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» 2005年07月14日 01時21分 公開

活路を見いだしたdb.*

第一級の技術者たちが作り上げた成果や、そこに対して行った投資を無駄にすることなく、プロプライエタリな製品をオープンソース製品として世に送り出した事例を紹介しよう。

[Mary-E.-Tyler,japan.linux.com]

 オープンソース・データベースdb.*(デー・ビー・スター)は、その出自であるプロプライエタリ製品の消滅にもめげず、ドットコム・バブルの崩壊をも乗り越え、オープンソース製品としての新たなる道を探り当てた。

 db.*が、dbVistaというプロプライエタリ製品として市場に登場したのは20年以上も前のことだ。開発したのはRaimaという名の企業だったが、ドットコム・バブルのころにCenturaという企業に買収され、改訂版Mozillaライセンスの下でオープンソースに解放された。Centuraは数百万ドルを費やしてdb.*のコードベースを標準レベルに引き上げ、関連文書も一新した。しかし、2001年にCenturaはドットコム・バブル崩壊のあおりを食って倒産。かくして、db.*は天涯孤独の身となった。しかし、プロプライエタリ製品とは異なり、オープンソースであるdb.*は孤児となっても他の企業に引き取られる可能性がある。そして、事実そうなったのだ。

 「このような投資や第一級の技術者たちが作り上げた成果を腐らせるのは罪というものです。ですから、当社で(db.*を)引き取り世に出しました。成功でしたね」と、ITTIAの社長ササン・モンタセリ(Sasan Montaseri)氏は言う。実際、同社の顧客リストには、世界的通信会社Marconi、JC Penney、Moody's Investors、オハイオ州立大学が名を連ねている。

 とはいえ、db.*は選択肢の1つとして名が出ることはあっても、市場の主流では決してない。Forrester ResearchのシニアアナリストNoel Yuhannaは、db.*はごく特殊な市場で小さなシェアを占めるに留まっていると言う。「当社の調査にdb.*が数字となって現れることはありません。大半を占めるのはMySQLとPostgreSQLで、組み込み市場でもオープンソース・データベースであるSleepyCatとBerkley DBのほうが一般的です」

 しかし、ITTIAのモンタセリ氏は、SQLのような言語を使ってデータベースから情報を取り出すプロプライエタリ製品に比べ、db.*には技術的に優れた点があると評価する。ほとんどのデータベースは関係形式モデルを採用しているが、このモデルではレコードを取り出すのに一群の索引を用いる。「こうした索引へのアクセス自体に時間がかかります」。これに対して、db.*が採用しているのは、関係形式モデルとネットワーク・モデルを組み合わせたハイブリッド・モデルだ。アナリストのYuhannaも、db.*のハイブリッド・モデルでは索引を適切に選ぶことによって、リソースを多用する I/Oコールを削減しパフォーマンスを改善できることを認める。しかし、このアプローチは両刃の剣だ。このモデルの採用によってdb.*はSQL言語のような標準を捨てることになるが、これはそもそもの戦術の効果を弱めてしまう。

 モンタセリ氏は、db.*が小さいことも長所の1つに挙げる。「(組み込みシステムでは)大きさが問題になります。できるだけ小さいほうがいい。ほかのデータベースはSQLのようなAPIやアクセス法を使っていますが、そのためにかなり大きくなってしまいます」

 「db.*の長所の1つは優れた開発者が開発したという点です。これは欠点でもあり、コードに慣れるのにしばらく時間がかかります」

 また、db.*がオープンソース製品であるために顧客が強い拒否反応を示すことがあると言う。「(オープンソース製品は)無償だが誰も面倒を見ないものと漠然と考えているのです」。ITTIAは5年にわたって営業しており、大企業にdb.*を導入しサポートしているという事実は、これから導入を検討しようという顧客にとっては安心材料となるだろう。

1つの事例

 大型トラックのメーカーOshkosh(子供服メーカーOshkosh B'Goshとは無関係)も、そうした顧客の1つだ。ITTIAが最近発表したところでは、Oshkoshは軍用車両A3 HEMTT(Heavy Expanded Mobility Tactical Truck)の最新モデルにdb.*を搭載するという。db.*についてOshkoshに取材を申し込んだが辞退されたため、以下の記事はITTIAの報道発表のみに基づくものである。

 A3 HEMTTは平均的な顧客の車両よりもハイテク仕様だ。搭載された電子システムがさまざまなサブシステムを制御し、障害を発見した場合は障害コードを生成する。コードは制御モジュールに組み込まれたデータベースに恒久的に格納され、また取り出されて車両オペレーター向けの小さなカラーディスプレイに表示されるなどする。現在、米国陸軍がイラクやアフガニスタンで使用している。

 A3 HEMTTはARM Linux――ARMプロセッサ向け組み込み型Linux OS――を使用しているため、A3 HEMTTに搭載するデータベースはこのプラットフォーム上で動作するものでなければならない。戦闘地域では車両の動きが生死を分けることがあるため、搭載するデータベースは信頼性が高く堅牢で高速かつ容易に使用でき、維持管理も簡単でなければならない。また、組み込み型ソリューションであるため、小型である必要もある。さらに、Oshkoshは、コスト・信頼できる技術サポート・しっかりした企業による専門的研修があることにも拘った。

 モンタセリ氏によれば、Oshkoshは、Polyhedraなどのプロプライエタリ・データベースを含むさまざまなソリューションを数か月間にわたって試した結果、既製のSQLデータベースでは速度・コスト・堅牢性の面で不足だと判断したという。最終的に、Oshkoshはdb.*を選んだ。それはライセンス・コストがゼロだというためばかりではない。「(Oshkoshの要件に)順序を付けるなら、第1に技術、第2に無償、第3にサービスでした」(モンタセリ氏)

 db.*は強力かつ複雑な製品であるためOshkoshのエンジニアは特別な研修を受ける必要があったが、Oshkoshはすべての研修をオンラインで受講することを選んだ。「当社はオンライン研修プログラムを提供しただけではありません。コンサルティングと技術サポートも提供し、この製品を短期間でマスターできるよう協力しました」とモンタセリ氏は言う。「迅速に技術サポートを提供することにも気を遣いましたね。エンジニアは疑問を抱くと、居ても立ってもいられなくなりますから」

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