Web標準化の原石「XML」はどこへ向かう(2/2 ページ)

» 2005年05月31日 18時24分 公開
[聞き手:木田佳克,ITmedia]
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ブレイ まず、Unicodeの安定性の問題がありました。Unicodeが安定したのは1990年代半ばです。それに加え、XMLはネットワーク化されたさまざまなコンピュータがアクセスし合うことでいっそう活かされるという環境も合いまり、利用環境としてインターネットがポピュラーになったことも理由のひとつです。

平野 XMLが普及するに従って、XML技術を習得したエンジニアの育成も課題になってきています。日本では、「XMLマスター」という技術者認定制度があって、すでに1万人以上のエンジニアが「XMLマスター」として活躍しています。国内でエンジニアからの支持の高い「@IT自分戦略研究所」の調査でも、非常に高い取得意向が出ています。米国や他国でも、このような認定制度は役に立つと思いますか?

ブレイ XMLの技術習得にこれほどのニーズがあるというデータは初めてみました。XML自体はシンプルな仕様なので習得が難しいとは思いませんが、周辺技術も含めると技術認定制度が役に立つ人は多いでしょうね。

平野 XMLの周辺技術は数多く開発されていますが、中にはあまり使われていない仕様も散見されますね。XLinkはなどは、その一例だと思いますが。

ブレイ 確かにそういう仕様がありますが、XLink(XML Linking Language)は必ずしもそうではない例だと思います。3週間ほど前に記事で読みましたが富士通研究所がXLinkについて発表していましたので、復活したともいえるでしょう。

平野 では、開発はされたものの使われない仕様の典型的なものは何でしょうか。

ブレイ 使われなくなったも同然な典型的なものは、XML 1.1でしょう。理由としては、ほんの一部の人にしかメリットがないので、導入コストに見合ったリターンが得られない、というのが原因だと考えています。普及する仕様というものは、多くの人にメリットがあり、多くの人が使うことのできるシンプルさを兼ね備えている必要があると思います。

平野 その点で言うと、ブレイ氏は現在のWS-*仕様群に対して複雑すぎるという批判をしていますが、WS-*も使われなくなる仕様だと考えているということですか? 今後、WS-*はどのようになっていくと予測していますか。

ブレイ 現在、WS-*で2つの規格が業界に広く受け入れられようとしています。WS-Addressing(関連リンク)WS-Managementです。しかし、WS-*に対しての私の見解は変わりありません。

 業界内にはさまざまな考え方があります。RESTのようにXMLとHTTPだけを使ってシンプルさを追求するグループと、WS-*と称する完璧主義なグループは、対立するのは当然なところです。考え方の根本が違うため歩み寄りを見いだすことは難しいのです。このことからも、両者の取り組みが将来どのようになっていくのかを予測することは難しいと言わざるを得ません。

平野 シンプルなXMLメッセージングとWebサービスは、本当に「対立」するものなのでしょうか? 現実的には、「対立」ではなく「棲み分け」ということではないのでしょうか。

ブレイ いや、対立しています。現在、マイクロソフトはWebサービスに多大な投資をしているベンダーです。具体的に挙げれば、同社が次世代Webサービス技術としているIndigoです。マイクロソフトの戦略を見れば将来の構想は明らかであり、簡単なものから複雑なものまですべてのメッセージングをWebサービスで統一しようとしています。

 一方、IBMは非常に大きな組織です。このため、Rationalを始め5つのまったく違ったブランドで異なる取り組みを並行させることもできるほどです。実際にWebサービスにも多大な投資をする傍ら、シンプルメッセージングにも取り組んでいます。これは大規模であることのメリットとも言えるでしょう。

平野 そうとは言っても、多くのベンダーの製品はシンプルなメッセージングとWebサービスの両方に対応しています。例えば、当社の製品「ASTERIA」でも、どちらのメッセージングにも対応しており、ユーザーは必要に応じて選べば良いという形になっています。

ブレイ 問題をはっきりさせるために、ここで1つの問いを投げかけたいです。まったく同じ機能をXMLのシンプルなメッセージングとWebサービスの2つの方法を提供した場合、ユーザーはどちらの方法を利用するでしょうか。

平野 機能がまったく同じなら、シンプルな方ですね。

ブレイ そうですよね。我々がインターネットで学んだことは、シンプルな答えがあるならばユーザーはそちらを選ぶということです。XMLもそうでした。80-20の法則でもあるように、ほとんどのものが、80%の問題は20%の力で済むと言えます。100%にしようとすれば、その労力は過大なものになるのです。歴史上画期的だと言われているPC、Unix、Java、SQL、XML、RSSなどもこれに該当して普及したものです。

 また、将来的な視点からは「WS-*で良いのか?」という根本的な心配もあります。WS-*は、大まかに数えてみただけでも900ページ以上の仕様ドキュメントがあります。中には大変難解な仕様もあるのです。特に、私からの見てもWSDLは非常に難解だと感じています。解決すべき問題より解決策の方が大きくなってしまっているのではないか? と考えてしまいます。このような点は見過ごすべきではないのです。サービス実現は、実現するプロセスで必要以上に苦労することが本流ではありません。

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