インドにとってのオープンソース、アックスマーク氏とベーレンドルフ氏に聞く(1/2 ページ)

プロプライエタリなソフトウェア企業が主流として強い影響力を持つインドのような国にとって、オープンソースのITにはどのような経済的メリットがあるのだろうか。オープンソース企業の2人のリーダーに話を聞いた。

» 2005年06月23日 02時58分 公開
[Mayank-Sharma,japan.linux.com]

 ここインドでは、Free Software Foundation(FSF)が強固な基盤を持っており、リチャード・ストールマンがインドの首脳たちと会ったのも1度だけではない。しかし、プロプライエタリなソフトウェア企業が主流として強い影響力を誇っている現在、IT業界に携わっている一般の人たちにとっては、主導権争いばかりが目に映るのが普通だ。

 インドのような国にとって、オープンソースのITにはどのような経済的メリットがあるのだろうか。その点について理解するために、オープンソース企業の2人のリーダーに話を聞いた。1人は、MySQL ABの共同創立者の1人であるデビッド・アックスマーク(David Axmark)氏、もう1人は、CollabNetの創立者兼CTOであるブライアン・ベーレンドルフ(Brian Behlendorf)氏だ。

筆者 インドにとって、オープンソースにはどんな意味があるのでしょうか。

アックスマーク 先進国と同じ土俵で競えるチャンスであり、企業および個人が持つスキルを、大きな資金をかけずに売り込むチャンスであり、大手ソフトウェアベンダーの支配から逃れ、自らのかじ取りで自らの未来を切り開くチャンスです。

筆者 インドの開発コミュニティーはよく知られています。オープンソースという面のイメージはいかがですか。

アックスマーク 貢献者としての存在感はほとんどないですね。その面では、インドは、現実というよりも、潜在的可能性という段階にとどまっています。

筆者 企業がオープンソース・ソフトウェアの利用を検討すべきなのはなぜですか。また、一般的に言って、移行によるメリットが得られそうなのは、大企業と中小企業のどちらでしょうか。

アックスマーク 当然ながら、移行の理由として真っ先に挙げられるのは、完全に合法的な形でコストを削減できるということです。その点については、企業の規模というのは関係ないと思います。もう1つのポイントは柔軟性です。傾向として、オープンソース・ソフトウェアの方が柔軟性ははるかに上です。同一製品のラインナップの中で、低価格な製品の方に制限や制約を加えるという、プロプライエタリ・ソフトウェアベンダーのような策は必要ないからです。

筆者 中小企業の事業主が移行プロセスをスムーズに進められるようにするためには、インドには何が必要でしょうか。

アックスマーク 法令、言語、流通などの面でインドの国内市場に対応した、既製のソリューションが必要でしょう。

筆者 労働力の安さ以外の理由でインドに進出して来るオープンソース開発企業は増えているのでしょうか。

ベーレンドルフ もちろんです。ソフトウェア開発について「労働力」という言い方をすると、レンガを積んで壁を作ったり、鋼鉄材を製造したりするのと同じような、機械的な作業であるかのように聞こえます。ソフトウェアを1から作成するというのは創造的な作業ですし、ソフトウェアのサポートやカスタマイズにしても、それに負けないくらいの創造性が必要です。その実現のためには、きちんと教育を受けた高いモチベーションを持つ人員が必要です。また、人員の数は、取り組む開発のサイズに十分対応できる規模が必要です。さらには、英語を自由に操れる力や、文章や書面で明晰に意思疎通できる力も重要です。こうした面から見ると、当社においては、インド出身者の技術チームは、他国の技術チームに比べて、人員1人あたりの貢献度は上です。また、12時間半の時差があるため、管理をきちんと行える限りは、バグつぶしや機能実装に24時間体制で対応できます。確かに、賃金格差もメリットの1つだということは間違いありませんが、これまでと同様に賃金が上昇していくにつれて、その面のメリットは消えていくだろうと予測しています。さらに言うと、ここインドには、当社のソフトウェアにとってのビジネスチャンスがあります。

筆者 インドの企業は、コミュニティー開発モデルから学ぶべきものはありますか。

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