SunのSeeBeyond買収に肯定的な評価

「SunはSeeBeyondをもっと早く買収していた方が良かった」という意見はあるものの、業界観測筋は今回の買収を「幸先のいいスタートになる」と評価している。(IDG)

» 2005年06月29日 16時46分 公開
[IDG Japan]
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 米Sun Microsystemsは何年もの間、真の成功に達していないJavaソフト事業を強化する技術を買収するチャンスを逃してきた。だが同社は6月28日、SeeBeyond Technologyの買収でようやく理にかなったソフト買収を果たした――業界観測筋はサンフランシスコで開催のJavaOneカンファレンスでこう語った。

 Sunはこの日の朝、スコット・マクニーリーCEOがJavaOneで基調講演を行う直前に、複合アプリケーションプラットフォームベンダーのSeeBeyondを3億8700万ドルで買収することを発表した。買収は秋に完了する予定だ。

 一部には、SunはSOA(サービス指向アーキテクチャ)インフラベンダーの買収をもう少し早い時期にしていたかもしれないとの見方もある。同社はかねてからこの新生の分野で堅固な戦略を立てられずにいた。このため、企業顧客が検討するソフトインフラベンダーの短いリストからSunは外れてしまっていたと観測筋は指摘する。

 Current Analysisの主席アナリスト、ショーン・ウィレット氏は次のように語っている。「Sunにとっては長らく遅れていたものの、素晴らしい動きだと思う。同社はインテグレーションの機能を持たなかったが、今回の買収は明らかな穴を埋めるものだ。だがもっと重要なのは、Sunが新しいESB(エンタープライズサービスバス)、SOA、複合アプリケーションの分野に参入したいのなら、これは幸先のいいスタートになるということだ」

 RedMonkの上級アナリスト、ステファン・オグレディ氏も同様の意見だ。「確かに(この取引は)もっと早くに行われたかもしれないという意見もあるだろう。インテグレーションサーバが欠けていることが、(Sunの)現行のラインアップの問題だということは何度も耳にしてきた。こうした製品は、同社にこれまで参入していなかったインテグレーション分野での競争力を与える。これは、RFP(提案依頼書)などに入れなくてはならないチェックリストの項目だ」

 Sunの長年のコンサルティングパートナーもSeeBeyond買収には楽観的な見方をしているだが、Sunがもっと早くにこうした動きに出た可能性は認めている。

 「この取引は非常に素晴らしいと思う」とITコンサルティング会社Back Bay Technologiesの社長兼CEO、マーク・マセリ氏。「もっといいタイミングなら良かった――外部の人間の視点から見れば、もっと早い方が良かった――が、それでもこの取引により、Sunはインテグレーション、SOA、ESBソフトの購入リストに載るのに必要なカンフル剤を得るだろう」

 マクニーリー氏も基調講演で、顧客にSOAソフトインフラを提供する必要性を認めたが、IBMやBEA SystemsなどのライバルがSunより先に同様の技術を提供していることは認めなかった。

 「われわれは、すべてのアプリケーションを統合するという難題を抱えた顧客がたくさんいることを知っている」とマクニーリー氏は語り、SeeBeyondのSOAアーキテクチャ「Integrated Composite Application Network」がSunのJavaソフトポートフォリオにいかに適合するかを説明した。「(ソフトを)1つのスタックにまとめずにアプリケーションを統合する方法を顧客に与えることは、市場への合理的な代替案のように思えた」

 SeeBeyondの創設者にしてCEOのジム・デメトリアデス氏はこの日、マクニーリー氏とともに壇上に立ち、今回の取引が両社にとってメリットになる理由について、自身の見解を語った。デメトリアデス氏は、SeeBeyondのソフトはJavaを基盤に構築され、Java Business Integration(JBI)などほかの標準技術をサポートするため、SunのJava Enterprise Systemスタックにうまく適合すると述べた。

 同氏はまた、Sunなどの定評あるベンダーがSeeBeyondに与えられるリーチに期待しているとも語った。「Sunはこれにより、われわれ2億ドル企業にはできないことができる」

 基調講演後の記者会見で、Sunの社長兼COO(最高執行責任者)ジョナサン・シュワルツ氏は、買収が完了したら、SunはSOAソフト戦略の推進をSeeBeyondの営業部隊に頼ることになると話した。また、この取引は27日に発表されたJBIのオープンソース実装のリリースには影響しないという。

 「JBIは標準であり、われわれが話題にしているのは明らかに、ESB実装の要素のオープンソース化だ。第二に、SeeBeyondはフル機能のツールスイートのインテグレーションになる。これは非常にシンプルなモデルだ。SeeBeyondは前進するSunのJBI実装だ」

 コミュニティーに向けた歩みとSeeBeyond買収を強調した以外に、マクニーリー氏は基調講演の中でJava向けの業界固有のソリューションを宣伝した。特に、同氏はもっとネットワーク化が進んだITインフラを必要としていると考えている2つの業界――医療と教育――に焦点を当てた。

 マクニーリー氏は、Brazilian National HealthcareがSunの技術で構築したシステムを取り上げた。このシステムは、ブラジル国民がJavaスマートカードを使って、システム内のどのネットワークからでも自分の医療情報にアクセスできる。

 このシステムにより、患者は新しい医師にかかるたびに、新たに書類を記入しなくても済むようになる。これは特にJavaOne来場者の印象に残った。EDI(Electronic Data Interchange)ベースのサービスを提供し、データの操作にJavaを採用しているGlobal Exchange Servicesの設計技術者スティーブ・グリソン氏は、「わたしにも関わりのあるものかもしれない」と話す。「子供を医者に連れて行くたびに、何度も何度も同じことを聞かれる」

 偶然にもSeeBeyondは医療業界向けEAI(Enterprise Application Integration)技術を提供する企業としてスタートした。デメトリアデス氏は、「世界の大規模医療施設すべて」がSeeBeyondのソフトを標準にしていると語った。

 SeeBeyondはColumbia Presbyterian Hospital、Blue Cross Blue Shield of Massachusetts、Pfizerなど世界中に2000の顧客を抱えている。

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