Powerプロセッサを「次のLinux」と位置付けるIBM(2/2 ページ)

» 2005年06月14日 15時17分 公開
[IDG Japan]
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 しかしこの課題はPowerのほうが困難であり、重要な問題がまだ決まっていないことを同氏は認めている。例えば、Powerベースのコンポーネントを開発している企業が、Powerデザインの使用料をIBMに支払う必要があるかどうか、という問題もその1つだ。「それはまだ確定していない」とテイセドル氏。IBMでは、さまざまな提案をPower.orgのメンバーと協議中だという。

 Ovumのアナリスト、バーネット氏はPower.orgに期待しているが、幾つかの障害に直面しているという。その1つとして、IBMは「若芽が好き勝手な方向に育つことがないようきちんとコントロールし、かといって厳しすぎることのないような」ガバナンスモデルを確立する必要がある、と同氏は指摘する。

 「Power.orgはまだ生まれたての赤ん坊だ。呼吸をさせ、自分で歩けるようしてから、走らせる必要がある」(バーネット氏)

 しかしPower.orgは「魅力的で、可能性がいっぱい詰まっている」とバーネット氏は話す。なぜなら、高性能プロセッサを設計するための迅速で安価な方法をシステムビルダーに提供するからだという。

 かつては、セキュリティアプライアンスやセットトップボックスなどの組み込みシステム用のプロセッサの設計は、一からスタートし、企業が単独で行うのが普通だった。x86プロセッサの性能が向上するのに伴い、汎用プロセッサを使用し、高速な暗号化などを実現するための専用ソフトウェアを追加するというアプローチを採用する企業が増えた。

 「しかし最大のパフォーマンスを得るには、機能をシリコンに焼き込まなければならず、Power.orgは新しいチップデザインへの迅速かつ安価なルートを提供することができる」とバーネット氏は話す。

 同氏によると、PC市場ではビジネスチャンスが限られており、英国のデザイン会社Armは携帯電話ビジネスに参入したという。しかしセットトップボックス、ホームメディアサーバ、車載機器、アビオニクス(航空機搭載電子機器)の分野など、将来システムの形状がまだ決まっておらず、Power.orgがシェアを獲得できる可能性のある「巨大な中間領域」が存在するという。

 テイセドル氏は、残された作業は多いとしながらも、Power.orgの持続的拡大は好ましい徴候だと述べている。

 「これは大きな賭けだ。成功するかどうかは分からない。しかしわれわれが4年前にLinuxを後押ししたときも、多くの疑問があった」と同氏は語る。

 Power.orgの新メンバーは、Barcelona Supercomputing Center(自社のスーパーコンピュータ「Mare Nostrum」でPowerプロセッサを使用)、Celestica、Universal Scientific Industrial(電子機器製造サービスのプロバイダー)など。16社の創設メンバーには、ソニー、Chartered Semiconductor Manufacturing、Novell、Red Hatなどの企業が含まれる。Power.orgの詳細はこちら

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