Web標準化の原石「XML」はどこへ向かう(1/2 ページ)

XMLの第一人者として知られているティム・ブレイ氏。WS-*と称される規格を始めWebサービスへの在り方に疑問を投げかける同氏は、SunでNetBeansを始め、Web全体のテクノロジーやBlogに取り組む先導役でもある。

» 2005年05月31日 18時24分 公開
[聞き手:木田佳克,ITmedia]

 Web表現の進化形として知られる「XML」(Extensible Markup Language)。1998年に標準化団体のW3Cで勧告されたデータ記述の共通言語として、多くの派生規格を生み出す、言わば原石ともいえる存在だ。そのW3CでWebアーキテクチャ開発に携わる第一人者として知られているのがティム・ブレイ氏。同氏は2004年3月、米Sun Microsystemsへと就任し(関連記事)、現在は同社でWebテクノロジーズディレクターとしてNetBeansプロジェクトなどに関わっている。

 先ごろ「World Wide Web Conference 2005」を機に来日された同氏へインタビューする機会を得た。対する聞き手として招いたのは、国内でXMLへ取り組む代表者といえるインフォテリアで代表取締役社長/CEOの平野洋一郎氏である。同氏は、XMLコンソーシアムの副会長を務め、国内でのXML普及や啓発活動を行っている。

 インフォテリアは、XMLの技術認定資格である「XMLマスター」を推進するXML技術者育成推進委員会の事務局も担い、XMLの教育コースを運営するなどXMLに関するさまざまな啓発(関連記事)を行っている。また、XML技術を核としたデータ連携プラットフォーム「ASTERIA 3」が知られている。

平野 ちょうど1年前にSunへと所属になりましたね。このことは、日本でも業界ニュースとなりました。まず最初に、最近のSunでの仕事について教えてください。

ブレイ 私はSunの中で現在、特定分野の専門というよりはWeb関連で何にでも取り組んでいるという立場です。Webの技術としてのXMLはもちろん、ローレベルなプログラミングなども手がけ、Java以外にもさまざまな分野に興味を持っています。現在進行形なものとしては、Atomプロジェクトやダイナミック言語(スクリプト言語)、XMLのOfficeドキュメントフォーマットにも注目しています。

写真■XMLに携わる人は誰もが知るほど著名なブレイ氏

 業界全体で取り組んでいるWebサービスにも注目しています。これまでにも発言してきましたが、WS-*の仕様ドキュメントの多さや完璧さを追求する傾向に疑問を感じている、というのは正直なところです。これについては後ほど話したいと思います。

 ほかにも、Sun関連であれば、マルチスレッドなCMTプロセッサについて、そして自身でも開設しているBlogにも興味を持っています。Sunでは現在、内部だけでも1千5百名ほどのブロガーが居ますが、そのポリシー作りのリーダーも担っています。

平野 ポリシー作りというのは、Sunのブロガーから解雇者が出ないようにするということでしょうか(笑)

ブレイ それも含みますね(笑)

平野 さてXMLに話を戻しますが、XMLは1998年に生まれてから、もう7歳になりました。「XMLの父」の1人として、この間のXML普及や発展についてどう考えますか? 私は1998年の9月に日本初のXML専業ベンダーとしてインフォテリアを創業したので、当時からブレイさんの発言には注目していました。

 その中で、1998年の10月に、ブレイさんはPC WEEKのインタビューに対して「XMLがドキュメント以外の用途向けに脚光を浴びていることに面食らっている」という趣旨のコメントを寄せており、実は私もブレイさんのコメントを自らのコラムで取り上げました。あれから既に7年近く経ちますが、XMLはドキュメント向けの技術であるという考えは変わっていないのでしょうか?

ブレイ XMLの発端は、複数のグループによって作られました。最初はパブリッシングテクノロジーに長けた人々によって手がけられたため、ドキュメント表現に威力を発揮するのではないかと考えられていたのです。ところが現在を見ると実際には、コンピュータ間のメッセージフォーマットとして利用されることが多くなりました。この点については当時は予測していませんでした。ただ、現在ではXMLが数多くの分野で使われることは喜ばしいことだと考えています。

 また、最近の大きなトピックとして挙げることができるのは、OpenOfficeのOpenDocumentフォーマットが5月にOASIS標準化委員会で標準化されたことはとても喜ばしいものです。OpenDocumentは、ドキュメントフォーマットとメッセージフォーマットを融合させたような意味を持ちますから、進んできた方向性がまったく違っていたわけではないと言えるでしょう。

写真■XMLコンソーシアムで副会長を務める平野氏。同氏は、インフォテリアで代表取締役社長/CEO

平野 ある意味で、XMLを開発したグループは未来を作ったとも言えますね。

ブレイ いや、われわれは未来を作るための道具を提供しただけであり、未来を作り上げたのは、多くのほかの人たちです。実際、XMLはとてもシンプルな構造なので1980年代に開発されていてもおかしくない技術です。

平野 では、なぜXMLが早期に開発されなかったのでしょうか。

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