Claria買収のうわさはMicrosoft社内からのリークかも(2/2 ページ)

» 2005年07月07日 21時14分 公開
[David Coursey,eWEEK]
eWEEK
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背反する利害

 具体的にどんな利害が絡んでいるのだろうか。まずMicrosoftは、ほかのスパイウェア企業と同様、広告を販売している。またスパイウェアは、Microsoftが販売する広告を表示する能力を損なう可能性がある。そしてもちろん、Microsoftはスパイウェア企業を買収する可能性がある。

 Microsoftはスパイウェアと競合する関係にあるため、MSNの収益を保護(あるいは拡大)するためのだけのツールとしてアンチスパイウェアを利用しているのではないことを示す努力をする必要があるように思える。

 ClariaはもともとGatorという名前だったが、悪評と訴訟のせいで社名の変更を余儀なくされたという事情を知らない人には、Clariaの何が問題なのかよく分からないかもしれない。

 エーデルマン氏の調査報告書の中で、「Clariaのインストール手法は問題だ。Windowsのダイアログボックスのように見せかけた広告でユーザーを誘い、ユーザーにとって不要なことを同社が知っている機能(現行版のWindowsには既に含まれている時刻同期機能など)を宣伝している。また、ClariaはKazaaと一緒にインストールされることが多いが、その場合、Clariaの長文のラインセンスにセクションタイトルが付けられていないため、Clariaがどんな機能を実行するのか理解したり、Clariaのライセンス条件について判断したりするのが非常に困難である」と指摘している。

 MicrosoftがClariaに対する扱いを変更したことからすれば、(Microsoftが口を閉ざしているため)ClariaはもはやMicrosoftのスパイウェア基準に違反していないと推測せざるを得ない。

 Clariaは、ユーザーの行動を記録した巨大なOracleデータベース(推定サイズは120Tバイト)を持っている。これは、同社のソフトウェアをダウンロードしたWebユーザーの行動を監視することによって収集されたものである。この情報は、ユーザーがどんなWebサイトにアクセスしているかに基づいて広告を配信するのに利用されるが、その広告の出所が分からないためにユーザーが混乱することもある。

 エーデルマン氏によると、Microsoftは過去および現在の行動で物議を醸しているClariaのような企業を買収するのではなく、広告配信ソフトウェアを自社で開発すべきだという。

 Clariaが持っている120Tバイトのユーザー情報の収集方法に問題があったという事実にふたをするわけにはいかないのである。

 とはいえ、それがClariaの主要な資産であるのかもしれない。というのも、MicrosoftはClariaの配信方式をきちんとしたものに修正する必要があり、また5億ドルと言われているClariaの価格よりもはるかに少ないコストで自社独自のソフトウェアを開発することができるからだ。

 筆者は状況を次のようにとらえている。

1. Microsoft社内の反Claria派が取引を阻止する目的で、この話をリークしたのだとしても不思議ではない。

2. MicrosoftはClariaを買収したがっている。筆者は同社が買収を思いとどまることを望んでいる。

3. もしMicrosoftがClariaを買収した場合、Microsoftはそのビジネス手法をまともなものに直すだろう。ただし、何がまともであるかという点については、Microsoftとベン・エーデルマン氏の間で考え方が食い違っているかもしれない。

4. Microsoftは顧客データを保護し、そのデータをきちんと管理するよう努力するだろう。Microsoftがスパイウェアベンダーの常套手段を用いてユーザーを欺くとは思えない。

 しかしMicrosoftは、自社の善良性は明らかなはずだという自信のあまり、同社がプライバシー問題に鈍感であることを露呈してしまった。

 MicrosoftはClariaに関心を持っていることを顧客に説明し、交渉を進めているのかどうか明らかにする義務がある。

 もし交渉中だとしたら、MicrosoftはClariaの過去、現在、そして将来のビジネス手法を説明する必要がある。

 だが筆者がMicrosoftの方針を決定する立場にあるとすれば、不必要な混乱を引き起こしたことを謝罪し、Clariaの買収を断念するだろう。

 それとも、筆者はまったく勘違いしているのだろうか。MicrosoftがClariaを買収しようとしているのは、同社を廃業させ、主要なスパイウェア企業をこの世から葬り去るためなのかもしれない。

 そうだとしたら、それこそまさに「顧客第一主義」だと言えるだろう。

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