように設計されており、Sunが「いずれはなんらかの"知的財産"的影響を主張してライセンス料を引き出そうとしている」、といっている。

 OpenOffice.orgプロジェクト側は、自分たちの規模と周りに及ぼす影響の大きさを、いつも認識できていないように見受けられる。例えば、Louis Suarez-Potts氏は、Java採用の決定は「公的に行い、関係者が参加できるようにした」と強調している。OOoのメーリングリストを検索すれば、同氏の言っていることが確かに正しいと分かる。だが、活動的なOOoボランティアであるスコット・カー氏は、多くのメーリングリストを購読し、「毎日1500通もの電子メールを受け取っている」が、当初この決定を見過ごしたといっている。

 カー氏は、おそらく「全体像を知るための適切なメーリングリストに入っていなかったのだろう」と話す。それと同じことだが、OOoプロジェクトも大きくなり過ぎて、外部の者はおろか、メンバーさえも何が起こっているかすべては把握できないほどだ。意見の一致と見えるものも、実はその議論の存在を知っている者の間だけの合意に過ぎないこともある。プロジェクト内で関心を持っている者全員の賛成意見とは限らない。

ライセンスに加えて依存も考慮

 この対立には、ソフトウェアの自由についての解釈の違いがある。OpenOffice.orgリーダーの多くは、FOSSを完全にライセンスの観点のみから定義付けているのに対し、フリーソフトウェア支持者たちは、依存のことも考えている。例えば、Suarez-Potts氏は、OOoの新しいBaseアプリケーションで使用されるデータベースHQSLDBには、BSDから派生したライセンスがあり、SourceForgeでホストされていると話す。「Javaで書かれているからといって、ソースがクローズドだったりプロプライエタリだったりするわけではありません」とSuarez-Potts氏は断言する。さらに、OOo全体は「……オープンソースのままです。オープンソース/フリーソフトウェアとは、簡潔にいえば、ソースがどのユーザにもオープンで、閲覧、コピー、改良できるソフトウェアのことです。実行もです。OOoのソースはオープンであり、これからもそうあり続けます」と話す。

 このような観点では、ソフトウェアの自由の定義は二者択一である。つまり、ソフトウェアはフリーであるかそうでないかのどちらかだ。

 これに対し、フリーソフトウェア支持者たちは、第三の状態もあるとする。ソフトウェアそれ自体はフリーだが、完全に機能するには非フリーソフトウェアを必要とするソフトウェアだ。ストールマン氏はJavaトラップの説明で以下のように述べている。

 プログラムの依存ソフトウェアが非フリーである場合、そのプログラムの一部または全部は、完全なフリーシステムとして実行できないことになる。フリーワールドでは使用不可能になる。もちろん、プログラムを再配布することはできるし、自分のコンピュータに入れることもできる。だが、実行できなければどうしようもない。そのようなプログラムはフリーソフトウェアではあっても、それが依存する非フリーソフトウェアに事実上縛られている。

 フリーソフトウェア支持者たちにとっては、この第三の状態は、せいぜい非フリーソフトウェアよりかろうじてましというだけである。だが、多くのOpenOffice.org活動家たちがこの第三の状態を認識していなかったようなので、プロジェクトメーリングリストで行われた議論は初めは互いに混乱を招くばかりだった。ストールマン氏が最初にボランティアを募集したときの反応も、初めは何の解決にもなりそうになかった。

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