ゆっくりとした歩調で進むWebサービス(2/3 ページ)

» 2005年07月25日 19時52分 公開
[IDG Japan]
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 しかしベンダー各社およびニールズ氏は、これらの弱点に対する解決策を示している。ニールズ氏は、Webサーバのアップタイムを維持するため方策としてWebサーバファームの利用を提案している。

反論するベンダー

 Webサービスのデメリットに関するニールズ氏の見解に対して、Sun Microsystemsなどのベンダーは強く異論を唱えている。

 SunのWeb技術ディレクター、ティム・ブレイ氏は、「Webサーバは、現時点で存在する中で最も信頼できるインフラの1つではないかと思う」と話している。

 Microsoftのビクスホーン氏は、同社が開発中の「Indigo」技術が、Webサービスに関して指摘されている多くの問題に対する答えであると強調している。Longhorn版Windowsクライアントに組み込まれる技術として2006年に登場する予定のIndigoは、HTTPだけでなくSMTP、TCP、REST(Representational State Transfer)などのプロトコルをサポートすることにより、Webサーバへの依存から脱却する。

 ビクスホーン氏によると、IndigoはWebサービスの自律的バージョニング機能もサポートするため、Webサービスの新バージョンをリリースしても既存のWebサービスが壊れることはないという。

 Corillianでは、プロトタイプシステムでIndigoを使っている。「複数のトランザクションポート層をサポートするIndigoは、メッセージングの基盤を整備するものだ」と語るハンセルマン氏は、Indigoの役割を、APIの使い勝手を改善する.NET Frameworkに例えている。

 ビクスホーン氏は、Webサービスのセキュリティプロトコルが存在しないという考え方を否定する。「それは本当ではない。WS-SecurityはWebサービスのセキュリティの業界標準だ」とビクスホーン氏は話す。WS-Securityでは、X.509証明やKerberos、SAMLといった既存のセキュリティ技術を利用できるという。

 Microsoftでは、Webサービスの配備方法の標準化に向けてWS-*(「WSスター」と読む)規格を強調している。WS-*は、ビジネスプロセスからリライアブルメッセージングに至る広範な分野を対象とする規格で、WS-Securityもその1つである。

規格が多すぎる

 しかしWebサービス規格があまりにも多いために、ITユーザーがついていけない可能性があることをベンダーも認めている。

 同じような名前のWS-ReliableMessaging(WS-RM)WS-Reliability規格の違いを説明するようビクスホーン氏に求めると、追って回答するとのことだった。その後、Microsoftから送られてきた電子メールによると、両規格のデザイン目標は異なるという。

 WS-ReliableMessagingは、単独で機能したり、あるいはほかのWS-*規格と連携して機能するモジュラー型の規格である。一方、WS-Reliabilityはより広範な分野をカバーする規格で、各種のWS-*規格の機能と重複する。

 Sunのブレイ氏は、標準の提案が多すぎるという見解を支持している。標準の開発に携わっている人があまりにも多く、これらの標準に関連して醜い駆け引きが横行しているという。「はっきり言って、まったくのたわ言にすぎないような標準もある」(ブレイ氏)

 SunはWS-*標準の策定に向けた取り組みで出遅れたが、ビクスホーン氏はWS-*規格の開発が業界全体の取り組みであることを強調している。「WS-*策定プロセスには70社以上のベンダーが参加している」と同氏は話す。

 ベンダーらによると、広範な規格を把握する上で助けとなるのがWeb Services Interoperability OrganizationのBasic Profileだという。これは、ユーザーが個々の状況においてどの規格をインプリメントすべきかを判断する際の指針としての役割を果たす。

 IBMでソフトウェア標準を担当するカーラ・ノースワージー副社長は、「規格の略語が入り乱れた状況を顧客に押しつけるのではなく、彼らがプロファイルにだけ注目すれば済むようにしたい」と話している。

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