欧州議会がソフトウェア特許を否決

数年に渡る論争の末、欧州議会はついに、ソフトウェア特許指令案を投票総数680票中、反対648票で否決した。この結果が今後どのような影響を与えうるかFree-Software-Foundation-Europeの幹部が語る。

» 2005年07月08日 15時28分 公開
[Free-Software-Foundation-Europe,japan.linux.com]

 プレスリリース――数年に渡る論争の末、欧州議会はついに、ソフトウェア特許指令案を投票総数680票中、反対648票で否決した(関連記事参照)。この結果は、ソフトウェアロジック特許への強固な反対を示すもので、欧州連合に対する不信感の表れでもあり、欧州特許庁(EPO)は方針転換を迫られる。EPOは、今すぐにもソフトウェア特許の発行をやめねばならない。

 「この結果は、ハイテク関連発明の特許には一切影響しません」とFree Software Foundation Europe(FSFE)のイタリア代表、Stefano Maffulli氏は話す。「ハイテク革新はこれまでずっと特許可能でしたし、仮にこの指令案があらゆる修正案を織り込んで通過したとしても、それは変わらなかったでしょう。この点は明確にしておく必要があります。ソフトウェアロジック特許の提唱者たちは、ハイテク関連発明がこの指令案の対象であるかのように、人々を混乱させようとしていたからです」

 FSFE会長Georg Greve氏は次のように補足する。「欧州議会はこれを理解していたので、第一審議会では、ハイテク関連発明は特許制度の対象に、ソフトウェアは対象外になるようこの指令案を修正したのです」

 「ところが、欧州連合委員会は、欧州議会のこの決定を無視してその修正案を削除してしまいました。その日、多くの欧州議会議員は、民主的プロセスがこのようにあからさまにつぶされたことに愕然とし、もう一度修正案を出してもまた尊重されないのではという不信感を抱いたようです」

 「この指令案の否決は、欧州におけるソフトウェア特許への反対を強く明確に主張する最終手段になりました」とGreve氏は話す。「Free Software Foundation Europeは、欧州議会の今回の決議を高く評価します。調和のためという意味では第一審議会に沿った指令案の方が望ましかったと考えますが、欧州経済への決定的な損害を回避するには、今回の否決が現実的な最良の選択だったと解釈しています」

 FSFE副会長Jonas Oberg氏は次のように話す。「今回の否決は、ソフトウェアを特許可能対象から除外した1973年の欧州特許条約(EPC)を再確認するものです。欧州特許庁(EPO)はこの中心的条約をほとんど無視して、これまでに約3万件のソフトウェア特許を許可してきました。そんなことは今すぐやめなければなりません。EPOが欧州特許条約をこれ以上無視するのは許されません」

 Georg Greve氏は、FSFEの提案について次のように話す。「多くの問題の原因は、欧州連合が欧州特許庁に承認済みの規定に反する行為の責任をとらせないままにしていることにあります。ほかの民主的機関と違い、EPOは自分たちの決定に責任を負っていません。わたしたちは、EPOの監督機関を設立することを提案します。それによってEPO幹部に決定の責任を負わせ、特許制度のこれ以上の退廃を防ぐべきです」

Free Software Foundation Europeについて

Free Software Foundation Europe(FSFE)は、欧州におけるフリーソフトウェアのあらゆる側面に携わる非政府公益組織である。ソフトウェアの使用可能性は、デジタル社会への参加可能性を決定付ける。したがって、フリーソフトウェアの定義にある、ソフトウェアの使用、コピー、変更、再頒布の自由が、情報化時代への平等な参加を可能にする。こうした問題への認識を促し、フリーソフトウェアを政治的、法的に保護し、フリーソフトウェア開発支援によって人々にこの自由を与えることが、FSFEの中心課題である。FSFEは、米国Free Software Foundationの欧州の姉妹団体として、2001年に設立された。

詳細情報:http://www.fsfeurope.org

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