「インターネットの縮図」を描くShowNet(1)Interop Tokyo 2005開幕特集(2/2 ページ)

» 2005年06月07日 09時06分 公開
[ITmedia]
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海崎 正直に言うと、去年まではオンサイト(会場)でしか働いていなかったので「NOCの人たちはこんなに時間を使っているんだ」とびっくりしました。それに、「こんなことまで僕たちで決めていいの?」と感じることもありますね。Interopならではの責任、使命感というものを感じます。

 コントリビュータとしての立場からお話すると、われわれは通信事業者として1999年からShowNetのエクスターナル(外部)回線を提供してきました。ShowNetのエクスターナルに提供し、だいたい1年くらいしてからそれを新サービスとしてリリースするというサイクルができており、その意味でShowNetのメリットを享受させていただいている事業者の1つです。かつては150Mbpsの回線からその次の段階まで来るのに10年くらいかかったことを考えると、ShowNetに参加し、エクスターナルを提供するという機会を得ることで、サービス提供までのスピードがどんどん早くなっています。これもコントリビュータとして大きなメリットです。

「インターネットの縮図」を通じてさまざまなシーンごとの見せ方を

ITmedia では、今年のShowNetのテーマは何でしょうか?

中村 今までずっと、ニーズよりもシーズのほうが得意ということもあって、テクノロジを追いかけてやってきました。たとえば「10Gbpsイーサネットだ」「OC-192だ」という具合に、端的なキーワードがぱっと出てきたわけです。

 今回で12年目ですが、そろそろ再考する時期にきたかな、ということで、NOCやSTMメンバー、コントリビュータといろんなディスカッションをしてきました。その中で合意点として見えてきたのは、テクノロジーがある程度円熟してきたということです。

 正確に言うと、利用するシーンが非常に多岐に渡ってきており、その中でネットワークの技術やデバイスなどがうまく表現できなくなっているんじゃないかということです。利用シーンがあまりに多岐に渡るため、各シーンにいろんな技術が使われているし、同じような技術でも使われ方が違っている。1つのネットワークを持ってきたとしても、人によって見え方が違ってくる、ということです。そこでInteropに来てShowNetを見てもらう人にもっと「見えやすい」ネットワークデザインが必要だと考えました。というわけで出てきたキーワードが「インターネットの縮図」です。

中村氏 「インターネットの縮図」というテーマについて語る中村修氏(慶應義塾大学)

 たとえば一口にネットワークといっても、SOHO、エンタープライズ、ISPのネットワークではそれぞれ技術的に異なるものが用いられています。同じスイッチでもエンタープライズに持ってくれば基幹スイッチ、バックボーンスイッチの位置付けだけれど、ISPでは各地域、各都市に配置するエッジスイッチになる。また、高品質の映像配信を手がけるこれからのスタジオでは、普通のエンドスイッチとして活躍できるかもしれません。このように、同じ製品でも視点が異なればいろいろな見え方がある。

 また、見た目は同じでもアピールしたい機能が異なってくる。セキュリティの機能かもしれないし、高速スイッチング技術かもしれないし、ハードウェアフォワーディングによる低遅延かもしれない。カタログスペックで見てしまったらそれだけの機能だけれど、それぞれのシーンにおいて、重要な項目は違ってきますよね。

 そういった意味で、いろいろなシーンをクリエイトし、その中でどうネットワークがデザインされるのかをうまく見せられれば、来てもらえる人、コントリビュータに対し、もっと分かりやすく、それぞれの機会やターゲットが見えるんじゃないかということで、インターネットの縮図というコンセプトを出してきました。

 もちろん、新しい技術がないかというとそんなことはありません。たとえば伝送系では40Gbpsを採用したり、セキュリティの分野では10Gbpsの回線に対してどのようにタップを行ってセキュリティ監視を行うかというチャレンジがあります。ほかにも光スイッチを使ったり、アプリケーションではShowNet TVで非圧縮HD伝送に挑戦します。

 また、ShowNetのフロアでは、出展社に対しただ100Mbpsのイーサネットを出すだけでなくて、BGPルーティングやPPPoE、あるいはVLANでスペシャルドロップを出すといった具合に、2ホールから8ホールの間にさまざまなメニューを用意しています。いろんな新しい技術もあるけれども、今年はそれらを適材適所で、いろんなシーンでお見せできるネットワークにしたいというコンセプトでやっています。

山口 つまり、スーパーカー1台を見せて終わるんじゃなく、F1マシンや貨物トラック、トレーラー、乗用車など、用途ごとにいろんな車を見せていくという感じです。ネットワークの社会の中での位置付けが変わったということですよね。この3〜4年でネットワークの需要が広がってきた中で、インフラの果たす役割が変わり、プレイヤーが変わり、多種多様になってきている。となるとやっぱり、スーパーカーを1台見せたってぜんぜん分からない。だからいろいろお見せしましょう、ということです。

 僕の感覚からすると、ネットワークって昔はどこでもだいたい同じ感じでした。キャリアで使ってるものをサイズダウンしたものがエンタープライズにあり、さらにサイズダウンしたものが家にあるというシンプルなモデルでした。けれど今、流れが分化し始めていて、エンタープライズのコア向けに出てきている製品とキャリアのエッジ向けの製品でもラインナップが変わってきています。家の中になるとさらに違いますよね。分岐が始まっているんだと思います。

(続く)

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