電子投票:投票者用確認紙票 vs. システムの透明性Interview

電子投票システムを確実で信頼できるものにするためにコードの公開はどの程度重要なものだろうか。電子投票システムの現状とオープン性の重要性について、2人の専門家に聞いた。

» 2005年07月19日 18時01分 公開
[Jay-Lyman,japan.linux.com]

 白熱した選挙戦が繰り広げられる国政選挙のころは、電子投票システムやその正確性・信頼性を巡ってさまざまな意見が飛び交う。しかし、選挙のはざまにある今こそが、本格的な対策を講じる時である。

 専門家の間ではシステムとソフトウェアのオープンソース化による透明性の確保が信頼性のある選挙に必要な条件の上位として挙げられてきたが、このところ投票者用確認紙票に注目が集まり、その他の問題はみな影が薄くなっている。専門家によれば、電子投票システムを確実で信頼できるものとするためには投票者用確認紙票もオープン・コードも重要であり、もっとオープン性に目を向ける必要があるという。

 電子投票システムの現状とオープン性の重要性について、2人の専門家に電子メールで尋ねた。一人は、VerifiedVotingのデビッド・ディル(David Dill)氏である。先月、米国上院議事運営委員会で証言台に立った。もう一人は、アビ・ルビン(Avi Rubin)氏。ジョンズ・ホプキンズ大学のコンピュータ科学教授で、現行の電子投票システムに批判的である。

NF 電子投票システムの透明化、つまりソフトウェアとシステムのオープン化の現状は?

David Dill 「オープンソース」という言葉は、人によってさまざまな意味で用いられています。ですから、わたしは投票装置用ソフトウェア(ハードウェアなどのその他の部分も含めて)の完全一般公開と言っています。セキュリティ・ホールを人目に晒すことがないように、公開に先立ってメーカーが自社プログラムを整理・確認する時間を与える必要があるかもしれませんが。「ソースの開示」は、Linuxで使われているような意味での「オープンソース開発モデル」と同じではありません。投票装置もオープンソースで開発できるかもしれませんが、わたしとしては誰かが試みるのを見守りたいと思います。これまで投票装置の設計を一般公開するよう求めた人はいません。米国議会に提出されているHolt法が現在の形のまま成立すれば、初めてのことになります。

Avi Rubin ひどい状態です。努力している人など見たことがありません。メーカーは「社外秘」のベールを張りたがりますし、議員たちもソース・コードの開示を求めません。ついでながら、こうした状況が惨事を招くことになる可能性があります。秘密を前提に書かれ(その前提がいかにバカバカしいものでも)後に開示されたソフトウェアは問題を招くことがあるのです。ソフトウェアはプロジェクトの最初から公開されるべきです。

NF 電子投票システムを確実で信頼できるものにする条件は幾つかありますが、コードの公開は何番目に位置するでしょうか。

David Dill 2番目でしょうか。1番目は、投票者用確認紙票。もう一つの1番目は、投票者用確認紙票と電子集計を突き合わせるための、条件を緩めた再集計法(もっと良いのは無作為監査)です(これも「1番目」です。誤記ではありません。この2つが絶対的に必要だと考えています)。開示を2番目にしたのは、それだけでは問題が解決しないからです。設計を開示しても投票装置の不正はあり得ます。たとえば、開示したソフトウェアとは異なるソフトウェアを使っているかもしれません。ですから、開示されたソフトウェアかどうかを監査する実効的な手段が必要なのです。

Avi Rubin 確実で信頼できる電子投票システムにとって、それは必要なことですが、十分ではありません。

NF 投票者用確認紙票など、他の問題の方が重要なのでしょうか。

Avi Rubin いいえ。どちらも重要だと思います。

NF こうしたシステムやソフトウェアのオープンソース化について、米国政府の見解は?

David Dill 現時点では必須のものとはされていませんが、法案が成立すれば必須になるでしょう。

Avi Rubin 政府に確たる見解はありません。(米国議会の)Rush Holt下院議員(民主党、ニュージャージー州)のような、注目すべき例外は幾つかありますが。

NF プロプライエタリの大手ベンダーたちはオープンソース化に反対したり攻撃したり抵抗したりしていますが?

David Dill そのとおりです。中には、非開示の制約の下で閲覧を自発的に許可している企業もあります。VoteHereは建前ではコードを開示していますが(ただし制限的な条件がある)、それが実際に製品に使われているものかどうかはわかりません。

Avi Rubin はい。オープンソース化の要求をほぼ完全に無視しています。

NF 今は国政選挙のはざまにありますが、電子投票システムについてどれほどの進展があったでしょうか。

David Dill 2004年11月以降の動きは余りありませんが、かなりの進展があり、州レベルで顕著です。各州が紙票/選挙監査法を毎週のように通過させています(verifiedvoting.orgの地図を参照)。次回選挙の運営で心配したくなければ、今は、投票システムの問題を解決する好機です。

Avi Rubin ずいぶん進展しました。わたしもほとんどの時間をこの問題に費やしています。「Brave New Ballot」という本を書き上げたところで、2006年4月にランダムハウスから出版されますし、聴聞会での証言も控えています(来週、ニューヨークのEACで)。教育や啓蒙活動をしたり、よりよいシステムの設計を試みたり、かなりの時間をこの問題に費やしています。

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