インドにとってのオープンソース、アックスマーク氏とベーレンドルフ氏に聞く(2/2 ページ)

» 2005年06月23日 02時58分 公開
[Mayank-Sharma,japan.linux.com]
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アックスマーク もちろんあります。インターネットのおかげで、さまざまな開発モデルが実現できるようになりました。現時点では、米国や欧州のオープンソース・ソフトウェア企業が、一部の作業をインドにアウトソーシングするという形になっています。その代案として、インドで会社を設立し、営業やマーケティング部門の一部を米国や欧州に開設するという方法も不可能ではないでしょう。

筆者 MySQLおよびMySQL ABの成功からインドが学べることはありますか。

アックスマーク そうですね、最大の教訓は、ビジネスに関する特別な知識や資本がなくても、起業を成功に導くことは可能だということです。熱心に取り組む意欲があり、自由な時間に起業することを基本とすれば大丈夫です。

筆者 ベーレンドルフさんにうかがいます。インドにたびたびいらっしゃっていますが、全体的に見て、インドの人は、オープンソース運動の意味を理解してきていると思われますか。

ベーレンドルフ 価格が適正だという点を超えた部分で、オープンソース・ソフトウェアに対する興味が高まっており、わたしはそのことに大いに勇気づけられています。わたしは、その興味について、教育という面をベースとしてとらえています。つまり、オープンソースの成果物が広く公開されているおかげで、学生たちは、ソフトウェアのしくみを身に付ける大きなチャンスが得られ、優れたコーディング技法を学ぶことができます。特に、世界各国に配布するプロジェクトにおける技法です。また、オープンソースを基盤とするIT業界によってインドにもたらされる、経済的な自立や強みに対しても、深い興味が持たれていると思います。そのほか、自ら修正する権利を有するコードの柔軟性についても、企業で評価されているという声を耳にします。ここからさらに前進するためのステップとしては、世界中のオープンソース・プロジェクトにおいて、インドのプログラマが重要な貢献者として名を連ねるようになるという段階が考えられます。これが現実のものとなるためには、オープンソース・ソフトウェアを利用しているインド企業が、そうした貢献を社内に囲っておくのではなく、そうした貢献の価値を認識し、正当に判断する必要があります。そうした動きも起きてはいますが、ゆっくりとしたものです。

筆者 最近のインタビューで、ミッチ・ケイパー(Mitchell Kapor)氏が、MicrosoftがInternet Explorerを改良することになったのはFirefoxの影響だということを言っていました。オープンソース・ソフトウェアは、プロプライエタリ・ソフトウェア・ベンダにとってベンチマークとなりつつあるのでしょうか。これにより、オープンソース・ソフトウェアのイメージにはどんな変化があるのでしょうか。

アックスマーク オープンソース・ソフトウェアによって、低質なプロプライエタリ・ソフトウェアは駆逐されます。たとえば、80年代にgccが登場して以来、コンパイラ市場にどんな変化が起きたかを考えてみてください。競争力を備えたコンパイラもいくつかありましたが、それ以外の大半は消え去っていきました。ユーザーにとっては、選択肢が少なくなるほど、選択は簡単になります。もっとも、多くの場合には、オープンソース・ソフトウェアは、多すぎるほどの選択肢を生み出しています。

筆者 インドでは、オープンソースはなかなか認知されず、採用は遅々として進みません。どんな要因が欠けているのでしょうか。

アックスマーク インターネットの普及度と料金は要注目だと思います。それと、過去の積み重ねです。オープンソースの成熟には時間がかかるのが普通であり、インドでは、これまでの積み重ねは長くないのです。

筆者 オープンソース・ソフトウェアを知っている人は、オープンソース・ソフトウェアというものをどのようにとらえているのでしょうか。ホビー・ソフトウェアだと思っている人もいまだにたくさんいます。「オープンソース・ソフトウェアがほんとに商売になるのか」という疑問の壁を乗り越えるためには、インドには何が必要なのでしょうか。

アックスマーク オープンソース・ソフトウェアに対するビジネス的な視点という面では、インドは数年遅れているように思います。欧米では、IBM、 HP、Intel、Google、Yahooといった企業のほか、SourcelabsやSpikesourceなど、オープンソース・ソフトウェアを基盤とした新興企業の数々で、オープンソース・ソフトウェアがビジネスに活用されています。そこで起きる疑問は、人員にかかるコストが高いときに、オープンソース・ソフトウェアは本当に安上がりになるのかということです。その意味で言うと、オープンソース・ソフトウェアの費用対効果は、インドではとりわけ高いということがわかっています。願わくば、インドが遅れを取り戻し、オープンソース・ソフトウェアを現実的な選択肢として扱うようになればと思います。



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