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» 2005年07月22日 23時00分 公開

利益2兆円を目指す! トヨタのプロセス改革とは

日本を代表する優良企業、トヨタ。その車両開発プロセスをITシステムはどのように支えているのだろうか?

[大津心,@IT]

 日本IBMとダッソー・システムズは7月19日と20日、PLM関連イベント「2005 JCF」を名古屋で開催。ゼネラルセッションでは、トヨタ自動車 コーポレートIT部 ITマネジメント部担当 常務役員 天野吉和氏が、トヨタが実践している車両開発業務プロセス改革について講演を行った。

 天野氏はまず、2003年の世界の自動車市場の数値を提示。全世界では5937万台、北米が1969万台、欧州は1906万台、アジア合計で791万台、日本市場は全世界の約10%に当たる583万台が出荷された。

 同氏はこの数字について、「このように、日本市場は世界的に見ると10%に過ぎない。もはや、トヨタは日本だけでは飯を食っていけない。従って、世界進出を成功させ、世界シェアを伸ばすことが重要になる」と解説した。

天野氏 トヨタ自動車 コーポレートIT部 ITマネジメント部担当 常務役員 天野吉和氏

 このようにすでに世界進出を推進し、現地生産も行っているトヨタだが、「あくまでもトヨタの故郷は日本。日本をメインの生産地とし、日本の製造技術を世界に広めているのが現状だ」(天野氏)と説明する。つまり、「生産は日本、販売は海外」というスタンスが基本なのだという。実際2004年は日本で生産した368万台のうち、日本で販売したのは176万台に留まり、残りの約200万台は海外へ輸出・販売した。

 昨今、ソフトウェア開発や製造業を中心に注目を集めている中国やインドにおけるオフショア開発も、「確かに現時点では中国などで生産した方がコストは安い。しかし、これらの国の人件費などは今後、必ず高騰する。さらに、これらの国に技術などが流出することも考慮すると、長い目で見れば日本を生産拠点にした方が効率が良い」とコメントした。

 トヨタは、今後さらに海外での販売台数を増やすことで、現在の世界シェア10%を2010年までに15%まで伸ばすことを目指す。その際、「シェアが1.5倍になったからといって、現在の利益1兆円に対して、1.5兆円に伸びてもダメだ。さらなる効率化を図り、シェア15%になった際には利益2兆円を目指す」(天野氏)との目標を示した。

 目標とするシェア15%、利益2兆円を達成するためには、世界各地でより各国のユーザーニーズに合った車の開発が必須だ。天野氏は「同じ車種を大量に生産する時代は終わった」と語り、あらゆるユーザーニーズを満たすために、現在よりも多くの車種を短期間に製造・納入しなければならないという。

 そのための課題には「人材の育成」と「環境の整備」を挙げ、社員1人1人が創造性を最大限に発揮することなどで対応するとしている。

 一方、開発環境では、IT化を取り入れることで効率化を図る。例えば、車両開発では従来、「車両企画」「デザイン」「設計」「試作」と直列に流れていた工程を、デジタル化によって並列化し、それぞれを同時進行させることで短期化する。また、設計も「製品設計」「粗形材設計」「型・治工具設計」「工程設計」のデータを一元化し、意思決定も簡素化することで「即断即決」を実現するという。そのほか、ツールによる作図の自動化や要件のテンプレート化など、デジタル化で簡素化・省力化できる工程は多い。

シミュレーション 衝突シミュレーションのデモ。実車実験との比較でもほとんど差がなくなってきているという

 デジタル化は、シミュレーションでも貢献しているという。従来は紙で設計図を書き、現場でそれを再現してから検証していた「プレスのしわや割れ」「溶接ライン設備」「品質問題」なども、多くの部分がデータ上の検証で解消できるようになり、試作が減少した。天野氏は「今後はこれをすべてデータ化・デジタル化し、試作をさらに減らしてコスト削減したい」と意欲を見せた。

 さらにCADデータやシミュレータの性能向上により、鉄板と鉄板が0.007ミリ浮いてしまう設計ミスもCADデータ上で発見し、修正することができる。また、衝突実験も昔は実車実験の結果と大分差があったが、現在のシミュレータでは、実車実験とほぼ誤差のないレベルにまで向上しているという。

 「CADなどの作画技術の向上は素晴らしく、光の写りこみなど実写と見分けがつかないレベルに達した。当社のCMでもCGを多用している」(天野氏)と説明した。

 今後は、これらのデジタルデータを海外や関連会社と連結し、データ連絡できるようにしたいという。そのためにはCADツールの統一など、地道な活動が必要であり、現在各国で説明会や教育などを実施しており、2006年末くらいまでにはデータ連結を完成させたいとした。このほか、型(かた)の設計や作業姿勢・作業場の設計、マニュアル作成に至るまでデジタル化・シミュレーションの導入を進め、一層の省力化を図るとしている。

 最後に天野氏は、「今後もCADや各種ツールを改良し、省力化を進めていく。しかし、これらの道具を導入するだけでは意味がなく、使い切ることが重要だ。道具を使い切るための施策を今後も実施していく」と語り、講演を締めくくった。

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