コカコーラの製品供給体制を一変させたSAPベースの新システム

「Sapphire '05」においてユーザー企業を代表して、Coca Cola National Beverage(CCNBC)のギー・ウォラート社長が特別講演を行った

» 2005年07月08日 11時25分 公開
[怒賀新也,ITmedia]

 SAPジャパンは7月7日から2日間、東京国際フォーラムで年次のユーザーカンファレンス「Sapphire '05」を開催している。ユーザー企業を代表して、Coca Cola National Beverage(CCNBC)のギー・ウォラート社長が特別講演を行った。同社は、ザ コカ・コーラ カンパニー、ボトラーの共同出資による新会社として設立された企業で、各地域の「ボトラー」が別々に手掛けていた生産、物流、調達を一元管理する組織だ。

 ウォラート社長は、日本におけるコカ・コーラの歴史について「出荷総数は6億6千万を突破し、市場シェアは31%に達している」と話す。コカコーラはもちろん、お茶、スポーツ飲料、その他の炭酸飲料を含め、消費者としても馴染みが深い。

将来的にはBI機能も活用したいと話すウォラート社長。

 「常時ラインアップを変更しており、新製品で1年後に残っているのは10%程度」(同氏)

フランチャイズ製品とトール製品

 だが、同社ではかつて、主力となるフランチャイズ製品(ボトラー社が日本コカコーラから仕入れた原液を使用して製造販売していた炭酸飲料やコーヒー)をボトラー15社がそれぞれで製造していた。また、トール製品(お茶や新カテゴリー飲料など)については、コカ・コーラティープロダクツ(CCTPC)が製造する状況だった。そのため、同じ製品に関する在庫余剰や過剰生産などの状況があっても分からなかったわけだ。

 この時点で、フランチャイズ製品とトール製品で一元的に行われていたのは、調達のみだった。

2003年10月の改革

 同社では、継続してサプライチェーンマネジメントの一元化を進めた。コンセプトは、商品コード、財務、オペレーションなどのすべてを標準化することだ。

 2003年にはCCNBCが設立され、まずは、トール製品について、計画、調達、製造、イノベーションが一元的に行われるようになった。まだフランチャイズ製品については、ボトラー15社がそれぞれ製造する状況は変わっていない。

2005年1月、全製品を一元管理

 そして、2005年1月、CCNBCがトール製品、フランチャイズ製品を含めたすべての製品に関して、需給計画、調達、製造、イノベーションという業務プロセスを一元化、システムをカットオーバーさせた。

 「かつてないレベルでの情報共有が可能になり、意思決定の一元化が可能になった。3年間の取り組みは、合併ではなくビジネスプロセスの統合だった。また、新たな企業(CCNBC)を設立することが求められるケースだった」(同氏)

 新しい物流オペレーションモデルでは、エリアではなく、オペレーションベースで在庫を管理するようになった。ここでモノをいったのがマスターデータの組みなおしだ。輸送レーンマスターやSKU単位での保管場所マスターなど、4つのマスターにより、製品の供給ネットワークを一元管理し、パートナー間での輸送なども容易にできるようになった。

 この仕組みを支えるために導入されたのがAPO(需要予測)をはじめとしたSAP製品だ。賞味期限ごとの在庫量など、在庫、製造、出荷を最適化するためのさまざまな情報が提供されるようになったという。

 また、導入には、SAPやAccenture、日立製作所などから90〜200名が参加した。物流、製造、戦略調達関連のコスト導入効果は、金額ベースで250億円にも上るという。

 なお、同氏は将来的な参考数値も示した。2004年の34工場、104製造ラインは、2007年には27工場87ライン+新規3ライン体制に。倉庫数は同100以上から同30%削減へ。また、在庫日数は同22日から、同14日間へと短縮する計画になっている。

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