ゆっくりとした歩調で進むWebサービス（3/3 ページ）

[IDG Japan]

　OASISでは、WS-SecurityやBPEL（Business Process Execution Language）など、WebサービスおよびSOAに関連する16件の規格を管理している。

　OASISの標準開発ディレクター、ジェイミー・クラーク氏は、「人々が規格のリストを見ると、これらの規格を全部使う必要があるのだと勘違いするかもしれない。だがそんな必要はない」と話す。

ツールが複雑さをカバーする？

　WSDLに対する不満については、Sunのブレイ氏も理解できるという。同氏によると、WSDLはWebサービスの弱点の1つだという。「あまりにも複雑すぎる」とブレイ氏。しかし同氏は、WSDLに対するSunのサポートとコミットについても言及した

　さらにブレイ氏は、「代替技術の開発に向けた取り組みは始まったばかりだ」と話している。

　ブレイ氏は、WSDLの複雑さを覆い隠すための技術として、Javaの将来版およびMicrosoftのIndigoを例に挙げながらも、「開発者から何かを隠さなければならないというのは情けない話だ」と付け加える。

　BEA SystemsでAquaLogic製品ラインを担当するチーフアーキテクト、ポール・パトリック氏は、WSDLを改良する必要性を認識しているという。「しかし『WSDLはひどい代物で、使いこなせない』といった顧客の叫び声は聞こえてこない」と同氏は語る。

　IBMのノースワージー氏は、「ツールを利用するつもりなので、WSDLを直接扱うことはないというユーザーもいる」と指摘する。また、RouteOneのスブラミニアム氏によると、WSDLのアップデート版（バージョン2.0）は、「より直感的だ」という。

　ノースワージー氏によると、饒舌なデータ言語であるXMLは、Webサービスの相互運用性を実現するという。IBMなどのベンダーは、大半のアプリケーションにおいてデータ処理機能の面で競争力を高めるためにXMLに注力している。「XMLは、自己定義型のデータストリームを提供する」と同氏は付け加える。

　Column Technologiesのニールズ氏によると、Webサービスでは、ステートレスコネクションを使用するのは、必ずしも悪いことではないという。Webサービスは、リアルタイムリンクを必要としない比較的軽量なコネクションであり、帯域幅も少ししか消費しない。その点が、専用回線を必要とするCORBAとは異なる、とニールズ氏は指摘する。「CORBAはプログラミングするのにも時間がかかる」と同氏。

　「Webサービスは、ステートレスコネクションが良しとされる素晴らしい環境を実現する」とBEAのパトリック氏は話す。例えばユーザーは、一度に少しずつ断片的にデータを送るのではなく、トランザクションに関連するすべてのドキュメントを送信することができるという。「もう対話型ステートを維持する必要はない」（パトリック氏）

　パトリック氏によると、WS-ReliableMessagingは、送信したWebサービスに対する応答を保証する規格という。「問題が特定され、各標準化団体がその問題に取り組んでいる」と同氏は話す。

　Hewlett-Packardは先ごろ、同社がApacheに提出した3つのWebサービスプロジェクトがインキュベーション段階から本格プロジェクトへと昇格したと発表した。3つのプロジェクトとは、「Web Services Resource Framework」のインプリメンテーション、「Pubscribe」そして「Muse」である。

　Web Services Resource Frameworkは、ステート管理とライフサイクル管理のための技術。Pubscribeは、Web Services Notification（イベント型モデルでパブリッシュ／サブスクライブを行うための規格）を実装するための技術。Museは、OASISの MUWS（Management Using Web Services）規格を実装する。

　あるアナリストは、Webサービスに対するユーザーの理解を深めることが業界の責務だとしている。

　ZapThinkの上席アナリスト、ジェイソン・ブルームバーグ氏は、編集部の取材に対して、「Webサービスの主要なメリットは、SOAを実装した環境において、サービスの提供者と利用者の間で緩やかな結合を容易に実現できるという点にある」と電子メールで回答を寄こした。

　「Webサービスが現在も直面している問題の中で、わたしが最も重要な問題だと位置付けているのは、その用途と利用方法に対する理解が依然として全般的に欠如していることだ。6歳の子供が電動のこぎりを持っているようなものだ」（同氏）