Microsoftの「Windows x64 Edition」の早期採用を検討している企業にとって、決定を先延ばしにすべき理由がまた1つ出てきた。
Microsoftの「Windows x64 Edition」の早期採用を検討している企業にとって、決定を先延ばしにすべき理由がまた1つ出てきた。お気に入りのウイルス対策ソフトウェアが、新しいデスクトップ上で動作しない可能性があるのだ。
Microsoftでは、従来の32ビット版Windows向けに書かれたソフトウェアのほとんどは、4月にリリースされた同OSの64ビット版に対応するとしている。しかしWindowsのコアとなるカーネル部分が変更されたため、一部のタイプのソフトウェアは64ビット版Windowsに合わせて修正する必要がある。
MicrosoftのWindowsクライアントグループのシニアプロダクトマネジャー、ブライアン・マー氏は、「カーネルが大幅に変更された場合、カーネルモードで動作するソフトウェアは書き直す必要がある」と話している。
これはWindows x64 Editionの場合、特にデバイスドライバやウイルス対策ソフトウェアなどで修正が必要になることを意味する。「それ以外には、Windowsカーネルの奥深くまでアクセスするタイプのアプリケーションはあまり多くない」とマー氏は話す。
このため、McAfeeの「Internet Security Suite」やTrend Microの「PC-cillin Internet Security」などの製品を使用している企業は、これらのベンダーが最初のx64 Edition対応製品の投入を予定している2006年まで待たなければならない。
Symantecの企業ユーザー向け製品である「AntiVirus Corporate Edition 10.0」は既に64ビット版Windowsに対応しているので大丈夫だ。ただしSymantecでは、小規模企業/個人ユーザー向けのウイルス対策ソフトウェアの64ビット版を投入するかどうかは明らかにしていない。
サンディエゴに本社を置くEsetは、各社のウイルス対策製品の64ビット対応の遅れをチャンスとみており、同社の「NOD32」ソフトウェアの64ビットOS対応版を7月26日にリリースした。
Esetのソフトウェアは、使用環境が32ビットか62ビットモードであるかを判断することができ、「NOD32 Remote Administrator」と呼ばれる単一の管理ソフトウェアで両タイプのOSを管理することが可能だ。
Esetのアンディ・リーCTO(最高技術責任者)は、「当社が提供する64ビットのサポートは、ユーザー側から見ると非常にシームレスだ」と話している。
リー氏によると、今のところWindowsの64ビット版ではほとんど脆弱性が発見されておらず、また、ユーザー数も非常に少ないために、攻撃者にとってはあまり魅力的なプラットフォームではないという。
しかしリー氏は、初期導入ユーザーがウイルス対策ソフトウェアを利用しようと思っても、選択肢が少ないことに驚くに違いないと考えている。「大手ベンダーの多くがウイルス対策ソリューションを提供していないということが、最大の問題の1つだ」と同氏は指摘する。
だがMicrosoftのマー氏によると、その問題の影響を受けるのは一部のデスクトップユーザーだけだという。同社では、2006年末に予定されている「Windows Vista」のリリースまでは、Windowsでの64ビットコンピューティングの利用は「ビジネス分野の超ハイエンドユーザー」に限定されるだろうとしている。
「われわれは、64ビットコンピューティングがいずれ主流になると考えている。その時期はWindows Vistaの普及時期と重なるだろう。そのころには、多数のウイルス対策ベンダーが対応するはずだ」(マー氏)
それまでの間、一部のユーザーは苦労を強いられるかもしれないが、Microsoftによると、64ビットのウイルス対策製品が主流になれば、ユーザーはセキュリティ関連のパフォーマンスの向上も期待できるという。例えば、暗号化処理では高速化がはっきりと感じられるはずだ、とマー氏は話す。
「64ビットWindowsは、さまざまなものを一新するチャンスとなるものだ。32ビットシステムよりも高速にシステムをスキャンできるだろう」(同氏)
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