ICカードと手のひら認証で成績確認、千葉工業大学

千葉工業大学では学生証に多機能ICカードを採用。さらに手のひら静脈認証技術を組み合わせて認証し、成績情報などを確認できるシステムも導入する。

» 2005年06月22日 20時07分 公開
[高橋睦美,ITmedia]

 千葉工業大学は7月1日より、多機能ICカードと手のひら静脈認証技術を組み合わせて学生を認証し、成績情報などを確認できるようにするシステムの運用を開始する。

 同大学ではこれまで、磁気カード式の学生証を発行し、各種証明書の自動発行や図書貸出などの用途に活用してきた。しかし、学生情報や成績情報といったセンシティブな情報となると、磁気カードやID/パスワードの組み合わせだけでは成りすましの危険性があり、不安が残る。

 今回のシステムでは、富士通が開発した非接触型の手のひら静脈認証技術に、大日本印刷の「FeliCa対応デュアルインタフェースJavaカード」を組み合わせることでセキュリティ強度の問題を解決した。4月より学生証として配布してきた多機能ICカードのチップ内に、学生個々の静脈情報を格納。専用の情報キオスク端末でICカードおよび静脈情報の照合を行い、本人と確認された場合にのみ成績情報などを閲覧できるようにする。

デモ キオスクではまずICカードを挿入し、手のひらをかざして本人確認を行う。画面には保護シートが張られ、横からの覗き見はできない

 千葉工業大学教務部教務課課長の小川靖夫氏によると、「指紋や虹彩など他の生体認証方式も検討したが、コストや安全性、利便性、それに社会的受容性などを考慮して手のひら静脈認証を採用した」という。手をかざすだけで認証を行えるため、指紋に比べて心理的抵抗感が薄い。また静脈の情報はICカード内に格納され、サーバ側には保存されない仕組みもポイントになった。

 「大学では名前や住所といった個人情報だけでなく、成績や出身校、保証人や家族構成といったより高いレベルの個人情報を扱う。それらをきちんと保護した上で、学生に対するサービス向上という意味から、いかに迅速に(成績などの)情報を提供できるようにするかが課題だった」(小川氏)。

 新システムを通じた学生のセキュリティ意識醸成にも期待する。「セキュリティは社会に出て行くうえで欠かせない課題になる。ICカードの紛失時の対応なども含め、学生のうちからセキュリティや個人情報の重要さについての意識を培えれば」(同氏)。

 千葉工業大学ではICカードおよび発行システム、アプリケーションおよび専用キオスク5台など、一連のシステムに約9000万円を投資した。当初は成績情報の閲覧などから始まるが、履修手続き用PCへのログインや自動証明書発行機、出席管理や研究室などへの入退室管理などにもICカード学生証を活用していく。中長期的には、学内での活用にとどまらず「SuicaやEdyといった学外のサービスとの連携も検討していきたい」(小川氏)。

 ただ、何でもかんでも生体認証を組み合わせてがちがちにセキュリティを固めるつもりはないという。「用途やアクセスする情報の重要度に合わせてレベルを切り分けていくことが重要」と小川氏は述べ、適材適所で活用していきたいとした。

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