U-20のアツイ夏――セキュリティキャンプ2005開催

20歳未満の若者30名が5泊6日の合宿形式でセキュリティの考え方や技術について学ぶ「セキュリティキャンプ2005」が行われた。

» 2005年08月08日 18時48分 公開
[高橋睦美,ITmedia]

 20歳未満の若者を対象に、5泊6日の合宿形式でセキュリティの考え方や技術について学ぶ「セキュリティキャンプ2005」が、この8月2日から7日にかけて行われた。若年層の情報セキュリティ意識の向上と優れたセキュリティ人材の発掘と育成などを目的に、経済産業省と日本情報処理開発協会が主催するもので、今年が2回目だ。

 参加したのは、63名の応募者の中から選ばれた30人。高校生が中心だが、中にはまだ13歳の中学生も含まれている。自らサーバを構築、運営している参加者も多く、昨年同様ツワモノぞろい。セキュリティキャンプ実行委員長でラック代表取締役社長の三輪信雄氏は開講式において「昨年の参加者も予想を上回っていたが、今年も、サーバを持ち込んだりと、われわれの想像を超えた参加者が集まった」と述べていた。開講式前日に横浜で開催された「Imagine Cup 2005」経由でセキュリティキャンプにという、お腹いっぱいのコースを取った参加者もいる。

 スラッシュドット・ジャパンへの投稿でキャンプのことを知ったという参加者の一人は「もともとPCが好きで、高校でもそういった内容を専攻しサーバの構築もやってきた。けれど、そうなると必然的にセキュリティを学ぶ必要があると考えて参加を申し込んだ」と意気込みを語った。サーバの運用にセキュリティが必須、と考えるあたり、そこらの大人よりもよほどしっかりしている。

 合宿期間中は、「セキュリティの基礎」に関する座学に始まり、実機を用いた実習が朝から晩までみっちり行われた。昨年の反響を踏まえ、今年は参加者の興味に応じて3つの専門科目の中から1つを選択するカリキュラム構成とした。

 マルウェアプログラムやWebアプリケーションのセキュリティ、セキュアなプログラミングについて学ぶ「プログラムコース」、VPNを用いたネットワーク構築、ネットワーク監視やハニーポットなどをテーマとした「ネットワークコース」、サーバの構築/運用とインシデントレスポンス、SELinuxなどのセキュアOSについて学ぶ「サーバコース」の3つが用意され、講師陣の力作である教材を用いた実習が行われた。また、昨年の参加者10名がチューターとして加わり、「夜の部」も含めてさまざまな手助けを行った。

 内容については、三輪氏が「このカリキュラムをこなせれば、うちの会社でもぜんぜん問題なく働けるレベル」と太鼓判を推すものだ。

 また合宿所での学習に限らず、セキュリティ企業で実際に働いている若手技術者との交流、警察庁や検察から講師を招いての特別講義といったプログラムが用意されたほか、セキュリティ企業の見学ツアーも行われ、業界の様子を肌で知ることができる。

広がる「つながり」

 開講式で三輪氏は、「いまある『後付け』のセキュリティではなく、開発するときからセキュリティを作りこむビルトインのセキュリティが必要」とし、U-20世代への期待を語った。同時に「まだ日本にはちゃんとした(本来の意味での)ハッカー文化がない。僕らはもう年をとっているので、10代の皆さんに作ってほしい」ともいう。

 もう1つ強調されたのは、「同じ趣味、同じ知識を持っている人と知り合う機会はそう多くない。同じ関心を持った人が集って話をすることが大事」(経済産業省商務情報製作局情報処理振興課課長の小林利典氏)ということだ。

 セキュリティキャンプ2005では、昨年の参加者がチューター役を担っているが、そのチューターたちも「セキュリティという同じ興味、関心を持っている人と深く話せる場は他にない」「参加しないと分かりにくいかもしれないけれど、こうやって話ができるのは本当に貴重な場」という。

 実は昨年の参加者同様、今年の参加者の多くもキャンプイン前からIRCやWiki、さらにはMixiなどを通じて連絡を取り合い、交流してきたという。そのせいもあってか、参加者は初日から比較的打ち解けた様子を見せ、ディスカッションも積極的に進めていた。キャンプの6日間を通じてそのつながりはさらに強くなったのではないだろうか。

 セキュリティキャンプの参加者どうしという「ヨコ」のつながり、チューターや講師との「タテ」のつながりによって得られるものは大きいはずだ。かねてからIT業界、とくにセキュリティ業界の人材不足が指摘されている。セキュリティキャンプが直接、こうした課題を解決するものではないだろうが、長い目で見れば、確実に芽が育ち始めていると言えるのではないだろうか。

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